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親と離れて暮らす子は4万2000人…子どもも大人も幸せになるために「養育里親」の思い

2024年3月14日 18:30
親と離れて暮らす子は4万2000人…子どもも大人も幸せになるために「養育里親」の思い
愛媛県内で里子を迎えた山下さん

およそ4万2000人。これは、様々な事情で産みの親と離れて暮らす全国の子どもの数です。

このうち愛媛県内ではおよそ540人の子どもが、児童養護施設や里親の家で生活しています。子どもも大人も幸せになるために…実際に養育里親として子どもを育てる県内の夫婦や団体を取材しました。

“養育里親”たちが子ども食堂を開く理由

愛媛県伊予市で開かれた子ども食堂。

2022年1月に設立された伊予市のNPO法人、Lienが企画して、初めて行われました。

NPO法人Lien 兵頭さおり 代表:
「私らが集まっているのは養育里親の集まり。養育里親をやって気づいた事は、子どもの虐待、ネグレクトをする親が、私たちと変わらない。共働きで仕事しよる人たちが切羽詰まって手を出してしまうということを知って、そこでもっと大人たちに息が抜ける場所ができんかなと思ったのがきっかけ」

養育里親は、もっとも一般的な里親です。特別な資格がなくても、研修を受けて都道府県知事に認められると、養育里親として子どもを受け入れることができます。

Lienは、そうした養育里親の認定を受けているメンバーが中心となって設立したNPO法人です。

乳児院で暮らす2人の兄弟を里子に迎えた山下さん夫婦は

Lienの理事を務める山下 憂さん。養育里親の認定を受けている山下さんは、同じく認定を受けた夫の直人さんと、2人の男の子を里子に迎えて家族4人での生活を送っています。

5歳の兄、そうたくん(仮名)と、4歳の弟、こうたくん(仮名)。実の兄弟です。

こうたくん:
「プーちゃんもあるから!2個のプーちゃん。あとママのお人形も」
そうたくん:
「えっと、ママの好きなの取ってくる!」

共に乳児院で暮らしていた兄弟がこの家にやってきて1年以上。

兄弟げんかは日常茶飯事。でも、これが山下さんが選んだ家族のかたちです。

必要なのは「大人たちがサポートし合える体制」

夫・山下直人さん:
「例えば不妊治療するお母さんの精神的負担はめちゃくちゃ大きくて、それが軽減できるんだったらもっともっと(里親制度が)広がればいいと思うし、必ずしも自分のDNAを引き継がなくていいなら、もしかしたらお父さんお母さんの愛情に飢えている子たちが、それこそ乳児院や養護施設にたくさんいるので、そういう子たちを迎えるのもひとつの選択肢としてあっていいと思う」

その一方で…

直人さん:「ずーっと大変ですけど」
憂さん:「来て最初の2か月間はほんと死ぬかと思った」
直人さん:「僕なんか5,6キロ痩せました」
憂さん:「私も多少は、2か月くらいは痩せました」

山下さんは、子どもを育てる大人へのサポートも必要だと考えています。

直人さん:
「多少慣れはしたものの大変っちゃ大変なんで、ずっと。なんか逃げ方というか、気持ちの持って行き方を楽な方に持って行けるようになったので。いい意味で切り替えられたというか」
憂さん:
「ほかの大人に頼るとかね」
直人さん:
「そうそう、友達がいっぱいできたので。それこそ里親仲間でNPOとかもやっているんですけど」
憂さん:
「(こどもを)預かってもらったり一緒に遊んでもらったりして」
直人さん:
「夫婦2人だったら、もしかしたらもうちょっとしんどかったかもしれないけど、助けてくれる人が周りにたくさんいるので」

実際に里親としての苦労を体験した、山下さんたちLienのメンバー。

こども食堂では、里子に限らず子育ての悩みなどを聞く相談コーナーを設け、親をサポートする体制を整えています。

NPO法人Lien 兵頭さおり代表:
「親が楽しかったら子どもも楽しくなるし、でももちろん子どもが楽しんでる姿を見たら親も楽しいし、どっちも大切。別に血が繋がってなくても一緒に生活はできるよっていう思い。で実際できたよって。もっとみんな、そんなに大変なことじゃないよって、知ってもらえたらいいと思う」

国が推進する「家庭養護」 愛媛県内で2021年度の里親登録数は244組

里親制度など、何らかの事情で親と一緒に暮らせない子どもたちを社会的に養育する「社会的養護」。

その中には、児童養護施設などで暮らす「施設養護」と、里親などの「家庭」で育つ「家庭養護」があります。

このうち、国が進めているのが「家庭養護」です。

福祉総合支援センター 梶川直裕主任主事:
「より家庭的な環境で子どもの愛着形成を小さいときから図っていく、愛媛県としてもその方向で里親の登録数も増やしていこうと取り組んでいる」

「自然体を大切に」14人の子どもたちを受け入れてきたファミリーホームは

松山市内にあるファミリーホーム菅沢です。

川副叔子さん:
「特別にこれをしなきゃと気負ったことはない。それぞれ個性も違うし、ここへ来る過程もそれぞれ環境も違っている子供なので特別視はしない。本当に自然体で自然に受け入れるという形を一番は大切にしている」

「ファミリーホーム」では、養育里親として経験を積んだ人などが、家庭で最大6人の子どもを育てることができます。

県内には12のファミリーホームがあり、ここ、ファミリーホーム菅沢は12年前に、県内で最初のファミリーホームとして運営が始まりました。

川副さん夫妻は、現在、5歳から中学2年生までの5人の子どもを育て、これまでに14人の子どもたちを受け入れました。

ファミリーホームを始めた12年前。当時小学生だった子どもは今では独立。

中には、同じ境遇の子どもたちの助けになりたいと、児童福祉士の道を目指し進学した子もいます。

川副叔子さん:
「これはカーネーション。母の日に送ってくれたお花。(送ってくれたのは)一番最初にうちに来た子です。もう結婚しました。結婚して家庭を持っています」

「びっくりしたのとそれ以前に彼氏ができたといって、おじちゃんとおばちゃんに会わせたいと来たんですよ。お父さんもうドキドキでどんな顔して会ったらいいかって」

川副達也さん:
「最初こちらが固まってしまった。何の話したらいいか困りました」

里親として育てられるのは子どもが18歳になるまで。(措置延長で20歳まで可能)

独立していく子。また、子どもを育てられる環境になった親の元へと帰る子もいます。

叔子さん:
「やっぱり帰って来てくれると嬉しい。実家と思ってなんか行事があるたびに帰ってとても嬉しいです。それが一番の目標。家族みたいなものですからね。何が食べたいとか言ってくるから、好きなもの作ろうとかって」

2021年度の県内の里親登録数は244組。3年前に比べて100組増加しているほか、その増加率は全国の中でも高くなっています。

福祉総合支援センター 梶川直裕主任主事:
「決して敷居の高いところではないのでぜひ相談に来てもらえたら。電話の1本でもいいので寄せてもらいたい」

“子ども”も“大人”も幸せになるために…

叔子さん:
「助けてほしいと言ってもらえたら行政も動けるし、悲しい想いをしないで済むお子さんを救えるんじゃないかと思う。ファミリーホームとか里親とかいくらでも手助けできるところがあることを知ってもらいたい。子どもたちみんな幸せになってほしいです」

(2022年5月26日放送「NEWS CH.4」より)
※記事内のデータは、放送時点のものです。

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