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福島発――こども園+「発達支援」に全国が注目 きっかけは原発事故 「そのままでいいんだよ」…垣根越え“らしさ”に寄り添う『every.特集』

2024年3月13日 11:55
福島発――こども園+「発達支援」に全国が注目 きっかけは原発事故 「そのままでいいんだよ」…垣根越え“らしさ”に寄り添う『every.特集』

きめ細かなケアが求められる発達支援。その支援を行う場と教育・保育施設が別の場所にあると、親子の負担は大きくなります。そんな中、発達支援の場を統合して子どもに寄り添う福島県のこども園が注目されています。取材した園児には変化が表れていました。

■全国から注目される子育て拠点

福島・二本松市。ここに全国から注目される子育て拠点があります。

朝のあいさつをする3~5歳の子どもたち、ステージで踊る2歳児、お絵描きや工作、積み木をする子どもたち…。ここは、働く親などが0歳から子どもを預ける「保育所」と、3歳以上の子どもが通う「幼稚園」を統合した認定こども園です。

ただ、それだけではありません。奥に進むと「地域・子育て支援センター」があります。こども園に通っていない親子が使える遊びや交流の場です。さらに、発達障害やその可能性のある子どもたちの支援を行うスペースもあります。

多くの自治体では、発達支援を行う場はこども園などとは別にあり、親や子どもにとって、移動や環境の変化など大きな負担があります。ここでは、その負担がありません。

■理事長に聞く…こども園ができた背景

なぜこの園ができたのか。施設を運営する学校法人まゆみ学園の古渡一秀理事長は「東日本大震災から3年後、4年後に入ったときに、落ち着かない子がなんでこんなに急激に増えたんだろうっていうのが、実は最初のきっかけになってて…」と振り返ります。

原発事故で外出を控え、人と触れあうことが少なくなったことで、子どもの成長や発達に影響が出ているのでは、と危機感を覚えたといいます。

古渡理事長
「特性ある子と本当にうまくやる方法を考えないと、保育教諭がもう何をやっていいか分からないくらい、大変だったっていうのはあります」

こうした考えから専門性のあるスタッフを新たに加え、おととし4月、発達支援の場と地域の親子が集えるスペースを兼ね備えた、このこども園をオープンしました。

■発達支援スペースで運動や言葉の訓練

こども園の年中クラスに通う、おおともゆうりくん(5)。この日まず向かったのは、こども園ではなく発達支援のスペースです。運動や手先を使った細かい動きが少し苦手なゆうりくん。ここでは、それらの訓練に取り組んでいます。

以前は言葉の遅れもあったといいますが、聞き取ったヒントから言葉を想像して当てるゲームにも楽しみながら取り組めているゆうりくん。「空を飛ぶ乗り物です」とヒントが示されると、「ひこうき!」と答えていました。

■訓練の後は、友達が待つこども園へ

2時間の利用時間を終えると、今度は同じフロアのこども園に向かいます。廊下を抜けたその先には、たくさんの友達がいました。自然と笑顔があふれます。ブロック遊びをしていると、友達が「大丈夫?やってあげる」と手を貸してくれました。

ここでは1日の中でチャレンジしたり、友情を育んだり、様々な経験を通して成長できているといいます。

――何が一番楽しい?

ゆうりくん
「ぜんぶたのしい」

この日、ゆうりくんは子育て支援センターに来た親子と玉入れ遊び。「ゆうりくん、持つ担当する?」「ゆうくんがかご係?」と声をかけられました。先生に代わって玉を受ける役を引き受け、お兄さんの顔も見せていました。

■子どもを自然にサポートする雰囲気に

施設の中では、発達支援のノウハウをこども園に生かした例も見られます。

朝、こども園にやってきた子どもたちが最初にするのは、出席の記録となるノートにシールを貼ること。次に、かごに入れます。

子どもたちの前には、登園してやることの手順が写真と文字で示されていました。続くのは、カバンをしまうことと、ジャンパーをかけること。上から順に進めることで、迷わず朝の支度をすることができます。

これは発達支援の場で、以前から行われていたやり方でした。こども園や発達支援などの垣根を越えて、子どもをありのままに受け入れ、自然にサポートする雰囲気が広がっているようです。

■部屋を出入りしても止めずに寄り添う

ある日のこども園。みんなで歌っていると、発達支援のスペースを利用する男の子が、突然、部屋に入ってきました。自分で作った切り絵を、こども園のみんなに見せたかったようです。「しょうせいくん、みーせーて」という声が上がりました。

クラスの活動はストップしましたが、先生も子どもたちも気にしません。先生は発達支援に通う子どもが部屋を出入りしても、叱ったり止めたりせず、その子が何をしたいのかに寄り添います。

そうすることで、納得した子ども自身が自然に落ち着きを取り戻すといいます。

児童発達支援アドバイザーの冨森崇さん(臨床心理士)
「子どもたちがどんな『らしさ』があったとしても、この場にいていいっていうか、あなたはそのままでいいんだよっていうメッセージが、そもそもこの建物自体にある」

その子らしさを受け入れてもらえるのは、どの子にとっても生きやすいはずだと、冨森さんは語ります。

■息子の成長を実感、不安は和らぐ

こども園での1日を終え、自宅に帰ったゆうりくん。外で頑張った分、自宅では母のちはるさんに甘える場面もありました。

そんなゆうりくんを見守るちはるさんは、園での生活による成長を実感しています。

ちはるさん
「集団生活はちゃんとしなきゃいけないところだっていうことは、本人が分かってきてるので、その辺はもう幼稚園でのおおともゆうりと、家での息子の姿っていうのは、だいぶ本人が切り替えてできてるのかなって」

近頃、反抗的な態度を取ることも増えたといいますが、ちはるさん自身の受け止め方にも余裕が出てきたそうです。「幼稚園の頃って反抗期があるって聞くので、成長を迎えてるんだな、って思うとうれしいような」

こども園の支えもあり、ゆうりくんの成長に対する悩みや焦りもずいぶん和らいだといいます。

発達支援と子育て支援を統合したこども園。このような場所が各地に増えれば、より多くの親子の安心につながるかもしれません。

(3月11日『news every.』より)

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