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お腹周り「4.73 センチ」減も……国内初、肥満改善薬の“厳しい条件”は? 「おならで便や油」の副作用【#みんなのギモン】

2024年3月6日 10:04
お腹周り「4.73 センチ」減も……国内初、肥満改善薬の“厳しい条件”は? 「おならで便や油」の副作用【#みんなのギモン】
内臓脂肪を減らす効果が期待できる新薬「アライ」が 4 月、国内で初めて発売されます。処方箋なしで購入できる一方で厳しい条件があり、副作用にも要注意です。2 月には肥満症の新薬「ウゴービ」も発売。肥満関連の薬が相次ぐ背景には社会的な課題があります。

そこで今回の#みんなのギモンでは、「脂肪減らす薬 効果どれくらい?」をテーマに、次の2つのポイントを中心に解説します。
●誰が使える? 副作用は
●肥満関連の薬 背景には

■食べた脂肪の約25%を便と一緒に排出

近野宏明・日本テレビ解説委員
「4月8日、国内で初めて内臓脂肪を減らす薬『アライ』が販売されます。パッケージは薬局で売られている一般的な薬と同じような見た目なんですが、処方箋なしで薬局で購入することができます」

「内臓脂肪や腹囲を減らす効果が期待できるというもので、食べた脂肪の約 25%を便と一緒に排出できます。1日3回、1カプセルずつ服用する必要があり、実際に行われた臨床試験では、1年間服用した場合、腹囲が4.73センチ減少したという結果もあります」

藤井貴彦アナウンサー
「ベルトの穴が1つか2つくらい縮むほどになるんじゃないですかね? 夢のような薬だと思いますが、どうなんですか?」

近野解説委員
「確かにそれくらいですね。関心をお持ちの方、特に私たちの世代は多いと思います」

■肥満の定義や肥満症との違いは?

近野解説委員
「まず、肥満とは何なのか。日本肥満学会によると、肥満の定義は身長と体重から算出するBMIが25以上。これに加え、高血圧など実際に健康障害が出ている場合にはただの肥満ではなく『肥満症』と呼ばれ、医学的な治療の対象になります」

■購入条件の1つに「腹囲」ナゼ?

「今回発売されるアライは、肥満症になる前の段階で飲む薬となります。買うことができる人の条件もかなり厳しくなっていまして、年齢は18歳以上で、男性の場合は腹囲が85センチ以上、女性の場合は90センチ以上です」

藤井アナウンサー
「それだけだったら、そんなに厳しい条件じゃないように思いますけどね」

近野解説委員
「でも、85センチってけっこう微妙なところにありません?」

藤井アナウンサー
「そうですね、私もたまに85センチを超えないようにお腹を凹ませて測っていますけどね」

近野解説委員
「なぜ腹囲が基準になっているのか。日本肥満学会理事の神戸大学大学院・小川渉教授によると、皮下脂肪より内臓脂肪が蓄積する方が、病気のリスクが格段に高くなるそうです」

「内臓脂肪が蓄積している人はCTなどいろいろな機械を使わなくても腹囲で推定することができるので、病気を予防する意味でも腹囲のサイズが1つの基準となっているといいます」

澁谷善ヘイゼルアナウンサー
「私も体型を気にして身体を鍛えているんですけども、お腹周りってなかなか脂肪が落ちないですよね」

近野解説委員
「ヘイゼルさんは頑張れば効果がすぐ出ると思いますが、私たちの世代になってくると、頑張っても全く、全くと言っていいほど悲しいことになるんです」

■薬剤師がチェックシートで対面販売

近野解説委員
「さらにこの薬についてはいろいろな条件があります。初めて購入する時にはその前に3か月以上、生活習慣を改善するための運動や食事を続けることが求められています」

「さらに1か月前からは、生活習慣を記録する必要があります。食事の量を減らせたのか、運動量を増やせたのか、といったことを申告しなければいけません。そして、糖尿病や高血圧などその時点で健康障害がないことです」

