【解説】相次ぐ水難事故 危険な海や川の“見分け方” 流されたら「○○泳ぎ」 安全な夏休みを過ごすために
21日から夏休みという小中学生も多いと思います。この時期に増える水の事故とその対策について、お伝えします。海も川も、思わぬ危険が潜んでいます。今年もすでに相次いでいる水の事故を防ぐには、どうしたらいいのでしょうか。
●ここは入るな!海や川
●流されたら「○○泳ぎ」
以上のポイントを中心に詳しく解説します。
夏場に水難事故がどのくらい起きているのでしょうか。警察が把握しているだけで、去年の7~8月は全国で638人が事故にあっています。そのうち亡くなった方は225人でした。
では海と川、両方で気をつけるべきことを押さえておきます。
まずは海です。特に怖いのが「離岸流」です。
岸に向かって押し寄せた波が波打ち際で行き場を失い、今度は逆方向に、岸から沖に向かって急激な潮の流れが起きることを、「離岸流」といいます。
日本ライフセービング協会によると、海水浴場の溺水事故の約6割がこの離岸流によるものだというデータもあります。
どのように危険なのでしょうか。
離岸流を人工的に発生させたプールでの実験映像では、遊泳者が沖のほうに一気に流されていました。流れは速いところで秒速2メートルにもなるため、オリンピック選手でさえも流れに逆らって泳ぐのは難しいと言われています。
離岸流が“起きやすい”場所はいくつかあります。そのうち3つを紹介します。
まず、岸に向かって地形がへこんでいるところ。次に、ゴミが集まっている場所。そして、構造物がある場所です。突き出した堤防があるような場所は、沖に向かって流れが発生する可能性があります。
これらの場所から、海に入らないようにしてください。
では、自分では気づかずに離岸流に流されてしまったら、どうするとよいでしょうか。流されている最中は岸のほうに戻りたくなりますが、決してあわてず、岸に向かって泳ぐのではなく、岸と平行に泳ぎ、流れから脱出するのがいいそうです。
では川について、どのような危険が潜んでいるのでしょうか。日本水難救済会の遠山純司理事長に話を聞きました。
まず、光の屈折です。川の底がどこなのか、水中にある石を見た時に、光の屈折によって、実際の石の位置よりも“浅いところにある”ように見えてしまう現象があります。
さらに、川は地形が複雑で入ってすぐには足首くらいでも、少し進むと急に深くなるということがあります。
水深は浅く流れも緩やかに見える川に、専門家の立ち会いの下、実際にスタッフが入ってみました。川の中央付近の水深は足首ほどですが、その先で急に深くなり、流されてしまいました。
このときの水中を撮影した映像を見ると、川底に足が急につかなくなっていました。このような急な深みで溺れる事故は特に多いのです。
川の危険の2つ目は、砂利です。岸に戻ろうとした時に、砂利の斜面が崩れてしまい、なかなかはい上がれない状況になってしまうことがあります。まるでアリ地獄のような状態です。
そして3つ目は、海の離岸流と似た「循環流」という現象です。
本流から枝分かれするように岸の方向に向かって流れ、下流から上流に流れたあと、再び本流と合流する、これが循環流です。
地形にもよりますが、非常に流れが速い場合があるそうで、本流の方向、つまり岸から離れた場所の流れに引き込まれてしまう恐れもあり、大変危険です。
では、実際に海や川で、流されてしまったらどうすればいいのでしょうか? 流された時は、基本的には「浮いて待つ」です。
ただ、気をつけたいのが浮き方です。「仰向けになって大の字で浮く」とよくいわれますが、これはプールなど波や流れがない静かな水面ではよいのですが、海や川で「浮いて待つ」と、顔に水がかかりパニックになり呼吸ができなくなり、浮き続けることは難しいといわれています。では、どうするといいのでしょうか。
海・川では「イカ泳ぎ」です。
手足を動かし、お腹を上にして、顔は水面に出します。手と足を引きあげて、温泉をかき混ぜるような要領で水をあおり、イカのようにゆっくり進む泳ぎ方です。こうすることで浮力を確保し、浮き続けることができるということです。
◇本当に泳いでいい?
当日の波や風、水温などのコンディションに注意をすること。体調面のコンディションも大切で、睡眠不足のほかお酒を飲んで泳ぐのはとても危険な行為です。
◇ライフジャケット装着を
特に泳ぎに自信のない人は、ライフジャケットを装着すると非常に効果的です。
◇周りに知らせる
自分が流されていることを知らせるための備えも大切です。笛のついたライフジャケットなら助けを呼ぶこともできます。スマートフォンを防水パックに入れて身につけて泳げば、いざという時に救助を呼べます。
◇
いよいよ夏休みに入り、本格的な海水浴シーズンが始まります。楽しいはずのレジャーが一転して悲しい水難事故にならないよう、危険を知り、事前の備えをしっかりおこなうことが大切です。
(2023年7月21日午後4時半ごろ放送 news every. 「知りたいッ!」より)