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リサイクルの難しさを打破へ…破棄されがちな”細い電線”、東北大学の研究

2025年3月5日 6:30
リサイクルの難しさを打破へ…破棄されがちな”細い電線”、東北大学の研究

今回は、プラスチックのリサイクルについてです。
ペットボトルやビニール袋などすでにプラリサイクルは一般的になっていますが、東北大学の研究ではこれまでリサイクルが難しかった〝あるもの〟に注目しました。

東北大学の青葉山キャンパスです。

26日、準備された会場に所狭しと集まっていたのは、民間企業や研究者など約100人。あるシンポジウムが開かれていました。

工学研究科の熊谷将吾准教授です。
これまで難しいとされてきたあるもののリサイクルに挑戦しています。

熊谷将吾准教授
「本シンポジウムにおいて、電線リサイクルの可能性と課題を全体で共有する。銅も塩ビ(プラの一種) も、私たちは資源を輸入して製造しておりますので、これからはこういった資源を国内の中で循環・利用できるような取り組みが非常に重要」

電線といえば、思いつくのがこちらの送電線。
そもそも、一般的な電線とは、私たちが感電しないように銅など金属でできた部分をプラスチックで覆ったものです。

送電線など太い電線は、周りのプラスチックを切って中の「銅」を取り出してきましたが、このように細いものだときれいにわけることは難しく現状では回収された一部の銅のリサイクルに留まりプラスチックの多くは埋立や焼却処分されてきました。

参加者(鉄道事業)
「細いケーブルは、むく労務費もかかってしまうので、現状全て廃棄としていた。今まで捨てていたところの課題として挙げられるのが、剥離の難しさにある。それを打破できるのが今回の技術かなと思う」

参加者(化学メーカー)
「リサイクルが難しいところまで手を広げていって、色んな所から有価物を取り出せるというのはすごく期待が大きい」

実用化に向けて、最終段階に入っているという細い電線のリサイクル。

熊谷将吾准教授
「使用済みの自動車から回収してきたワイヤーハーネスと呼ばれるもの。これが自動車の中に張り巡らされています。こういった電線がワイヤーハーネスの中にたくさん入っています」

一体、どのような方法でリサイクルできるのか。
熊谷准教授がたどり着いたアイデアとはー。

熊谷将吾准教授
「有機溶媒に浸してある電線があるんですが、溶媒を吸って膨らむんですね。膨らむことによって、銅線と周りのプラスチックの間に隙間ができます」

マニキュアを落とす「除光液」に似ているという「有機溶媒」に電線を浸すことで、電線が膨張=膨らむのです。

「うどんみたいな麺が茹でると膨らむような」
「まさにそのイメージ」

そして、最後のステップへ。

熊谷将吾准教授
「膨張・膨潤させたケーブルを、ボールミルと呼ばれる反応器の中に入れました。一緒にステンレスのパチンコ玉よりもちょっと大きいくらいのボールを入れています」

スイッチを入れるとー。

熊谷将吾准教授)ボールの衝撃力がケーブルに伝わって、中の銅線がちょっとずつ滑り出てくる
青木アナウンサー)完全に銅が見えてきました
熊谷准教授)こんな感じですね。ちょっとずつ滑り出てくるんですけど、周りの被覆材(プラスチック)がちぎれることもなく
青木アナウンサー)簡単ですね、気持ちいいですね

ステンレスのボールが大きすぎたり回転するスピードが早すぎたりすると、電線がちぎれてしまうため、そのバランスを試行錯誤してたどり着いたこのアイデア。

機械を大きくしていけば、より大量の電線から銅とプラスチックの両方をきれいに取り出すことも可能だといいます。

この研究を一緒に進めるのが、プラスチックリサイクルの第一人者・吉岡敏明教授です。吉岡教授も今回のアイデアの実用化に期待しています。

吉岡敏明教授
「今回のシンポジウムを開く際も、すごい数の申し込みがたくさん来ていますので、ここに対しての注目度は高い。それだけ電線のリサイクルで困っているところもある。非常に期待感がある素材製品と思っています」

熊谷将吾准教授
「従来のリサイクルですと、価値の高い銅線の回収に注目が行きがちだった。これからは、金属だけではなくてプラスチックもしっかりリサイクルする、全てをリサイクルできるような技術がこれから大事」

最終更新日:2025年3月5日 6:30
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