【視覚障害】16年間引きこもり… "ブラインドダンス"で取り戻した笑顔の私『every.特集』
社交ダンスの中にブラインドダンスという部門がある。ペアの一人は視覚に障害のある人で、健常者と組んで踊る。今年、その全国大会に初出場したのが河端(かわばた)紫乃(しの)さん(46)である。紫乃さんは「本当に信じられない、こんなたくさんの人の前で自分が踊れるんだ」と話す。というのも紫乃さんは16年間、自宅に引きこもる生活だったからだ。
彼女は9歳で、一型糖尿病になり、腎臓と膵(すい)臓の移植を待つ日々を過ごした。先の見えない闘病生活の苦しさで摂食障害となり、過食や拒食を繰り返した。それでも、友人と過ごす楽しい時間は大切にしていたのだが、病気の影響で視力を失うと家族以外と外出することがなくなり人とのふれあいがほとんどなくなった。
転機は40歳になったころ。腎臓と膵臓のドナーが見つかり、移植手術が成功した。しかしその時にある思いが頭をもたげる。「身体が健康になったときに、ふとこの先どうやって生きていけばいいんだろう」と。そんな時に出会ったのが、ブラインドダンスだった。およそ20年の歴史がある日本発祥のスポーツで、ダンスチームを率いる視覚障害者の宮川(みやかわ)さんが、紫乃さんをブラインドダンスに誘った。
当時の様子を宮川さんは語る。「最初は人見知りもひどかったし、時間も守れないとかそういう感じだった。今では誰とでも明るく接している」。
ブラインドダンスを始めて3年。紫乃さんは今年、全日本選手権に挑戦しようと決意した。パートナーを務めるのは、社交ダンス歴10年以上のベテラン横山晴美さん。競技人口の少ないブラインドダンスでは女性同士のペアも珍しくない。しかし練習は目が見えないからこその壁が立ちはだかる。鏡で自分を見て動きを修正することができないため、「こうやるとかっこいいとかがわからない」と紫乃さんは話す。そんな紫乃さんに、ペアの横山さんは、自分の手を紫乃さんの手に重ね、丁寧に指先の細かな動きを伝えながら練習する。
大会まであとわずかに迫ったある日。練習を見た講師から紫乃さんに指摘があった。踊るときに笑顔が出ていないというのだ。「笑うって考えるとむずかしい」と苦笑する紫乃さんだが、笑顔をうまく作れないのは闘病生活が長かった紫乃さんならではの理由があった。
そして、迎えた大会当日。紫乃さんペアの予選。ワルツに乗り見事に踊るのだが、紫乃さんの表情は硬いままだ。そのとき…ペアの横山さんがある行動に出るー
ブラインドダンスで本来の自分を取り戻そうと歩み始めた一人の女性の挑戦に密着した。
※詳しくは動画をご覧ください。(2023年11月6日放送「news every.」より)