【性犯罪歴の確認】塾は“義務なし”でも…「生徒・保護者の安心に必要」アルバイト講師も意欲 日本版DBS
これらの場所が性犯罪歴確認や職員研修、相談体制など法律に盛り込まれている対策を行った場合は、国から「認定」され、それを表示できる。義務ではない事業者、そして当事者である子どもや保護者は、この制度についてどう考えているのか?
■個人塾「全てに優先されるのは子どもの安全」
茨城県にある個人塾いくがくゼミナールの代表・すめらぎ氏は日本版DBSについて「そういった仕組みができるのであれば、主体的に参画していきたい。全てに優先されるのは子どもの安全」と話した。
そして、学習塾やスポーツクラブなどが、性犯罪歴の確認などの義務の対象外になったことについては「義務の団体と(義務化されず)自ら参画する団体の間に壁があること自体はどうかなと思う。これを機に教育に携わる者が、例えばそろばん教室であっても、ダンス教室であっても、全てが一度こういった“フィルター”をかけることで、まず体質の健全化が図られる方がいいのかなと思います」と述べた。
一方で、この制度で塾が国の認定を受ける場合、そこで働く講師は性犯罪歴を調べられ、戸籍をこども家庭庁に自ら提出する手間もかかるため、講師を希望する人が減る可能性もある。
すめらぎ氏は「学習塾業界が慢性的な人材不足の状況にはあって、そういった意味では、求職者はそういった個人情報を求められるという点では、手があがりにくくなる状況があろうかとは思います。ただそれはそれ。教育に対して熱い思いを持つ方が残るなどすれば、全体として講師の質、教師の質が上がっていくと思いますので、一つの過程なのかなという捉え方をしています」と述べ、DBSの制度が人材不足に拍車をかける可能性を認めつつも、それを上回る有効性に期待を示した。
■子どもと接する…アルバイトでも性犯罪歴確認
この塾ですめらぎ氏の他に授業を行うのがアルバイトの大学生講師だ。認定を受けるには、たとえアルバイトであっても子どもと接する業務を担う場合は、塾がこども家庭庁に照会し、その大学生の性犯罪歴の有無を確認する必要がある。
この点について、学生講師は「自分の過去を調べられるのは個人情報なので違和感がある部分もあるが、生徒や保護者の安心感のためには必要なこと。自分自身に何もないことはわかっている」と理解を示した。
■約10社を取材 口をそろえ「情報が乏しく」
学習塾やスイミングスクールなど約10社を取材した中で、日本版DBSの認定について「検討している」「新規採用をする予定がないので検討していない」「塾のOBしか採用しないので検討していない」など様々な回答があったが、全社が口をそろえていたことが1つだけある。それは「現時点で情報が乏しく、検討材料が少ない」ということだ。
法律の成立前なので当然とはいえ、事業者側の反応は「気になってはいるが、何をすればよいのか?」といったものだった。
なお、講師による盗撮事件があった四谷大塚は、日本テレビの取材に対し「日本版DBSの仕組みが出来上がり、活用できるということになれば、生徒がトラブルに巻き込まれるリスクは、より軽減されると考えます。その観点から、今後の法案成立、施行につきまして推移を見守っている状況です」と回答した。
子どものためのこの法案。子どもとその保護者の意見はどうか。
取材した茨城県の塾に通う男子高校生は、身の回りで実際に性被害の話を聞いたことがないというが、旧ジャニーズ事務所で起きていた性加害のニュースなどを見て「自分もいつ被害者になるかわからない」と不安な気持ちになったという。
日本版DBSについては「教えを受ける立場では本当にありがたいことで、勉強に集中できて良いこと。少しは安心できるかな」と期待感を示し、塾などが国の認定を受けることについては「(認定が)ない所よりは安心して行けると思います」と話した。
一方、保護者からは「できるだけ早く導入してほしい」という声があがった。認可外保育所や放課後学童クラブ、学習塾、スポーツクラブなどには義務が課されず、認定制であることについて「認定を受けていないと、預ける方としては、選ぶ対象から外すのでは?認定を受けているところの方が、積極的にそういうことに取り組んでくれているな、っていう安心感があるので」と認定の有無で子どもを任せる先が変わる可能性があるという。
また、子どもに対する性被害について「性犯罪が起きてしまってからでは遅い。被害にあった子は心にも体にも一生傷を負っていかなければいけないので、認定を受ける施設が増えてほしい」とDBS制度による性犯罪歴の確認が広がることを求めた。
この法律だけでこどもへの性暴力をなくせるわけではないが、方策の一つとして、今の国会での法律の成立、なるべく早い施行と不断の見直し、内容の周知が求められている。