安保関連法成立でどうなる?政治部長が解説
安全保障関連法が19日未明、参議院本会議で与党と一部の野党などの賛成多数で可決・成立した。安全保障関連法の成立によって、自衛隊が活動可能な範囲が大きく変わる。日本テレビ政治部・伊佐治健部長が解説する。
【安全保障政策の大転換】
最大のポイントは、これまで歴代内閣が憲法に違反するため使えないとしてきた集団的自衛権が、限定的に行使できるようになったことだ。
これまで政府は平和憲法の下、自衛権は「必要最小限度」の範囲に限られるとして、集団的自衛権の行使は認められないと説明してきた。これに対し、今後は新しい3要件を満たす場合、「国家の存立、国民の生命が根底から覆される明白な危険」が迫っていて、「他に手段がない」時、「必要最小限」に限って集団的自衛権行使を認める。
また、自衛隊の活動範囲が地球規模で広がる。国会の承認があれば、国際平和のために活動している他国の軍隊の後方支援のため、自衛隊をいつでも海外に派遣できるようになる。これまでは、そのたびごとに特別法を作って対応してきたが、今後は必要なくなる。
【“戦争法案”か“戦争抑止法案”か】
「憲法違反」との批判をはじめ反対の声もある。憲法学者などから憲法違反との指摘が相次ぎ、反対論が一気に高まった。また、自衛隊の活動が世界規模で拡大するにもかかわらず、政府が「リスクは高まらない」と説明したこと、さらには、核兵器の運搬も法理論上は可能とされるなど政策判断で行える自衛隊の活動が多く歯止めがかかっていないと指摘されたことにより、批判が高まった。
安倍首相は、自衛隊が武力行使を目的として他国での戦争に参加するようなことはなく、平和主義はこれからも守り抜くと再三にわたって強調、「抑止力」強化によって日本が戦争に巻き込まれるリスクは減ると力説した。
政府が設けた「歯止め」には、武力行使の新3要件のほかに「国会承認」がある。ときの政府が誤った判断をしても、最終的には国会が判断するから「歯止め」がかかると政府は説明する。しかし、現行制度の下では政府と与党の判断に違いが出る可能性は低く、時の政権の性格に大きく左右されることは間違いない。
要するに、政権の信頼性が問われるわけだが、今回の国会中、報道機関への圧力発言や政府幹部の「法的安定性は関係ない」といった発言が相次ぎ、国民の信頼を大きく損ねた。こうしたことも災いして、衆参で200時間以上、審議をしたものの国民の理解が進まないままの成立となった。
【今後の政権運営への影響】
今回の安全保障関連法成立で、安倍首相の高い内閣支持率が大きく下がった。ポリティカルキャピタル、政治的資産をかなり失ったといわれる。安倍首相は、覚悟の上で高い内閣支持率を武器に戦う政権として農協改革などにも強気の政策を進めてきたが、今後は慎重なハンドルさばきが必要になってくる。
今後、来年夏の参院選に向けて、再びアベノミクスの継続、成長戦略の継続、地方創生などに力を入れ、国民の関心を安保から前向きな政策のイメージに引っ張っていきたいところだ。まずはロシア外交で、北方領土問題の解決への道筋をいかにつけるか。日中、日韓関係の改善も重要だ。
【安全保障政策の大転換】
最大のポイントは、これまで歴代内閣が憲法に違反するため使えないとしてきた集団的自衛権が、限定的に行使できるようになったことだ。
これまで政府は平和憲法の下、自衛権は「必要最小限度」の範囲に限られるとして、集団的自衛権の行使は認められないと説明してきた。これに対し、今後は新しい3要件を満たす場合、「国家の存立、国民の生命が根底から覆される明白な危険」が迫っていて、「他に手段がない」時、「必要最小限」に限って集団的自衛権行使を認める。
また、自衛隊の活動範囲が地球規模で広がる。国会の承認があれば、国際平和のために活動している他国の軍隊の後方支援のため、自衛隊をいつでも海外に派遣できるようになる。これまでは、そのたびごとに特別法を作って対応してきたが、今後は必要なくなる。
【“戦争法案”か“戦争抑止法案”か】
「憲法違反」との批判をはじめ反対の声もある。憲法学者などから憲法違反との指摘が相次ぎ、反対論が一気に高まった。また、自衛隊の活動が世界規模で拡大するにもかかわらず、政府が「リスクは高まらない」と説明したこと、さらには、核兵器の運搬も法理論上は可能とされるなど政策判断で行える自衛隊の活動が多く歯止めがかかっていないと指摘されたことにより、批判が高まった。
安倍首相は、自衛隊が武力行使を目的として他国での戦争に参加するようなことはなく、平和主義はこれからも守り抜くと再三にわたって強調、「抑止力」強化によって日本が戦争に巻き込まれるリスクは減ると力説した。
政府が設けた「歯止め」には、武力行使の新3要件のほかに「国会承認」がある。ときの政府が誤った判断をしても、最終的には国会が判断するから「歯止め」がかかると政府は説明する。しかし、現行制度の下では政府と与党の判断に違いが出る可能性は低く、時の政権の性格に大きく左右されることは間違いない。
要するに、政権の信頼性が問われるわけだが、今回の国会中、報道機関への圧力発言や政府幹部の「法的安定性は関係ない」といった発言が相次ぎ、国民の信頼を大きく損ねた。こうしたことも災いして、衆参で200時間以上、審議をしたものの国民の理解が進まないままの成立となった。
【今後の政権運営への影響】
今回の安全保障関連法成立で、安倍首相の高い内閣支持率が大きく下がった。ポリティカルキャピタル、政治的資産をかなり失ったといわれる。安倍首相は、覚悟の上で高い内閣支持率を武器に戦う政権として農協改革などにも強気の政策を進めてきたが、今後は慎重なハンドルさばきが必要になってくる。
今後、来年夏の参院選に向けて、再びアベノミクスの継続、成長戦略の継続、地方創生などに力を入れ、国民の関心を安保から前向きな政策のイメージに引っ張っていきたいところだ。まずはロシア外交で、北方領土問題の解決への道筋をいかにつけるか。日中、日韓関係の改善も重要だ。