「こういった条件を、事前に研修を受けた薬剤師がチェックシートを使って確認し、対面で販売します。また、服用している間もずっと運動や食事の管理をして、体重や腹囲の記録をつけ続ける必要があります」

徳島えりかアナウンサー
「この生活習慣を維持するだけでも少しやせられそうなくらい厳しいですけども、安易にダイエット目的で飲む人がいないように、これくらい厳しい条件が課せられるということですよね」

近野解説委員
「そういうことですね。小川教授によると、一般の薬局やドラッグストアで売られるものでこれくらい厳しいものはあまりないそうです」

■脂肪を分解する酵素の働きを阻害

近野解説委員
「このアライは、どうして脂肪を減らす効果が期待できるのか。脂肪は分解されると身体が吸収してしまうので、脂肪を分解する酵素の働きをアライが阻害します。その結果、食べ物や飲み物などに含まれる脂肪の吸収を低下させる効果が出ます」

「そして、吸収されなかった脂肪は便として排せつされます」

■気づかない間に…副作用も 対策は?

近野解説委員
「一方で、気づかない間におしりから油がもれる、便や油を伴うおならが出るといった副作用が出る可能性もあります。メーカーの大正製薬は、脂肪分の多い食事を控えることや、おむつや便もれパッド、生理用品などをつけるといった対策も併せて紹介しています」

河出奈都美アナウンサー
「父親に勧めようかなと思ったんですが、気軽にというわけにもいかなくなったような気もしました。こういった副作用があることを理解した上で、脂分の多い食事を控えようという気持ちになるかもしれないですね。油がもれるということがあるのであれば」

近野解説委員
「薬に頼るだけじゃなくて、そもそも脂肪分の多い食事を控えることに気をつけようという意識が働くかもしれませんね」

■「肥満症」の新薬も発売…背景は?

近野解説委員
「続いて、肥満関連の薬が相次いで発売されている背景を考えます。2月、国内では約 30年ぶりに新たな肥満症の治療薬『ウゴービ』の販売が始まりました。そして4月には国内初の肥満改善薬であるアライの販売が始まります」

「肥満に関する薬の開発や販売が進んでいる印象を受けますが、その背景には日本人の肥満が急激に増えていることがあります。また、国民医療費のうち生活習慣病に関連する疾患にかかる医療費は約 7.5 兆円で、全体の 23%を占めています」

「肥満や内臓脂肪は生活習慣病の原因となるため、1人1人の健康寿命を延ばすためにも、社会全体の医療費を減らして社会保障制度をしっかり維持していくためにも、対策が重要なんです」

■処方箋なしで購入できるリスクは?

徳島アナウンサー
「4日放送の#みんなのギモンでも、肥満は自己責任ではなくて社会全体で考えていかなくてはいけない問題だという話がありました。必要な方にこの薬が届いてほしいと思うとともに、処方箋なしで薬局で買えてしまうのは、誰でも買えてしまうリスクも伴いますよね」

近野解説委員
「処方箋なしというのは、あらゆる薬がそのリスクを秘めています。アライもその対象の1つになり得ます。そのために今回紹介したような細かな段取りが決まっています」

「肥満症治療薬をめぐっては近年、インターネット広告などを中心に『ダイエット薬』として掲載され、オンライン診療などで購入されるケースが相次いでいます。その結果、本当に必要な人に届かないという懸念があり、厚生労働省は適正な使用を呼びかけています」

「今回販売されるアライの効果は、内臓脂肪を減らすというものです。単なるダイエットや美容目的などで使用するものではありません」

藤井アナウンサー
「こういった薬に頼らざるを得ない方もいらっしゃるとは思いますけれども、ある程度自分たちの努力で肥満の部分を解消することができる人が大多数なんじゃないかと思います」

「1人1人の努力で『薬を飲まなくても頑張れるんじゃないかな』という気合いを呼び起こすきっかけに、この薬の存在を使うというのも必要かもしれませんね」

近野解説委員
「薬があること自体は心強いなと感じる方も多いかもしれません。いずれにしても、生活習慣の改善は必要ですので、私も境界線上に今いますので気をつけます」

(2024年3月5日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)

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