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2025年、注目の鉄道ニュースは? ドクターイエロー引退に“消える”鉄道会社も 「乗り鉄デスク」が紹介

2025年1月2日 10:00
2025年、注目の鉄道ニュースは? ドクターイエロー引退に“消える”鉄道会社も 「乗り鉄デスク」が紹介

北陸新幹線敦賀延伸などで沸いた2024年の鉄道界。2025年も新線開業など、トピックが目白押しです。一方で、おなじみの「鉄道会社」の名や「日本で一番の駅」が消える出来事も…。

「乗り鉄デスク」が注目の鉄道ニュースをご紹介します!
(社会部デスク・日テレ鉄道部 田頭祥)

■JR東海のドクターイエローは1月に検査運行終了 残る1本運行いつまで?

2023年6月に突如発表された東海道・山陽新幹線の検査専用車両・通称「ドクターイエロー」の引退。月に数度の走行しかなく、「幸せの黄色い新幹線」として、鉄道ファンのみならず、多くの人々に注目される存在でした。

2本の編成があるうち、JR東海が保有するT4編成は、2025年1月に検査走行を終了します(最終運行日は公表せず)。一方、JR西日本が所有するT5編成は2027年以降をメドに運行終了とされていて、東京~博多間での検査走行はまだ続きますが、黄色い新幹線とお別れする日は刻一刻と近づいています。

後継の検査専用車両は製造されず、営業車両のN700Sに検測機能を載せ、新幹線の安全を守ることになります。

■中央線快速グリーン車が本格始動へ “無料”「お試し期間」は3月14日まで

3月15日(土)には毎年恒例のJR各社のダイヤ改正が行われますが、JR東日本が導入を進めてきた中央線快速のグリーン車がいよいよサービス開始となります。グリーン車が連結されるのは、中央線快速の東京駅から山梨県の大月駅までと、中央線快速が直通する青梅線青梅駅までの間です。

従来の10両編成に2階建てグリーン車が2両増結されますが、これまでの導入路線とは違い、ホームや車両基地など多くの改良工事が必要で、2015年の計画発表から実現まで2度の延期を経て約10年かかりました。

また、東京駅における短時間での折り返しという難しい条件もあり、新製されたグリーン車は座席の自動回転機能や幅の広い乗降ドアを備えています。サービス開始前の2024年10月以降、グリーン車両の増結は順次進められていて、中央線快速でも頻繁に見られるようになりました。3月14日までは「お試し期間」としてグリーン券なしで利用できるとあって、利用者には人気の車両となっています。

そして3月15日からはSuicaグリーン券だと750円か1000円の料金が必要となりますが、新たにWi-Fiやトイレが利用できるようになります。中央線快速グリーン車導入に関する投資額は約860億円とされていますが、JR東日本は年間約80億円の増収効果を見込んでいます。さらにグリーン車の導入完了に伴い、中央線快速の駅のホームドア設置が進むことも期待されます。

このほかダイヤ改正では東海道・山陽新幹線「のぞみ」の自由席が3両から2両になり、3号車が指定席に変更されます(年末年始、GW、お盆期間は全車指定席)。自由席削減の傾向が続いています。

■大阪・関西万博の会場アクセス 地下鉄延伸開業、JRは新大阪直通列車も

やはり、明るい話題は鉄道の新路線の開業でしょう。2024年は北陸新幹線(金沢~敦賀間)など3路線が開業しましたが、2025年も2つの路線が開業します。

1つは1月19日開業の大阪メトロ中央線のコスモスクエア~夢洲(ゆめしま)間(3.2キロメートル)です。これは4月13日に開幕する大阪・関西万博会場へのメインのアクセスルートを担うもので、新たに開業する夢洲駅は会場直結の新駅となります。すでに、中央線には「宇宙船」をイメージした新型車両400系も投入されていて、万博の観客輸送を支えます。

一方、別の万博アクセスルートとして、JR西日本は新大阪と桜島を直通で結ぶ「エキスポライナー」を用意します(桜島駅から会場へはバスに乗り換え)。このルートには大阪環状線・桜島線で活躍する323系を改造した「JR WEST Parade Train」を投入。

一部の車両は車内の窓から上部にLEDパネルを取り付け、外の景色をリアルタイムに投影することでオープンカーに乗ったような開放感を演出するということです。

■高輪ゲートウェイ駅が本格稼働へ 広島駅は路面電車が駅直結に…ルートも大変革

駅と一体となった街づくりでも2025年は東西それぞれで大きな動きが控えています。

1つは、2020年に開業し、山手線30番目の新駅として話題となったJR東日本の高輪ゲートウェイ駅です。これまでも、駅自体は営業していたものの、駅前は建設中のビルや空き地が広がるのみで、駅の乗降客も少なく、閑散としていました。

