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「絶対失敗できない」……巨大鮮魚店オープン! 店と客の“壮絶バトル”に密着 初日の売り上げはなんと…?『every.特集』

2024年5月27日 15:26
「絶対失敗できない」……巨大鮮魚店オープン! 店と客の“壮絶バトル”に密着 初日の売り上げはなんと…?『every.特集』

コロナ禍でも売り上げを伸ばし続け、どの店舗も大賑わい。そんな鮮魚チェーンの新店が、5年ぶりにオープンしました。目標は「日本一の魚屋」という巨大鮮魚店の初日は、大勢のお客さんでごった返し、大混乱と大興奮の嵐。熱く燃えた1日を激撮しました。

■関東を中心に22店舗…人気のワケは

東京・東久留米市にある、「角上(かくじょう)魚類」小平店。「角上魚類」は、新潟・寺泊(長岡市)の“魚のアメ横”と呼ばれる「魚の市場通り」に本店を構え、関東を中心に22店舗(2024年1月時点)を展開する鮮魚チェーン店です。

小平店は、22店舗の中でも売り上げナンバーワンの繁盛店。連日、魚を求める客で大盛況。飛ぶように売れます。

お客さんは「新鮮さと、魚の種類の多さ」「おいしいよね、安いしね」と魅力を語ります。店内には、まるで市場のように魚介が並び、鮮魚は常時60種類以上の品揃えです。魚は直接選ぶことができて、値段も安い。

バイヤーが毎日、豊洲と新潟の市場で魚を買い付けて直送しています。着いたそばから店頭に並べるため、鮮度はバツグンです。

店では鮮魚の他に、刺し身や寿司(すし)、総菜や弁当なども販売。そのどれもが、スタッフが店内で調理した作りたてです。コレがウマくて、お買い得と大人気!

さらに、鮮魚売り場では昔ながらの対面販売を実施しています。「(ヤリイカを)お刺し身用にしてもらえますか」「アジを2匹、三枚おろしで」などと、お客さんから注文が次々と舞い込みます。

買った魚は、注文に合わせて面倒な下処理を無料でしてくれます。調理の手間が省けて家ですぐに食べられると、これも評判です。

■念願だった単独店のオープンへ準備

角上魚類の22店舗はコロナ禍でも業績を伸ばし続け、昨年度の売り上げは423億円。どの店も、多くの客でにぎわっています。そんな中、この鮮魚チェーンがある計画を進めていました。

今年1月。埼玉・さいたま市岩槻区にある角上魚類の本社。責任者たちが集まり、ある会議が行われていました。

早瀬弘一・総括本部長
「念願の単独店のオープンということで、『絶対失敗はできない』という思いで、みなさん準備していただいていると思います」

■店長に聞く 目標の売り上げは?

埼玉・草加市に新店のオープンを計画していました。新規での出店は、実に5年ぶりになるといいます。その店長を任されたのが、入社14年目の中堅、小笠原洋介さん(36)。店長としての経験は、わずか1年半。異例の抜てきです。

小笠原さんは「必ず成功させなければ、という重いプレッシャーで毎日寝られない日々を送っております」と会議で語りました。

会社の期待を背負った新店のオープン。小笠原さんに意気込みを聞くと、「目標は日本一の魚屋です」と言い切りました。

その1か月後の2月、5年ぶりの新店となる草加店が完成しました。売り場の広さは約150坪。快適に買い物ができるように、広い通路幅を確保しました。

そして人気の「加工食品」をさらに充実させるために、従来の店よりも作業スペースを広く設けました。駐車場の台数は、全23店舗の中でも最大の、254台分を確保。

新規オープンを目前に控えた小笠原店長に、初日の目標を聞きました。「(初日の売り上げ)目標は、1000万円ですね」

■店長は開店前から険しい表情…ナゼ

そして迎えた、オープン初日。天候は、あいにくの雨。朝7時、売り場には豊洲市場で仕入れたばかりの魚介が続々と到着していました。魚を加工する作業スペースでは、届いたばかりの鮮魚を大急ぎでさばいていました。

その頃、事務所にいた小笠原店長が何やら険しい表情を見せていました。「少しずつ、(お客さまが)カゴを持ったりし始めているんですよね」。朝7時半。開店の1時間半前にもかかわらず、店の前にはお客さんが並び始めていました。

一番乗りの客は、頼もしき“スポンサー”である父と娘でした。

──何時から並ばれているんですか?


