【独自解説】「重い空気になり血の気が引いた」インフルエンサーらが体験した北朝鮮のリアル 外国人観光客受け入れ再開から3週間で突如ツアー中断…一体、何が―

コロナ禍以降、5年ぶりに西側諸国からの団体観光客受け入れを再開した北朝鮮。しかし、わずか3週間で突如中断されました。一体なぜ?そして、今回その貴重なツアーに参加した外国人観光客らを独自取材。彼らが見た北朝鮮の裏側とは?『コリア・レポート』編集長・辺真一(ピョン・ジンイル)氏の解説です。
■YouTuberやインフルエンサーもツアーに参加!5年ぶりに外国人観光客の受け入れ再開
中国やロシアとの国境付近にある羅先(ラソン)経済特区では、2025年2月20日から5年ぶりに、西側諸国などを含む外国人ツアー客の受け入れを再開しました。ラソンは自然豊かな観光都市で、コロナ禍前は多くの外国人観光客が訪問していたということです。
Q.平壌(ピョンヤン)以外にも発展している街があるんですね?
(『コリア・レポート』編集長・辺真一氏)
「ラソンは中国やロシアとの国境で、モンゴルからは日本海の出口になっているので、シンガポール港やプサン港のようなハブ港に、そして同時に観光都市にしたいということで、30年前に『経済特区』に指定されました。だから、他の地域よりは発展しています」
今回取材したツアーは、日程が2025年2月20日~の4泊5日・費用が約11万円で、食事代・宿泊費・ビザ手続き代なども含むということです。参加人数8人・北朝鮮側からガイドや運転手など5人が添乗したツアーなどがあり、イギリス人YouTuberのマイク・オケネディさんや、ドイツ人インフルエンサーのルカ・ペルドメンゲスさんらが参加していました。
イギリス人YouTuber・マイクさんは、世界各国を旅行して動画を投稿しています。YouTube登録者数は約56万人で、今回のツアー動画の再生回数は500万超。以前から北朝鮮に興味があり、5年ぶりの観光客受け入れ再開がチャンスだと思い北朝鮮を訪れたということです。
ドイツ人インフルエンサー・ルカさんはプロのジャグリングパフォーマーで、2022年に『フォーブス』誌が選ぶ「ヨーロッパのスポーツ&ゲーム 30歳未満」の30人に選出。全ての国を訪問するため旅行中で、行ったことのない国が北朝鮮も含め残り3国だったため、ツアーに参加したといいます。
Q.北朝鮮側が“見せたい北朝鮮”を広く世界に拡散してほしい、という意味もあるのでしょうか?
(辺氏)
「本来は、そうです。しかし問題は、北朝鮮を旅行する外国人は大体オタクやマニア、あるいはフリージャーナリストやインフルエンサーなど、純粋な旅行ではなく、『北朝鮮を見て、それを発信しよう』というような人たちが多いことです。恐らく北朝鮮は一般の旅行者だと思って受け入れていますが、この人たちが自分の国に戻って映像などを発信すると、北朝鮮からするとあまり良い気持ちはしないということが、これまで何度もありました」
Q.参加者8人に対し、ガイドや運転手など5人がついたのですか?
(辺氏)
「結局、それだけ集まらなかったとみています。建前は、『外国人だから身の安全をフォローしている』というのが向こうの言い分ですが、ツアー参加者としては『“北朝鮮が見せたくない所”に踏み込んで見て撮りたい』という鍔迫り合いが必ずありますから、北朝鮮が見せたい所・連れていきたい所はできるだけ牽引する狙いがあるとみられます」
■「世界平和」と書いただけなのに…外国人が体験した北朝鮮のリアル
気になる4泊5日のツアー内容ですが、1日目は中国・延吉に集合し、ホテルに宿泊。2日目は車で北朝鮮に入り、金日成主席・金正日総書記の壁画やテコンドー学校を見学。3日目は銀行で口座開設(未公開のレートで北朝鮮ウォンに両替可能)、外国人観光客に開放されている唯一の市場で土産物を購入。4日目は朝中露の国境付近を見学し、『北朝鮮・ロシア友好の家』を訪問して、繊維工場を見学。そして5日目、スナック菓子の食品工場とビール醸造所を見学し、車で国境を越え中国へ戻ったということです。
ツアーに参加したイギリス人YouTuber・マイクさんによると、4日目に訪れた『北朝鮮・ロシア友好の家』には、プーチン大統領・金正日総書記・金正恩総書記などの写真が多数あり、訪問者が記入できるノートが設置されていたといいます。そのノートを書くよう促されたマイクさんは、政治的なことを書きたくなくて「世界平和を願う」と書きました。すると、とても重い空気になり、「これが適切なメッセージだと思うか」と聞かれて血の気が引いたということです。
Q.まだ韓国とは休戦状態にあるから、ということですか?
(辺氏)
「そういうことだと思います。北朝鮮はアメリカ・韓国と対峙していますし、今は同盟関係にあるロシアもウクライナと戦争状態にあり、北朝鮮が援軍や派兵をしているわけです。北朝鮮からすると、今は平和な状況ではないのでしょう」
■再開からわずか3週間で突如中断…一体なぜ?カギを握る『平壌国際マラソン』
一方、『中央日報』によると、西側諸国の団体観光客受け入れ再開からわずか3週間後の2025年3月5日、受け入れが突如中断されました。理由は不明ですが、旅行会社は「政治的な理由だと思う。観光だけではなく、中国からのビジネス訪問や委任訪問もできなくなった」と話しています。
Q.北朝鮮側からすると、思ってもいなかった“伝え方”をされたということでしょうか?
(辺氏)
「『宣伝になるどころか逆にマイナスになった』という判断で、やめておこうかということなのか、あるいは、米韓合同軍事演習が始まって朝鮮半島がやや緊張状態にある中で、一時的にストップしているのか。この状態が続くかどうかは、米韓合同軍事演習が終わった後に開催される4月6日の『平壌国際マラソン』に、外国人観光客が呼ばれるかどうかでわかります」
(「情報ライブ ミヤネ屋」2025年3月12日放送)