×

乙武洋匡氏にきく“若者×選挙” 4

2019年7月19日 18:23
乙武洋匡氏にきく“若者×選挙” 4

この夏の参議院議員選挙を控え「the SOCIAL」では、「若者が投票に参加する意義について」乙武洋匡さんに話を聞いた。20~30代の投票率が低いことを受け若者は選挙に行くべきなのか?乙武洋匡さんに話を聞いた。


◇若い世代も選挙について考えていないわけでないが自ら行動起こせない…

Q:若い世代も選挙について考えていないわけではいが、どうしても選挙があっても自分から行けない、自分から行動を起こせない感覚があるのですが?

乙武氏:それは政治とか投票選挙に対してだけではなくなってきているのかなという気もして。僕自身も皆さんの世代の方とお話しさせていただく機会ってわりと多くある。例えばものすごくプライベートな部分で言うと、よく「この世代は草食系になった」とか言われますけど、人を好きになるという気持ちを失ったわけではない。それなりに素敵だなと思う相手を見つけたりする。でも、そこから先に踏み出すことをあまり積極的にはしないという印象はやっぱり僕も抱いていて。

有り体に言えば、傷つくのが怖いということもあるだろうし、変にアクションを起こしてうまくいかなくて、もともとの関係性が崩れてしまう、それによってまた周りに心配をかけたり迷惑をかけたり気まずい空気にさせてしまうのも申し訳ないとか、いろんな要因が絡まって、結局、自分が我慢する、自分からアクションを起こさないという傾向は結構あるなと思っていて。

それは、今は質問していただいたような政治に対しても、考えてないわけじゃないけど、そこまでアクションを起こさないとか、好きな人がいないわけではないんだけど、アクションを起こさないとか、プライベートで興味があることがないわけじゃないんだけど、とか。いろんなことに対して、「あと一押し」というのをしなくなってきてるのかなという印象はあるかもしれない。そういった若者のあり方を、どうしても私くらいの年代になってくると自分の世代との比較で見てしまうことが多いと思うんですよね。そうやって見てしまうと、「もっとそこをひと押ししてやってみればいいのに」とか、「そこで経験を積めるのに」とか、「たとえ失敗したり結果が出なくたって、次に頑張る時の糧になるのに」という思いがないわけじゃないんです。やっぱり正直な感想としてはあります。でも僕は自分たちの世代の頃の価値観を持ちだして、違う世代、若い世代の方々に、それを当てはめるということもあまりしたくない。

その世代にはその世代なりの、私たちの年代には感じられていない価値観だったり、将来に対する不安だったり、逆に希望だったり見えているのかもしれないし。そうやってあと一歩を踏み出さないことで何かを得ていることもあるのかもしれない。そう考えると、「絶対にこうしたほうがいいよ」なんていうアドバイスはできないのかなと思うんですね。

例えば、ものすごく極端な例でいえば、ここ数年、日本国内でもe-スポーツというものが盛り上がってきて、どんどんこれからマーケット的には大きくなっていく。賞金で億稼いでくるようなプレイヤーもゴロゴロ生まれてくるだろうと思うんです。

それこそ僕が子供の頃もそうですし、皆さんも子供が頃だって、いわゆる勉強する子がいい子で、ゲームというのは親からしたら害悪のように見なされていたかもしれない。「ゲームばっかりしないで勉強しなさい」と言われることはあっても、「勉強ばかりせずにゲームしなさい」なんて言われた子はあんまりいないと思うんですよね。でも今後「ゲームが得意なら億稼げる」という社会になってきたら、これからの親は言うかもしれない。「どうせ勉強は苦手なのだから、バリバリゲームやってもっと腕を磨きなさい」という親も出てくるかもしれない。それくらい時代によって価値観って変わってくるものですよね。


◇若者が選挙にいくため後押しになる取り組みとは?

Q:若者で選挙に行かなきゃいけないと思っていても、あと一歩が踏み出せない人はすごくたくさんいると思います。後押しするためにはどういう取り組みが考えられますか?

乙武氏:これは本当に、もういろんな人たちがいろいろな取り組みをしてきて。それでもやっぱり結果が出ない。つまり若い人たちの投票率が上がらない。ちょっと実証されてきちゃってるところがあると思うんですよね。

ならば、本当にもっと大きく仕組みをいじるとか。例えば、選挙に行かないと罰金とか、逆に選挙に行くと税金が控除されるとか。あとはもう、皆さんに直結するような政治課題が目の前に突きつけられたときですよね。

例えば「徴兵制をやります」と言い出したら、絶対に皆さん選挙行くと思うんですよ。それは完全に自分の生活が脅かされると感じるし、もしかしたら「いや、アリだ」と思う人も出てくるかもしれない。それは分からないですけども。

「行かないと大変なことになる」という危機意識は芽生えると思うんですよね。政策課題というものは、じわじわと長年かけて、皆さんの生活に影響していくもの。それに対して一発でアッパーカット食らうみたいな、その場でノックダウンするような影響を直ちに与える政策もある。

僕はどちらにせよ、皆さんの生活や人生に大きな影響を及ぼすと思っているんですけど、でも「長年かけてじわじわ」だと、そんなに気にならないから(選挙には)行かないということになってしまうのかなとは思います。