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重度の「医療的ケア児」として県内初、地域の小学校へ “6年生最後の運動会”での挑戦

2024年11月8日 18:48
重度の「医療的ケア児」として県内初、地域の小学校へ “6年生最後の運動会”での挑戦

重度の「医療的ケア児」としては愛媛県内で初めて地域の小学校に入学した山本楓真(ふうま)くん。この春、6年生になりました。小学校生活最後の運動会、楓真くんの挑戦です。

松山市立味生小学校に通う山本楓真くん。この春、6年生になりました。楓真くんは、人工呼吸器など医療の補助がないと生きていくことができない「医療的ケア児」です。

2012年8月に生まれた楓真くん。脊髄性筋萎縮症と診断されたのは、生後5か月の時でした。その2か月後には人工呼吸器をつける手術。手術をすると声を失う…苦渋の決断でした。

母・山本皇世さん:
「悩みましたけど…命を優先するんだったら、楓真のために一番安全な方法を考えて。呼吸器が付いててもちゃんと楓真と会話もできるし、自分の意思表示もできるから、上の子と同じ学校に行かせてあげようと」

2019年4月。重度の医療的ケア児としては県内で初めて、地域の小学校に入学しました。楓真くん、視界いっぱいに広がる空を見ながらの登校です。

「脊髄性筋萎縮症」は全身の筋力が低下する難病で、楓真くんは立って歩くことができないだけでなく、声を出すこともできないため、意思表示は手の指と目の動きで行います。

イエスの時は質問した人と目を合わせたり、手の指を上にあげます。

先生:
「楓真さんどうする、一緒にいく?(指を上げる)あ一緒にいく!じゃあ一緒に行こか」

一方、嫌なことは…

先生:
「あははは、カエルは嫌みたい」

白目は断固拒否!の意思表示です。

6年生になった楓真くん。入学した時から身長は27センチ、体重は20キロ増え、すっかりお兄さんです。

この日は、6年2組の教室で友だちと一緒の授業へ。

友人たち:
「ヤッホー!楓真くん」
「楓真くんの手触ってみて、めっちゃあったかいよ」

鼻水や唾液の吸引、栄養補給などを行うため、入学当初から母親の皇世さんが学校に付き添っていましたが、現在は週3回、学校看護師が楓真君の校内活動をサポートしています。

自分の意思で動かす、新たな技術体験を

7月。この日は、楓真くんが授業などでも活用している「視線入力訓練アプリEyeMoT(アイモット)」について知ってもらおうとイベントを開きました。

EyeMoTは島根大学の伊藤史人助教らのチームが開発したアプリで、目の動きで文字を打ったり、ゲームをしたりすることができます。

それだけでなく、重度障害児がテクノロジーを活用することで、思いを“自分から発信する”また“自分の力を引き出す”ことが可能になります。

参加者:
「テクノロジーが発展することでできる事が増えると思うので、私たちも可能性が広がる」

このEyeMoTの視線入力機能と車いす電動化ユニットを連動させると…

伊藤助教:
「よし、じゃあちょっとふうまくん練習ね。右を見て」
「皇世さんがこれをオンにしたら動きますので。初はやっぱりお母さんがやった方が」

母・皇世さん:
「いくよー」
(車イスが動く)

母・皇世さん:
「おー!すごい!!目回るよ!」

視線で行きたい方向を見ると、自分の意思で移動することが可能に。

伊藤助教:
「生まれて初めて自分で動いて、動きに応じて刺激が体に来るので、本人にとったらものすごい脳の刺激になるはず。自分で動かしたという自己肯定感も高まるし、周りのフィードバックで自分が出来ているという思いも高まるので、いろんな面で成長が促される」

母・皇世さん:
「お!楽しかった!?目で『楽しかった』と教えてくれました」

担任の先生と運動会に向け猛特訓

そして今年2学期。車いすの電動ユニットを使って楓真くんが猛特訓していたのが。

担任 今井先生:
「先生がいるところが本番のゴールと同じ距離です。そこを目指して頑張りましょう」

「物を借りてくるのは代わりのお友達にお願いをしていて、その子が最後直線のところに 来てもらって最後ゴールする」

運動会の競技、借り物競争で車いすを操作し自らの力でゴールを目指すことに。距離は10m、指をあげてスイッチを押すと車いすが動くようにシステムを設定しました。

今井先生:
「はいOK!いいね~!速いやん!やるやん!やったでみたいな顔」
「今週は8時間体育がある。体育ばっかり」

運動会では他にも。

今井先生:
「これで旗振って盛り上げないといけないからね。よう見とき、友達の」

6年生総勢100人で踊る「ソーラン節」では楓真くん、旗を振って一緒に演技です。

今井先生:
「ちょっと練習してみよう!自分のタイミングで押したい長さで押して」
(ボタン押す楓真くん)
「OK!そうそう」

楓真くんが振る旗には、6年生みんなから集まった運動会への意気込みを書いたカラーテープを貼り付けます。

今井先生:
「これ僕が振るんだよ。僕が代表して振るんよ」

いよいよ小学校最後の運動会の日

運動会当日。

今井先生:
「なんで泣いとん?しんどいん?なんか嫌なことでもあったん?今から運動会ですよ」
母・皇世さん:
「え!泣きよるんですか?ちょっと早く起きたのはあるけど」
今井先生:
「久しぶりくらいの大号泣。涙の運動会はまだ早いで。最後やで涙は。いくよ!」

黄色チームの楓真くん。まずは、借り物競争。自分で車いすを操作してゴールを目指します。スタートの合図とともに順調に前進!スタートから30秒。楓真くんの代わりに、カードを引き“校長先生”を連れて来た友達も加わり…自分の力でゴールしました。

今井先生:
「お~やったよ本当!全部やったよ!」
「ばっちりです100点でした。一番良かったと思います」

母・皇世さん:
「去年は終わってから泣いていたので。悔し涙、去年のかけっこはすっごい大泣きしていたので」
Q.今回はやりきった?
「すっきり感は出ています」

そして小学校生活最後の運動会、ラストの競技。100人の6年生の先頭を切って楓真君がグランドの正面へ。

そして、ソーラン節がスタート。

しかし楓真君の旗が全然動きません…少し疲れたかな…?

でも…音楽がクライマックスに差しかかかったところで、皆の思いが詰まった旗を思いきり振ります。

今井先生:
「よっしゃ、ようやった!風がキレイにたなびいて目立っとった」

3時間の運動会、楓真くん、やり切りました。

今井先生:
「嬉しい?あ、嬉しいか!6年間最後に優勝したね」
「100点?(楓真くんNOの合図)違うん?それは明確に違うん?もうちょっと速く走れたなって思う?ほんと…その気持ちが持てて良かったわい、それが大事やけんね、一つの僕の大事な人生の思い出やけんね。よお頑張った」

楓真くん、卒業まで4か月です。

最終更新日:2024年11月8日 18:48
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