【先生の働き方】残業代は実現するか「定額働かせ放題」の教員たち 学校の常識を見直した「チーム担任制」とは 福岡
残業代がなく、「定額働かせ放題」とも言われる学校の先生についてです。共同通信は今週、「残業代を支払う案が政府内で浮上している」と伝えました。国や学校現場では、働き方を改善しようと試行錯誤が続いています。
■福岡県の公立学校の教諭
「自分のしたいことをする時間は本当にない状態ですね。1週間通して仕事ばかりしているなと思います。土日も仕事の予定が必ず入ってきているので、過酷ですね。夜9時半とか10時になることが多い。」
社会問題となっている先生の長時間労働。SNS上では今、その大きな要因とされる、ある法律を巡って議論が活発化しています。
『拡散希望アンケート 給特法と残業代 どっち希望?』
1971年に制定されたいわゆる「給特法」。月額給与の4パーセントを基本給に上乗せする代わりに、残業手当などは支給しないと定められていて、「定額働かせ放題」とも指摘されています。
こうした中、文科省はことし8月、先生の処遇改善として、上乗せ分の4パーセントを13パーセントに引き上げる案を盛り込んだ来年度の予算を財務省に要求しました。
■盛山正仁 前・文部科学大臣
「国費としては1000億を超える金額になる。財政当局と折衝し、多くの意欲のある方に教員になっていただく。」
しかし、今週の共同通信の報道によりますと、残業時間に応じた手当を支払う仕組みの導入案が、政府内で浮上しているというのです。実現すれば、残業代の代わりに一定額を支給する制度は廃止されることになります。
残業代を支払うことで先生の労働時間を抑えるよう、管理職を仕向ける狙いもあるということです。
教育現場に詳しい専門家は。
■名古屋大学・内田良 教授
「かなり劇的な変化が現場に生まれることが想像されます。残業代が支払われることになれば、相当規模の予算が必要になってきます。予算がもし足りない、あるいは財源がなかなか確保できないと。でも、財源がないからこそ、業務抑制をしていく動きになることを期待する。」
現場で働く先生は一定の評価をしつつ、不安もあるといいます。
■福岡県の公立学校の教諭
「残業代をあんまり払いたくないから帰れってなりますよね。学校にはいないけど、帰ってから持ち帰りの仕事があるのは今も変わらない。学校にいる時間がただ少なくなるだけで、業務量が変わらないというのが一番怖い。」
一方、阿部文部科学大臣は共同通信の報道を受け、「給特法の廃止は考えていない」と話していて、政府内での調整がこれからどうなっていくのか先行きは不透明です。
こうした中、先生たちの負担軽減のため、“当たり前”を見直す取り組みも行われています。福岡市城南区にある城西中学校1年1組の教室で朝の会に参加していたのは下司健先生(30)です。朝の会を終えると下司先生は教室の外へ。教室には別の先生がやってきて、掃除の時間です。
■生徒
「担任の先生はいないです。『チーム担任制』といって、担任が何人かいて何日かごとに先生が替わる。」
城西中学校では今年度から「チーム担任制」を導入しました。これまでは1クラスに1人の担任がつくのが当たり前でしたが、「チーム担任制」では、担任の業務を担うメインティーチャーと、そのサポートに回るサブティーチャーが2・3日に1回変わます。
どうしても多くなりがちな担任の仕事を分担し、負担軽減につなげようという取り組みです。
給食の時間には。
■下司先生
「先生、別の教室に行っていいですか。当番が来たら見てもらっていいですか。」
■サブティーチャー
「OK。」
子どもたちの給食をサブティーチャーに任せている間に、下司先生は別の生徒の様子を見に行っていました。
■下司先生
「チームでやっている分、お互いお願いしあっている。」
さらに「チーム担任制」は若手の学びの機会にもつながっています。この日、ベテランの先生のクラスにいたのは新人の先生です。
■新任教諭
「ほかの先生たちの指導法などを見る機会もないので、自分がメインティーチャーに入った時に、こう指導しようと生かしていけるので良いと思っています。」
これまでの学校の常識を見直した「チーム担任制」に生徒たちは。
■生徒
「いろんな先生と関わっていけるのが楽しいです。」
「学級委員の活動の時に誰に相談していいか分からなくて、 担当の先生に話していいのか、 その日のメインティーチャーに話せばいいのか、分からないことはあります。」
「チーム担任制」の導入を決めた校長は、まだ改善の余地があるとしながらも、現場の働き方に変化を感じています。
■城西中学校・西田淳一 校長
「サブティーチャーをしている時は余裕があるので、その週は早く帰っていると感じています。改善すべきところは改善して、ステップアップできたらと思っています。」
今、転換期を迎えている学校の先生の働き方。すべては子どもたちとじっくり向き合えるように、国でも現場でも、試行錯誤が続いています。