【現地で取材】賃金高で人気の豪“ワーホリ”いくら稼げる? 見えてきた実態とは… #みんなのギモン
物価が上がる一方で、給料がなかなか上がらない日本。今、若者が気になっているという、海外で語学を学びながら働けるワーキングホリデー。日本人へのワーキングホリデービザの発給数が過去最多のオーストラリアで“ワーホリ”する若者を追跡取材した。見えてきた実態とは?
多くの外国人旅行者でにぎわう東京・銀座。20代の外国人に、「給料はいくら?」と質問をしてみた。
アメリカ人(25)
「年収は8.5万ドル(約1300万円)」
ドバイ在住のポルトガル人(27)
「年収?20万ドル(約3000万円)」
一方、日本の20代に同じ質問をすると、会社員(26)は「悪くはないけど、もう少しもらえたら」と歯切れが良くない。
そんな若者たちが口にしたのは…。
会社員(23)
「電気代が高い! 在宅(勤務)でずっと家にいるから、すごくなっちゃって」
物価が上がる一方で、なかなか上がらない給料を嘆いていた。そんな中、気になっているのが──。
会社員(26)
「ワーホリ楽しそう」
会社員(25)
「会社の先輩が最近(ワーホリに)行きました」
「ワーホリ」とは、ワーキングホリデーのこと。海外で語学を学びながら働ける制度で、29の国と地域が対象になっている。中でも人気なのが…。
会社員(25)
「友人がオーストラリアに行っている。土日だと時給3000円ぐらいもらえるらしい。賃金が高いんで、うらやましい」
日本の最低賃金の全国平均が時給1004円なのに対し、オーストラリアは時給約2300円と実に2倍以上。為替レートがこの4年で3割近く円安に振れたことでより差が広がっている。
去年6月までの1年間、日本人へのワーキングホリデービザの発給数が過去最多の約1万4000件(オーストラリア内務省より)を記録するほど人気だ。
そこで私たちはオーストラリアへ。高い時給でワーホリをする日本人の暮らしを追った。
オーストラリア最大級の都市・シドニー。そこで出会ったのは梶川洋昭さん、26歳。
梶川洋昭さん(26)
「ワーホリで約10か月います」
「ベルデスクでお客さんを出迎える係」
ビザは基本1年、一定の条件を満たすと最長で3年間滞在できるオーストラリアでのワーホリ。梶川さんが働いているのは、シドニーの中心部にある5つ星ホテル。入り口で宿泊客を案内したり、荷物を運んだりする「ベルデスク」という仕事だ。
女性「Hi」
梶川「How are you?」
女性「Good thank you」
接客は、もちろん英語。
梶川「レストランは地上階ですので、降りて左に行ってください」
女性「わかりました」
梶川「ランチを楽しんで」
梶川洋昭さん(26)
「英語を話せる前提で話しかけてくる。間違っていてもいいので、自信を持って話す」
英語力の向上のために、ホテルで働くことを選んだという梶川さん。日本ではゴルフ練習場のアルバイトで月に20日間働き、手取りは約15万円。現在のホテルの給料は月に約20日、1日8時間ほど働いて、「日本円で(手取り)40万円ぐらい」と梶川さんは話す。
──日本で働きたい?
