「掲示板ジャック」撲滅できる?──“品位を損なう”選挙ポスター禁止に 「露出」どこからアウト?…難しい線引き
選挙ポスターをめぐる問題が相次いだことを受け、品位を損なう選挙ポスターを禁止する法律が26日、可決・成立しました。専門家によると、ポスターの不正利用の禁止を明記したことに意義がある一方で、公序良俗に反するかどうかの線引きは難しそうです。
藤井貴彦キャスター
「問題となっている選挙ポスターについて26日、動きがありました」
「ポスターをめぐっては、去年の東京都知事選挙で猫などのポスターが枠の半分を占めたり、ほぼ裸の状態の女性の写真が掲載されたりしました。また候補者の枠を販売して選挙とは直接関係ないポスターが貼られるなど、いわゆる“掲示板ジャック”が相次ぎました」
「こうした事態を受け、品位を損なう選挙ポスターを禁止する法律が26日に国会で可決・成立しました。どのように変わっていくのでしょうか?」
小栗泉・日本テレビ解説委員長
「大きく4つの内容が明記されました」
「まず、候補者の氏名を見やすく記載することが義務づけられました。そして、他人や他の政党の名誉を傷つけることや良俗を害すること、商品の広告や営業の宣伝などを記載することをそれぞれ禁止しました」
「中でも、特定の商品の宣伝などをした場合、100万円以下の罰金を科す規定が設けられました。これらは6月に予定される東京都議会議員選挙や、この夏の参議院選挙に適用される見通しです」
藤井キャスター
「気になるところがいくつかあります。例えば、猫のポスターに『タマ』といった猫の名前を記載することはダメだということはわかりましたが、もし猫のポスターに『藤井貴彦』といった候補者の氏名を大きく記載した場合はどうなのでしょう?」
小栗委員長
「解釈はわかれるかもしれませんが、法律の文言だけを見ると、ダメというわけでもなさそうです」
藤井キャスター
「肌が露出するポスターがあったとして、どこまでの露出が良俗に反するのか。このラインをどこに置くのでしょうか?」
小栗委員長
「この基準は本当に難しいですよね。公職選挙法に詳しい日本大学の安野修右専任講師は『具体的な判断を誰がするのか、どういう基準で公序良俗に反するのかの判断は難しい。直接関係ないようなポスターがまた貼られることもなきにしもあらず』と指摘しています」
小栗委員長
「表現の自由もあり、どこまで細かく基準を決めるのかは非常に難しいですが、選挙問題に詳しい早稲田大学政治経済学術院の日野愛郎教授は『ポスターの不正利用は認められないんだということが法律でしっかり明記されたことは大きな意義がある』と話しています」
小栗委員長
「こうした法律の趣旨を踏まえて、それぞれの候補者がどんなポスターを出してくるのかという点も、私たち有権者にとっては投票先を選ぶ際の基準の1つになるかもしれませんね」
「選挙ではポスターだけでなく、SNS上の問題も発生していますね」
小栗委員長
「SNS上のデマ情報などについては、26日に自民党が提言案をまとめるなど、強い危機感が各党から示されています。また当選の意思のない候補者が他の候補者のことを応援する、いわゆる“2馬力選挙”についても対応を急ぐことにしています」
藤井キャスター
「選挙ポスターの問題をどう見ていますか?」
かしゆか(Perfume・『news zero』水曜パートナー)
「みんな、選挙や政治に期待したいのに肩透かしに遭っているような状態が続いたことが興味が薄れることにつながり、ポスターで何をやってもいいという意識を持った人たちが出てきてしまったのかなと思いました」
「今回法律でルールが決められたことで、逆に政治に興味がわくような魅力的なポスターが生まれるきっかけになったらいいなと思います」
(3月26日『news zero』より)