HPV感染症ワクチンの無料接種期間を市独自で延長、対象者の3回接種を目指す「HPV関連疾患への感染リスクを低減してほしい」 愛知・豊川市
愛知県豊川市が、ヒトパピローマウイルス (HPV)感染症ワクチンの無料接種期間を市独自で延長することを発表しました。
HPVとは、厚生労働省によると性経験のある女性であれば50%以上が生涯で一度は感染するとされている一般的なウイルス。子宮頸がんをはじめ、肛門がん、膣がんなどのがんや、尖圭コンジローマなど多くの病気の発生に関わっており、特に近年は若い女性の子宮頸がん罹患が増えているといいます。
現在日本では、1997年4月2日から2009年4月1日までに生まれた女性が、HPVワクチン接種を無料で受けられる「キャッチアップ接種」を2025年3月31日まで実施。豊川市によると、世界的に見ても、HPVワクチンは非常に効果が高いとされており、厚生労働省HPでは、子宮頸がんの予防効果として、2価及び4価ワクチンであれば50~70%、9価ワクチンであれば80~90%防ぐことが示されており、現在ではほとんどの人が9価ワクチンを接種しているといいます。
しかし、厚生労働省が2024年5月に公表した対象者へのアンケート調査では、約半数の人がキャッチアップ接種により無料で接種できることを“知らない”と回答、またHPVワクチンを“安全”と認識している人が約3割という結果に。
厚生労働省によると、HPVワクチンは合計2回または3回接種が必要。また豊川市によると、3回接種を完了するまでに最短で4か月必要なため、例えば、12月以降に1回目の接種を受ける人などは、無料期間内に3回接種を完了することができないといいます。
キャッチアップ接種期限が今年度末に差し迫るなか、国の制度自体を知らなかったり、接種を決断できずにいるうちに、国が示す無料接種期間に3回の接種が完了できなくなる人や接種開始をあきらめてしまう人が発生してしまうことが懸念されていました。
こうした状況を受けて、豊川市では、“一人でも多くの人に正しい情報を届け、接種できる環境を整備し、HPV関連疾患への感染リスクを低減してほしい”という思いから、国が示す期限に加え、市独自で無料接種期間を延長することを決定。市内の接種対象者が、3回の接種を全てを無料で受けることができる環境を整備しました。
延長後の期限は、2025年12月31 日(水)まで。対象者は、1997年4月2日から2009年4月1日までに生まれた女性、2025年3月31日までにHPV ワクチンを1回または2回接種した人で、3回接種が完了していない女性としています。
豊川市担当者によると、キャッチアップ接種の制度自体が予防接種法に基づいて進められているため、一般的には国が示す期限までとすることが行政運営上の通例。無料接種期間を延長するためには、来年度の予算編成作業中というなかで、議会や医師会などとの調整も必要となるため、豊川市では年度当初から周到に調整してきたといいます。そのため、豊川市担当者によると、現時点で無料接種期間の延長を実施している自治体は全国的に見ても“稀”なのだそう。
豊川市では、2025年4月以降の接種は任意接種となり、「白色」の予診票を使用。これまで使用していたピンク色の予診票を持っている人は、保健センターで差し替えが必要となるといいます。