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【なぜ必要?】春を告げる「阿蘇の野焼き」1万6千haの草原を焼く 植物へのダメージはない?

2025年3月5日 9:36
【なぜ必要?】春を告げる「阿蘇の野焼き」1万6千haの草原を焼く 植物へのダメージはない?
ニュースのそもそもをひも解く「県民のギモン」、今回のテーマは「阿蘇野焼きは、なぜ必要なのか?」です。

草原に火を放ち、ススキなどの枯れ草を一斉に焼き払う阿蘇の野焼き。毎年2月から3月に行われ、阿蘇の山々に春を告げます。阿蘇の草原の面積は2万2000ヘクタール。このうち7割にあたる1万6000ヘクタールほどで野焼きが行われています。野焼きの面積は、水俣市や玉名市と同じくらいの面積になります。

■中村絵奈リポーター
「なぜ、阿蘇の野焼きは毎年必要なのか?みなさんに聞いてみます!」

■若者
「野焼きって何?からです、まず」
Q野焼きって何?
「わからないです!ハッハッハッ、野を焼くんじゃないですか」

■母親
「何で焼くんだろう?わからないな…そこまで考えたことがなかったです」

■若い世代の女性
「学校の授業で木や草を再生させるためというのは聞いたことがあります。斬新なやり方というか、びっくりしました」

■年配の男性
「牛とか馬とかね、牧畜を守るのにもつながると思っています。『野焼きのボランティアに行きたい』と思っていた。体が動く間にぜひ一回でも参加したいと思っている」

■70代女性
「野焼き自体はいいことなんですけど、山火事が多いじゃないですか。ちょっとした油断で(周囲が) 燃えたら大変ですよね。それがいつも怖いです」

(緒方太郎キャスター)
阿蘇グリーンストック専務理事の増井太樹さんに聞いたところ、野焼きを行う理由はズバリ、「草原を維持するため」だそうです。増井さんによりますと、主に希少な動植物の生息地を守ることや枯れ草を焼却することで新しい草が育つ環境をつくり出しているということです。

(中村絵奈リポーター)
新しい草が育つ環境っていいますけど、火が広がって植物にダメージを与えるようにも思うのですが…。

(緒方太郎キャスター)
実はそうではないんです。こちらも増井さんにお聞きました。

■阿蘇グリーンストック 増井太樹専務理事
「実は温度を測ってみると面白いことが2つわかりました。実は1か所が燃える時間というのは、野焼きの場合は数分であるということがわかりました。もう1つは地面の中の温度です。野焼きの時期、植物は根っことか種子で冬を越して眠っていますが、実は温度が野焼きの時は全く上がっていないんです。春に野焼きをするということは、実は植物にはダメージがない」

(緒方太郎キャスター)
増井さんによりますと、野焼きの場合、1か所が燃えるのは3分程度で、地面の下の温度はほとんど上昇しないそうなんです。

このため、地面の中で休眠している根や種子などは死ぬことはなく、枯れ草が焼けることで覆われていた地面が露出。真っ黒になった地面は、太陽の熱を吸収しやすく地面が暖められ、種子などは「春がきた」と思い芽を出す。こういったサイクルを生み出しているということなんです。

(中村絵奈リポーター)
山火事になる心配はないんですか?

(緒方太郎キャスター)
増井さんによりますと、次のポイントのもと、野焼きは“人が火をコントロールしている”と話しています。

まず、想定範囲外に火が広がるのを防ぐ「防火帯」です。野焼きを行う草原の周囲600キロにわたって、幅5メートルから10メートルほどの防火帯を整備しています。このうち、360キロは人の手で草を刈っているということなんです。

また、一気に燃え広がるのを防ぐため、防火帯から火をコントロールする時には、風を読み風下から風上へ、斜面は上から下へというのが原則だそうです。

こうしたことに十分注意し、野焼きを実施しているということなんです。

一方、地元の牧野組合の組合員の減少など野焼きの担い手の確保が課題ともなっています。阿蘇の美しい景観でもある草原を維持するには、ボランティアの存在が欠かせないということです。

最終更新日:2025年3月5日 9:36
熊本県民テレビのニュース