【解説】経済と財政どちらを優先? 総裁選 9候補の政策チェック
自民党の総裁選、投開票まであと10日となりました。「news every.」では、各候補の主張をテーマごとに整理してお伝えしていきます。17日は暮らしにも大きく関わる「経済・財政政策」についてです。政治部・与党キャップの前野全範記者が解説します。
鈴江奈々キャスター
「経済・財政政策についてみていきます。前野さん、9人の候補者はそれぞれどのような主張をしているのでしょうか?」
政治部 与党キャップ・前野全範記者
「経済・財政政策ですが、今回の9人の候補者の中で主張が比較的分かれているテーマです。まずは2人の候補者の主張をお聞きください」
高市経済安保相
「戦略的な財政出動をすることにより雇用と所得が増える。そしてまた消費マインド、これも改善していく」
河野デジタル相
「調子よく借金をしてどんどんお金を使ったからといって経済が果たして成長をするんだろうか。財政収支をどうするんだという、議論をしなければなりません」
前野キャップ
「高市さんは経済成長に結びつけるために、今後も国がどんどん積極的にお金を使っていくべきだという考えです。一方で河野さんは約1300兆円にものぼっている国の借金の返済・財政再建を進めていくべきという考えです」
鈴江キャスター
「高市経済安保相、河野デジタル相、2人の主張というのは両極端とも言えるように感じました。他の7人の候補者はどんな立ち位置なんでしょうか?」
前野キャップ
「高市さんに近い主張なのが小泉元環境相と小林前経済安保相です。2人はともに『経済が財政に優先するんだ』と述べていて、借金返済よりも経済対策でお金を使うことの方に力点を置く考えを強調しています」
「次いで茂木幹事長ですけれども、独自の『増税ゼロ政策』というものを打ち出していまして、経済成長で税収が増えた分でまかなうんだというような主張をしています」
「一方で、河野さん同様に財政再建についても重視していくべきだという姿勢を打ち出しているのは石破元幹事長です。そして中間的な立場にいるのが加藤元官房長官、林官房長官、上川外相の3人という構図です」
鈴江キャスター
「毎年、国の予算の多くを借金に頼っていて、今年度予算でも3割が借金と将来世代に負担を先送りしている状況ですが、候補者の中で若い40代の小泉さん、小林さんが積極財政という立ち位置なんですね」
前野キャップ
「経済政策に関しては、当面は次世代にツケを回す形の主張をしています。小泉さんと小林さんは、首相になったら物価高対策や経済対策を実施すると話していて、その場合、財源はどうするのか、バラマキにならないのかといった点も見ていく必要があると思います」
鈴江キャスター
「そうですね、財源は気になりますね」
鈴江キャスター
「中間的の立場の3人(加藤元官房長官、林官房長官、上川外相)はどんな主張なんでしょう?」
前野キャップ
「加藤さんは『国民所得倍増を打ち出す一方で財政健全化も重視する』、続いて林さんですが、『財政健全化を訴え続け、経済をよくするために必要な財政出動はためらわない』、上川さんは『令和の財政強靱(きょうじん)化に挑戦。財政運営と経済政策のバランスを取りながら、掛け算の発想で効果を最大化する』としています。要するにこの3人は、お金も使うけど同時に借金返済のことも忘れずに意識しますという両にらみの考え方です」
鈴江キャスター
「物価高で生活が苦しいと感じる人が多い中、やはり『増税』に触れている候補者はいないでしょうか?」
前野キャップ
「どの候補も当面は物価高対策を重視していて、増税には触れていません。ただ、国の借金が約1300兆円にも膨れ上がっている中、いずれ国民の『痛み』や『負担増』の議論も避けられない状況です。ただ、これまでの総裁選の論戦では、この点について真っ正面から答えている候補者はいないという状況です」
「総裁選直後に解散・総選挙というものも取り沙汰される中、選挙目当てのバラマキが行われないのか、将来への不安にも答えを出していく議論が求められると思います」