梶川洋昭さん(26)
「正直、言うと働きたくない。金銭面ってやりがい」
語学が学べる上に日本の倍近い給料で働けるのが、オーストラリアの魅力だという。
ワーホリができるのは都市部だけではない。シドニーから西に約700キロ離れた町で出会ったのは、柴山七海さん(30)と寺井希さん(30)。同じくワーホリで滞在している外国人ら40人ほどと共同生活をしている。
ワーホリの目的は…。
寺井希さん(30)
「現地で生活して英語力を高めたかった」
日本ではメーカーで働いていたが、辞めてきたという。そんな2人が働いているのがオレンジ農園。
職員「フルーツの実を触って落とさないようにね」
寺井「これを切る必要は?」
職員「ないよ」
これから熟すオレンジが傷物にならないようにするため、新芽を切っていく。
寺井希さん(30)
「ファーム(で仕事を)始めて、7キロ痩せた。金を稼げるダイエット」
日差しが差し込む中、勤務時間は午前8時半から休憩を挟みつつ午後4時半までの8時間、ひたすら作業。
寺井希さん(30)
「オーストラリアでオレンジの木を切っているなんて。人生って面白いな」
午後4時半。この日の作業が終了。退勤はスマホで写真を送るだけ。そのスマホには…。
柴山七海さん(30)
「今週の分です。月曜日から水曜日までの分」
3日分の給料、日本円で約6万8000円と表示されていた。
ひと月の給料は手取りで約40万円に。ちなみに、日本のみかん農家でアルバイトをすると月20万円前後。同じような仕事でも2倍稼げる計算だ。
2人はどんな暮らしをしているのか──? 部屋を案内してもらった。2人が住む部屋は、約5畳の一部屋。二段ベッドが場所を占める。寺井さんは「本当に寝るだけの部屋」と話す。さらに、風呂やトイレ、キッチンはすべて共用だ。柴山さんは「毎日、自炊」という。
手取りで月40万円の給料をもらっているという2人だが、寺井さんは「(家賃は)1人640豪ドルで、部屋は1280豪ドル。日本円で約12万円」「外食高すぎて、ランチ1食2500円~3000円。夜にお肉を食べると5000円~7000円」「稼ぐ分が多くても使う分も多い。平均して全部多い」と話した。
オーストラリアも日本と同様、物価高の波が。日本にいた時に比べて稼ぎが増えても、支出も多いため、ぜいたくはできないという。
ワーキングホリデーに来ている日本人が情報交換をしているSNSには、こんな書き込みが。
「アルバイトを探しています」
「仕事や住む所も決まっていない」
「ホームレス状態です」
ワーホリに来て、ホームレスに?一体どういうことなのか?書き込みをもとにブリスベーンの中心部にある公園を訪ねると、公園の至る所にテントが。確認できただけでも20張り以上。ここで暮らす男性に話を聞いた。
ここで暮らす男性
「昨日の朝まで、若い日本人の女の子がいた。ここで3日間寝泊まりしていた」
「ワーホリで来た」と話す日本人女性が、前日までここで寝泊まりしていたというのだ。この公園で取材を続けていたところ、日本人男性と出会った。ワーホリで来ていたこの男性、一時期、ホームレスだったと話す。
あらんさん(25)
「車中泊とテント泊、全部で2か月ぐらい」
あらんさんは、もともと働いていた農園の仕事がなくなり、この公園や無料のキャンプ場で寝泊まりをしていたという。寝泊まりしていた車のトランクの中には、当時路上生活で使っていたカセットコンロや鍋などが入ったまま。「(車のシートに寝具を)こうやって敷いて、こうやって寝る」と話した。
フードデリバリーの仕事で食いつなぎ、3か月ほど前にようやく倉庫でフォークリフトを運転する仕事が見つかったという。今の時給は約3700円。
あらんさん(25)
「ワーホリの人が、今は日本だけじゃなくていろんな国から来ている。時期や場所間違えたら(仕事は)結構見つからない」
オーストラリアは、日本だけではなく多くの国から若者たちがワーホリに。そのため、仕事の奪い合いが起きているという。
今年1月から車の整備士として働く、笠崎伊吹さん(24)も仕事探しに苦労した一人だ。
「厳しかったです。英語が話せないので」
「レジュメ(履歴書)を持っていった」と話す笠崎さんが、仕事探しのために用意したのが自分の強みやスキルを書いた英語の履歴書だ。
高校の野球部でキャプテンをしていたことや生徒会長をしていたことなどが書かれていた。この履歴書で応募した会社の数は──。
笠崎伊吹さん(24)
「100は超えている」
──100!?どれくらい返事があった?
笠崎伊吹さん(24)
「1件です。今働いている日本食レストラン」
その後、整備士の仕事も決まり、現在の月収は、手取りで合わせて40万円ほど。自らの経験から笠崎さんは、「(ワーホリ)全然甘くない。良いところばかり見て、来る人多いけど、簡単に仕事が見つかると思ったら全然甘いな」と口にした。
人気のワーホリ。確かに働くことができれば、日本よりも稼ぐことはできる。しかし、語学力はもちろん、なにかスキルもないと仕事に就くのが難しいという現状があった。
(5月3日放送「QUESTION!#みんなのギモン」より)
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