しかし、3月27日に駅と直結したツインタワーが開業し、いよいよ「TAKANAWA GATEWAY CITY(高輪ゲートウェイシティ)」の街びらきとなります。商業施設「ニュウマン高輪」には最終的に約200のショップが入り、高級ホテルやコンベンション施設なども計画されています。

また、日本で初めて開業した新橋~横浜間の鉄道遺構「高輪築堤」が一部保存され、当時の鉄道をしのばせる空間として、どんな雰囲気となるか期待されます。

西日本エリアでは、JR西日本広島駅の新駅ビル「ミナモア」が3月24日に開業予定です。ここで注目したいのは、駅ビルの2階に「路面電車」が乗り入れることです(2025年夏頃予定)。広島は「路面電車の博物館」とも呼ばれ、路面電車の充実した街として知られますが、新幹線などのJR線と広島電鉄の路面電車との乗り換えが大変、便利になりそうです。

また、広島駅直結となるのにあわせ、紙屋町や八丁堀といった市街地中心部から距離を短縮した駅前大橋ルートを建設し、約4分の所要時間短縮が見込まれています。この駅前大橋ルート(広島駅~稲荷町~比治山下1.1キロメートル)の開業が、2025年に日本で開業する2つ目の新線ということになります。

一方で、新たな循環ルートにも組み込まれない、広島駅~猿猴橋町~的場町間は廃止となります。

ちなみに「ミナモア」屋上などの広場からは、駅前大橋ルートで広島駅に向かってくる路面電車や北側の新幹線などを一望でき、鉄道ファンにも楽しい空間になりそうです。

■注目車両のデビュー相次ぐ 伊予鉄道に「67年ぶり」新車 西武鉄道には期待の“移籍”車両が…

もう1つの明るい話題は、やはり新型車両のデビューでしょう。

2月、愛媛県のローカル私鉄「伊予鉄道」の郊外線に新型車両7000系がデビューします。“みかん王国”愛媛らしいオレンジ色のカラーリングに流線型のフォルムが特徴ですが、完全に新設計の新車の導入は、伊予鉄道にとって実に67年ぶりといいます。

地方の中小私鉄にとっては、コストのかかる新型車両の導入は難しく、大手私鉄やJRから中古車両を購入するのが一般的でしたが、伊予鉄道は環境省の国庫補助金も活用し、従来の車両より使用電力が半分という最新の性能の車両の導入に踏み切りました。

一方、西武鉄道にも「期待の車両」が2024年度末にデビューする予定です。国分寺線に導入される西武8000系ですが、実は小田急電鉄で1982年にデビューした8000形車両の譲渡を受け、改造したもの。西武鉄道は省エネルギーの車両への交代を加速するため、小田急電鉄や東急電鉄から省エネ性能の高い「VVVFインバーター制御」の中古車両を計100両導入する計画を2023年9月に発表していました。

大手私鉄同士で車両が移籍するという“異例の計画”は大きな注目を集めましたが、いよいよ営業開始を迎え、改めて話題となりそうです。なお、元東急の9000系を改造した車両は、秩父線や多摩湖線などで2025年度中のデビューが予定されています。

そのほか、京成線や東武アーバンパークライン、りんかい線でも新型通勤車両が登場する予定です。

■どうなる?整備新幹線 各地で“困難”な事態が…打開できるか

2024年3月の北陸新幹線敦賀延伸開業で、現在建設中の整備新幹線は北海道新幹線の新函館北斗~札幌間のみとなりました。しかし、トンネル工事中に巨岩が出現するなど、工事の遅れが伝えられています。目標としてきた2030年度末開業は困難とされましたが、新たな開業目標の時期を示せずにいます。

一方、北陸新幹線も敦賀への延伸で関西・中部方面と北陸との往来には、敦賀駅で在来線特急から新幹線に乗り換えが生じ、一日も早く大阪方面への全線開業を望む声が一段と高まっています。しかし、現在想定される小浜・京都ルートの建設費が従来想定の約2.1兆円から、物価上昇を見込むと最大5兆円前後となる試算が示され、工期についても最短でも20年程度とされました。

ルート上の京都では、地下水への影響を懸念する声も上がり、先が見えない状況となっています。年末に絞り込まれる予定だった京都市内の駅やルートの決定も見送られ、今年度中の着工は困難となりました。

