異例“ミサイル落下前に発表”の理由とは?
ICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射実験に成功したと主張する北朝鮮。今回、日本政府はミサイルが落下する前に発射の事実を発表した。「発射から12分後に発表」した理由とは―
■「ミサイルが飛んでいる最中」に発表
4日のミサイル発射と発表、落下を時系列で整理すると以下のようになる。
・午前9時39分頃 北朝鮮がミサイル発射
・午前9時51分頃 防衛省がミサイル発射を発表
・午前10時20分頃 日本のEEZに落下
防衛省がミサイル発射の一報を出したのは、ミサイル発射から12分後。つまり、発表された時は、まだミサイルが飛んでいる最中だったことになる。北朝鮮が事前に発射を予告した場合を除き、落下前に、ミサイルが発射されたことを公表したのは、今回が初めてだった。
■「ミサイル発射」どのように覚知されているか
そもそも、日本はどのようにミサイルの発射を覚知しているのだろうか。実は宇宙空間では、アメリカ軍の早期警戒衛星が常時、ミサイル発射を警戒していて、この衛星が、発射の情報を最初にキャッチする。
その情報はすぐに日本政府にも伝えられ、その後、日本の海上自衛隊のイージス艦や、航空自衛隊の地上のレーダーが、ミサイルの追尾を行い、日本に向かうことはないか警戒に当たるという仕組みになっている。
■「分析よりも、早く公表」に方針転換
なぜ、今回、発表が早かったのだろうか。実は、政府関係者によると、春ごろから発表の仕方についてシステムの変更などをして見直すことを検討していたという。
例えば、4月5日にミサイルが発射された時に第一報として配布された防衛省の広報文では、発射された時間や場所、距離などが書かれている。一方、7月4日の広報文を見ると、発射されたということが記されているだけだ。
つまり、これまではどこから何時に発射されてどこに落下するかある程度分析したうえで公表していたのが、分析に時間を割くよりも、簡単でいいからなるべく早く公表しようという方針に変えたということなる。
■できるだけ早く国民に伝達を―
防衛省幹部は「北朝鮮がミサイル発射を強行する中で、国民の懸念に応えるためになるべく早く発表するという考え方になった」「自治体にも訓練をするよう働きかけており、大元の情報をどう発表するか取り組みを進める必要があった」と話している。
今回の結論は「1秒でも早く」。北朝鮮によるミサイルの脅威が現実になった際には、住民への早い伝達、迅速な避難が命を守る鍵となる。政府が、正確な情報を包み隠さず、できるだけ早く国民に伝えることは危機管理の基本であり、現在の取り組みをさらに進化させてほしい。