「7時すぎくらいから。多分(買う金額は)1万円を超えるよね、きっと」

父親
「まあ、でしょうね~。(お金を)出すのは私の方ですから」


「アハハハハハ」

■いよいよオープン…行列は300人に

満を持して迎えた、オープン初日。新店がこの日用意していたのは、オープンセールの目玉である愛媛県産の「マダイ」。大ぶりのマダイが、半身で800円です。身がプリップリで新鮮な新潟・佐渡産の「生かき」も目玉商品で、100グラム220円。

さらにマグロやブリ、タイなど5種類の刺し身の「お得盛り」が850円。人気商品の寿司の盛り合わせは、本まぐろの中とろが3貫入った10貫で、通常1300円のところ1000円。他にも、この日は全国から様々な約140種類の鮮魚が取り寄せられていました。

そして、オープン15分前。数人だった開店待ちの列は、一気に増えていました。雨にもかかわらず、その数約300人。

午前9時を迎え、小笠原店長が「それでは時間になりましたので開店します、じゃあ開店!」と声をかけました。続々と入ってくるお客さんを店員たちが「いらっしゃいませ」と迎えます。5年ぶりの「新店」が、いよいよ幕を開けました。

■開店直後から殺到 買い物カゴが宙に? 

「お刺し身用でコレ(マダイ)」「私も(マダイを)刺し身で」。お客さんから、次々に依頼が入ります。この日の目玉商品のマダイが、飛ぶように売れていきます。

開店から10分もすると、お客さんでごった返しました。あまりの混雑ぶりに、買い物用の赤いカゴが頭の上で浮いている光景も。従業員も商品を運ぶのにひと苦労で、前に進むこともままなりません。

その頃鮮魚コーナーでは、「イサキが1、アジが2、刺し身で」などとたちまち注文が殺到。店員が作業するスペースでは、棚は下処理を待つカゴでいっぱいになっていました。

客を待たせないよう、スタッフが大急ぎでさばいていきます。しかし商品を渡すにも、押し寄せる客にてんてこ舞いです。

開店から30分で北海道産の毛ガニ17杯が完売しました。

■目玉商品が入荷 特売品を切らすな!

鮮魚コーナーの担当スタッフ
「今、新潟(直送便)が来たので、ここから売り場に出していきます」

この日の朝、新潟の市場で買い付けた鮮魚が4時間かけて到着しました。ウマヅラハギ(450円)が大量に入荷。新たな目玉商品を加え、さらなる売り上げアップを狙います。

同じ頃、刺し身のコーナーでは、小笠原店長が店員に頼みごとをしていました。「あれ、刺し身の得盛りってまだ…。あーダメだ、ヤバイ。得盛り忙しそう、悪い」

店員
「みんなで得盛り行く?」

小笠原店長
「うん、うん、全員で切って」

40パック用意した刺し身の盛り合わせ(880円)が、あっという間に、残り2つとなっていました。特売品を切らすわけにはいかない──。スタッフが盛り合わせ作りに集められ、大急ぎで作り続けました。

■総菜コーナーも寿司コーナーも大混雑

一方、総菜コーナーも最初からごった返していました。

お客さん
「どこにどう並べばいいの? どこにどう並べば…」

店員
「コチラが先頭です、後ろの方にお並びください」

販売スタッフも必死です。売り場は大混乱ですが、お客さんからは「安い!」という声が上がります。

その横で人だかりができていたのは寿司コーナーです。1000円の中とろ入り盛り合わせを大量購入していた女性のお客さんは「家族分7個です」と言いますが、実際にはそれより多くカゴに入れていました。

「な、あ! そうですね、8個。すみません。よくばりすぎました、フッフー」

■「もうしようがない」 大量買い続出

皆さん、とにかく買う量が半端ではありません。「気になったモノはとにかく買う!」とばかりに次々とカゴの中へ。その結果、大量買いが続出。あるお客さんは「結構いっちゃったかもしれない。もうしようがない、ウフフフフフフフ」と気分も上がってるようです。

