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資源高のなか「古紙」の悪質な持ち去り相次ぐ 自治体が対策を取るも被害は後を絶たず…

2022年6月21日 20:17
資源高のなか「古紙」の悪質な持ち去り相次ぐ 自治体が対策を取るも被害は後を絶たず…
回収される古紙

古新聞などの「古紙」が、自治体が回収する前に持ち去られる被害が多発しています。再生紙の原料として海外で古紙の価格が高騰したことによるもので、こうした事態に多くの自治体では条例で資源物の持ち去り行為を禁じ、悪質な違反者に対し、20万円以下の罰金や名前を公表するなどの対策を行っています。しかし、悪質な持ち去り業者による被害は後を絶ちません。その実態を取材しました。

■区のパトロールに同行 悪質持ち去りの実態

東京・墨田区では、古新聞などの「古紙」の持ち去り行為を防ぐため、週に6日パトロールを行っています。日本テレビは、その現場を同行取材しました。

職員が向かったのは、住民から持ち去りの目撃通報が多く入るエリア。そこには、区が回収する前に、古紙だけを持ち去ってく悪質な常習者がいるといいます。職員はパトロール中に、持ち去り常習者のものと思われるワゴン車を発見。そのナンバーから、これまで職員が何度も警告している、持ち去り常習者の車だと分かりました。しかしその車は、追跡に気付いたのか大通りに出た後、隣の区へ入っていきました。職員は、区を越えて追跡はできず、持ち去り常習者はそれを知っているといいます。

墨田区では「古紙」は区から委託された業者が回収。回収業者が古紙問屋に持ち込み、製紙会社でリサイクルされます。この代金が区に納められ、区民の生活を支える財源になります。そうした貴重な資産が、奪われているのです。

■悪質持ち去りが後を絶たない理由

墨田区によると、住民から持ち去りの目撃情報が入ったとしても、職員は持ち去り業者が持ち去る瞬間を現認しないと警告できないといいます。また条例では、資源物の所有権に言及していないため、古紙を持ち去ったとしても、窃盗罪で罪を問うことができないのです。さらに、持ち去り業者に対し、持ち去り行為を禁ずる条例はあるものの、持ち去り業者から古紙を買い取る買い取り業者に対しては、取り締まる条例はないというのです。

■組合による対策にも限界が…

古紙問屋の組合(関東製紙原料直納商工組合)では、古紙持ち去り行為撲滅に向けた対策を行っています。持ち去った古紙を買い取っている業者を特定し、業者にこうした行為を行わないように申し入れるため、自治体と協力して、GPS装置による追跡調査を実施。追跡調査により判明した、買い取りを繰り返す業者に対して、組合の除名処分を科すとともに業者名の公表を行っています。しかし組合によると、公表された業者は組合員ではなく、悪質な買い取り業者は業者名を公表された後も、繰り返し持ち去った古紙を買い取るケースが少なくないといいます。

こうした「古紙」は海外に輸出されているとみられています。日本の古紙は海外での需要が高く、国内での価格の1.6倍の値で取引されているといいます。東京都リサイクル事業協会の調査(2016年度)によると、東京都で古新聞などの古紙の3割以上が無断で持ち去られ、被害額は年間6億円に上っています。

ウクライナ情勢などの影響で今後も資源物の高騰が続くとみられるなか、悪質な持ち去りに対する有効な対策が求められています。

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