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“佐川長官辞任”の裏側 政治部長が解説

2018年3月9日 19:35
“佐川長官辞任”の裏側 政治部長が解説

森友学園の国有地売却問題をめぐり財務省の前理財局長、佐川国税庁長官が辞任の意向を固めた。日本テレビの小栗泉政治部長が解説。

■佐川国税庁長官はなぜ辞任?書き換えの事実はあった?

書き換えの事実があったかは、はっきりはしない。この書き換え疑惑は、実は2つの問題をはらんでいる。

<1>決裁文書を書き換え?

書き換えの事実があったのかどうか、さらには、書き換えたとしてその指示を当時理財局長だった佐川氏がしたのかどうか、まだ分からない。

一貫して言えることは、財務省は、書き換える前の文書がなかった、と言うことができなかった。それだけに、官邸関係者からは、「自分はあるだろうと思っているんだ。文書が大阪地検にあると言っているんだから、地検にしか分からないんだろうけど、ないわけはないだろう」という声が出ていた。

もし書き換えていたとすれば、専門家によると、悪質な場合、刑法の「公文書変造」の罪にあたり、懲役1年から10年の刑罰に問われる可能性もあるという。

それだけに、書き換えが事実だったり、それを佐川氏が指示していたとすれば、辞任にあたるというわけだ。

<2>「学園に価格提示を行う」交渉の事実は?

問題はこちら、書き換え前の文書には「学園に価格提示を行う」との文言があったと報じられているわけだが、事前に森友学園側と価格交渉をしたのかどうか。

今回削除された文書には「学園に価格提示を行う」といったものがあった、と報じられているわけだが、だとすれば、これまで佐川氏は森友学園に「価格を提示したこともない、先方からいくらといった希望もない」と国会で話していたが、それがウソだった可能性が出てくるわけだ。

佐川氏をめぐっては、「交渉記録は廃棄した」と言っていたのに、その後、交渉経緯を含む内部の検討文書を財務省が出すなど、その発言の信ぴょう性が疑われていた。それだけに、今回、事前の交渉があったということになれば、佐川氏の発言の信頼性がまた失われ、辞任に追い込まれたと言えるだろう。

■佐川氏が責任をとれば終わるのか

必ずしもそうとは言えない。実は、佐川氏をめぐっては2つの勢力があって、ある種、権力闘争のようなことになっていた。

1つは官邸内にあった勢力で、佐川氏を辞任させることで早期に国会を正常化して、麻生財務相、ひいては安倍首相に飛び火することを避けよう、という勢力。

もう1つは、財務省や麻生財務相周辺にあった勢力で、佐川氏は何としても守ろう、という勢力。というのも、ある財務省幹部は、「佐川さんが辞めれば麻生財務相も辞任になる。佐川さんを切っても当面の問題は全然解決しない」と話していて、麻生財務相を守るためにも佐川氏を辞めさせられない、と考えていた。

■麻生財務相が辞めるという可能性も?

その通りだ。麻生財務相は今月5日の国会で、「公文書の書き換えが事実であれば、ゆゆしき事態だ」と話していた。

ある麻生財務相周辺は、「真相が解明され、本当に財務省が文書を改ざんしていたら、麻生さんは地位に恋々としない」と話していたから、官邸の思惑通りに佐川氏の辞任で一件落着となるかどうかは、見通せない状況。

■曖昧なケースが相次いでいる

南スーダンの日報問題で、廃棄したとして情報公開請求に応じていなかった文書がのちに発見されたとして、稲田防衛相が辞任に追い込まれたのは記憶に新しいところ。

さらに最近では、裁量労働制のデータが不適切だったとして、働き方改革の法案から切り離すということもあった。

こうしたことが相次ぐのは、やはり政権のゆるみと言わざるを得ないし、なんと言っても政権に対する私たちの信頼をおとしめることになる。政権には、まずは、今回、書き換えがあったのかどうか。そして、そもそもの森友学園への土地売却の手続きに問題はなかったのか、真摯(しんし)に説明することが求められている。