石川県を中心に工費の低減や工期短縮が期待されるとして、敦賀から東海道新幹線の米原駅につなぐルートを再検討すべきという声も大きくなっており、大阪延伸をめぐっては簡単に先へと進めない状況は続きそうです。

一方、2022年9月に開業した西九州新幹線。長崎県や国などは九州新幹線に接続する「未整備区間」の整備に向け、佐賀県と議論していますが、大きな進展はなく、武雄温泉駅乗り換えの解消のメドは立っていません。

物価の高騰や今後の人口減少という問題に直面する中、新幹線整備をめぐる「混迷」が収まる見通しは立っていません。

■同じ日に姿を消す準大手私鉄「新京成電鉄」「泉北高速鉄道」

2025年は関東・関西で長年親しまれた2つの鉄道会社が親会社への経営統合に伴い、同じ日に姿を消します。

一つは千葉県を走る「新京成電鉄」です。新京成電鉄は京成津田沼と松戸間(26.5キロメートル)を結ぶ鉄道として、京成グループにありながら、親会社の京成電鉄とは独立した鉄道会社として80年近く運営されてきました。しかし、「経営の効率化・意思決定の迅速化を図ることで経営資源の最適かつ効率的な活用と競争力の強化を進める」(両社リリースより)として、4月1日付で新京成電鉄は京成電鉄に吸収合併され、新京成線は京成「松戸線」と名を改めます。ただ、独立した運賃体系は維持されるため、松戸線内と従来の京成線内の行き来には、京成津田沼駅を境に、それぞれの運賃を合算することになります。今後、デザインなども変更される予定とのことで、車両や駅名標などのデザインが京成仕様になるのか注目されます。

一方、関西では大阪府の泉北高速鉄道が4月1日付で南海電鉄に吸収合併されます。

「新京成電鉄」とともに「泉北高速鉄道」の名前も消えることになります。泉北高速鉄道線は、もともと大阪南部で開発を進めていた泉北ニュータウンと大阪都心部を結ぶ鉄道ルートとして1971年に開業。同時に南海高野線経由で、なんばへの乗り入れをスタートしました。

2014年には南海電鉄の子会社となり、現在の社名「泉北高速鉄道」になりましたが、こちらも4月1日に南海電鉄に統合されます。泉北高速鉄道線中百舌鳥~和泉中央間(14.3キロメートル)の路線名は南海「泉北線」に。

また、運賃については「初乗りの二重払いの解消などを検討」と発表されているため、運賃体系が統一され、多くの区間で値下げが期待されそうです。

いずれにしても、「新京成」「泉北高速」の社名は消えても、利用者の利便性が損なわれることにはなりません。ただ、長年両社になじんできた利用者やファンには「寂しい」気持ちはあるかと思います。

新京成、泉北高速など中規模の鉄道会社5社は大手私鉄に対して「準大手私鉄」と呼ばれることがありますが、4月以降は山陽電鉄、北大阪急行電鉄、神戸高速鉄道と関西の3社のみとなります。

■北海道 今年も消える駅…日本最東端の駅も3月14日に幕

赤字ローカル線をめぐる動きも、引き続き目の離せない一年となりそうです。2025年は鉄道廃線の予定はありませんが、2024年、自動車交通への転換方針が表明されたJR東日本の津軽線や久留里線の各末端区間は、具体的な動きを加速させていくことになりそうです。

一方、2024年、全国初の「再構築協議会」設置で注目されたJR芸備線。JR西日本管内で収支率ワーストの区間も抱えていて、一部区間の廃止も危惧されますが、協議会は2025年も継続される見通しで、議論の終着点は見えてきません。

ほかにも、鉄道事業者側が沿線自治体にローカル線の今後のあり方について協議を要請するケースも増えてきていて、人口減少で利用者が減少する中、廃線の方向性が打ち出される事例は今年も相次ぎそうです。

路線自体の廃止に至らなくても、利用者の少ない駅の廃止は行われます。JR北海道は根室線の「東滝川」「東根室」、宗谷線の「雄信内」「南幌延」「抜海」の5駅を3月15日のダイヤ改正を機に廃止します。東根室駅は「日本最東端の駅」として知られていましたが、終着の根室駅に、その座を譲ります。宗谷線の3駅は最北の鉄路の「秘境駅」として地元自治体が費用を負担して維持されていましたが、負担の継続を断念し、廃止となります。

もともと、地元住民の利用は極めて少なく、「秘境駅」として鉄道ファンなどに愛される存在であっても、“観光資源”としての維持は難しいという現実が見えてきます。

最終更新日:2025年1月2日 10:00