【閣議決定】「103万円の壁」引き上げ「働き控え」の人は期待 上限178万円なら福岡市400億円・北九州市200億円の減収か
政府は22日、年収の「103万円の壁」を引き上げることなどを盛り込んだ、新たな経済対策を閣議決定しました。この動きに、福岡でパートやアルバイトとして働く人たちからは、期待の声があがっています。
福岡市南区にあるカフェレストラン、九重珈琲をたずねました。
■阿部まみアナウンサー
「お昼を過ぎた時間帯です。本来は10人のスタッフが必要なところ、8人しかおらず忙しそうです。」
大学院生の藤村知輝さんは、1年半ほど前からキッチンでアルバイトとして働いています。普段は週4日、シフトに入っていますが、11月は半分以下に減らしています。
■アルバイト・藤村知輝さん
「103万の壁もあるので働けない。壁を取り払ってもらえたらうれしい。」
気にしていたのは、年収が103万円を超えると所得税が発生し、親が扶養控除を受けられなくなる「103万円の壁」です。こちらの店では年末が近づき、他のスタッフも103万円を意識して、働きたいのに働けない「働き控え」の状況が起こっているといいます。
ここで週2・3回、パートとして働いている金城 紋さんも、働く時間を調整していました。
■パート・金城 紋さん
「いつも来てくださるお客様を制限するわけにはいかないので、来ていただいたお客様を迎え入れる体制としては、ちょっと今は苦しいかなっていう時も時間帯によってはあります。」
そんな金城さんも「103万円の壁」を巡る動きに注目しています。
■金城さん
「ここ最近の政治の動きで、やっぱり期待が持てるような時期に今までよりも来ているのかなと思う。」
10月の衆議院選挙で躍進した国民民主党は「103万円の壁」の引き上げを掲げています。政策実現に向けて、自民・公明の与党とこれまで複数回にわたり協議を重ねてきました。
■自民党・小野寺政調会長
「いわゆる103万円の壁については令和7年度、税制改正の中で議論し、引き上げる。」
「103万円の壁」の引き上げの方針が正式に決まりました。ただ、具体的な引き上げ幅については、これからです。
「103万円」以外にも、勤務先の規模にもよりますが、106万円を超えると社会保険への加入が義務づけられ、保険料を支払う必要があります。また、130万円以上になると、すべての人が社会保険料を払うことになります。
国民民主党は、178万円までの引き上げを主張していますが。
■元木寛人アナウンサー
「街の人は、年収の壁をどれくらい引き上げることを望んでいるのでしょうか。」
■街の人
「178万円。 今、抑えて働いているので、ここまで上がってくれたらうれしい。」
「178万円。これまでずっと固定されてきたと思うのですが、物価の上昇などに合わせて(壁も)上がっていくべき。」
「178万円。手取りが増えると消費が増える。結果的に日本経済にとってプラスになる。」
福岡市・天神で50人に聞いたところ、現状の103万円と答えた人は1人もおらず、106万円が1人、130万円が27人、178万円が22人でした。一方、こんな意見もありました。
■街の人
「130万円。税金は税金で必要だと思うので、そこが減ってしまうのはいろいろ問題があるかな。」
働き控えがなくなり、人手不足解消にもつながると期待される「103万円の壁」の引き上げ。しかし、大幅な実現には、さまざまな「壁」が立ちはだかりそうです。
引き上げの議論が進む中、大きな課題とされているのが、国や地方の税収の大幅な減少です。
具体的な引き上げ幅が決まるのはこれからですが、仮に国民民主党が主張する「178万円」まで引き上げが実現した場合、国と地方の税収があわせて7兆6000億円減ると政府は試算しています。
その場合、福岡市はおよそ400億円、北九州市はおよそ200億円の減収と見込んでいます。
北九州市の武内市長は「いま働き控えをしている人にとっては一つのよいきっかけになるが、行政サービスに影響が出ることは懸念がある。財源の影響に配慮しての議論を国にお願いしたい」とコメントしています。