お客さんが「あ! 来た、来た」と待ち構えていたのは、角上魚類オリジナルの自家製漬け魚「銀だら西京漬け」です。ひと切れ400円。出すそばから、飛ぶように売れます。この日は多めに用意しましたが、昼前には品切れ寸前に。

店員
「とりあえず銀だらとサバの西京漬け、コレ2つ欲しい」

急きょ、県内にある加工センターに西京漬けを追加発注しました。

■お客さんの熱気にあおられ、混乱気味

正午過ぎ。昼時を迎え、さらにお客さんが殺到しました。商品が少なくなると即補充しますが、並べる前から、商品を入れたコンテナにお客さんの手が伸びる状態です。

息子の誕生日だという女性は、中とろ入りの寿司盛り合わせ(1000円)を12個買うといいますが、詰めかけるお客さんの熱気にあおられ、混乱気味です。

女性のお客さん
「え! 足らないかな。1・2・3・4・5、1・2・3…、あ! え!? ちょっと考えます」

その頃、小笠原店長は売り場で「コチラの銀だら・銀鮭(ざけ)の方は、あと5分くらいで出ます」と案内。品切れ寸前の西京漬けの説明に追われていました。

「銀だらとかなくなっちゃうの?」というお客さんに、小笠原店長は「あと5分くらいで出ます」「すみません」と答えます。しかし、倉庫に残っている西京漬けはわずか2ケースだけ。「ヤバいな」と小笠原店長は頭をかきました。 

■レジで「うわー」…1万5000円超え

大量の商品を重そうに持つお客さんを発見しました。その後をついて行くと、レジで「うわー」と声が上がりました。代金は1万5963円でした。 

お客さん  
「どうしようかね、手巻き寿司…、でも寿司も買っちゃって。よく分からないのよコレ、アハハハハ」

午後3時。加工センターから、大量の商品が到着しました。待ちに待った「銀だらの西京漬け」が届きました。店員が「銀だら西京漬け、お待たせしました」と売り場に並べます。

しかしその頃、2100パック用意した生かきが売り切れに。店員は「もう全部、ほぼほぼ全滅」「ブリも終わっちゃいました」と言います。昼のピークを過ぎて、品切れになるコーナーが続出し始めました。予想以上の客に売る魚がなくなるという、まさかの事態に。

──「もう出す魚がない?」

小笠原店長
「コチラ側(鮮魚)はないですね、(鮮魚が)ないので、アチラのお寿司・お刺身・お総菜にお客さまが集中してしまうので、スタッフたちもアチラに行かせてやっていただくという…」

■夕食時を前に、お客さんが続々と来店

夕方5時前になると、夕食時を前にお客さんが続々と来店しました。巨大鮮魚店のオープンセールは、まだまだ終わりません。

大人気の総菜コーナーには、店の外まで行列ができていました。

店員
「たこ(の唐揚げ)がヤバいよ!」

調理スタッフ
「ハイよ!」

たこの唐揚げは100グラム380円。作業スペースは、朝からずっとフル回転です。揚げて、揚げて、揚げまくる!

この日、1歳の誕生日を迎えたという赤ちゃんの母親に聞きました。

母親
「本当は(お祝いに)タイを買いたかったんですけど、お寿司を買い過ぎちゃったんで、違う(赤魚に)しちゃった。おいしいから、お魚だからいいかなって…」

■店長「まだまだこれ以上を狙います」

閉店間際になっても、総菜コーナーの人だかりは絶えませんでした。スタッフの頑張りは、最後のお客さんが帰るまで続きました。

そして夜7時、閉店。オープン初日の売り上げを集計すると、スタッフから「えー!」「えー!!」と驚きの声が。

小笠原店長 
「(初日の売り上げは)1876万円です」

目標の1000万円を大きく上回りました。しかし、小笠原店長はこう気を引き締めました。「店として改善しなければいけない所が様々な所で見つかったので、まだまだ、これ以上を狙います。目標は日本一です!」

日本一の鮮魚店を目指すという草加店。その舞台裏には、「お客さんにおいしい魚を食べてほしい」と頑張るスタッフたちの姿がありました。

(5月24日『news every.』より)