2024年 注目の鉄道ニュースは? 新幹線開業に新型新幹線・特急車両のデビューも
東急・相鉄新横浜線や宇都宮の「ライトライン」新規開業。そして東武「スペーシアX」のデビューなどで沸いた2023年の鉄道界。実は2024年も北陸新幹線延伸開業などトピックが目白押しです。「乗り鉄デスク」が注目の鉄道ニュースをご紹介します!
(社会部デスク 田頭祥(日テレ鉄道部))
■目玉は北陸新幹線敦賀開業 東京~福井初の2時間台へ
2024年、最大のプロジェクトと言えば、間違いなく3月16日北陸新幹線の金沢~敦賀間(約125キロ)延伸開業と言えると思います。
「半世紀の悲願」という福井県に初めて新幹線が開業し、東京~福井は乗り換えなしの移動が可能となります。最速タイプの「かがやき」は3時間以内に結び、現在より約30分の短縮になります。延伸区間の金沢以西には6駅(石川県内:小松・加賀温泉 福井県内:芦原温泉・福井・越前たけふ・敦賀)が設けられ、終点は敦賀となります。
ちなみに少々、マニアックなお話をしますと、東京都内と福井の間で直通列車が走るのは2001年に区間廃止となった夜行急行「能登」(上野~福井)以来、23年ぶりのこと。ただ今回は定期列車だけで「かがやき」9往復、「はくたか」5往復が直通しますので、利便性の次元は当時と全く異なります。
東京と新幹線で直結することで福井は「人を呼び込む100年に1度のチャンス」と意気込んでいます。その一方で、北陸と関西方面を結んでいた特急「サンダーバード」、そして中京方面を結んでいた特急「しらさぎ」はそれぞれ敦賀駅止まりとなり、福井・金沢方面との行き来には北陸新幹線「つるぎ」との乗り換えを余儀なくされます。さらに値上げも加わり、関西・中京地区と北陸の間が「近くて遠く」なることが心配されています。
1日も早く乗り換えが解消されるよう、国が2046年と想定する大阪方面への北陸新幹線全線開業が期待されるところですが、現在想定される小浜・京都ルートにはルート上の住民などから反対の声もあがり、先が見えない状況となっています。着工に至るプロセスに進展があるのか、引き続き注目です。
2022年9月の西九州新幹線に続く今回の北陸新幹線開業で、建設中の整備新幹線は北海道新幹線の新函館北斗~札幌間のみとなります。ただ工事の遅れが伝えられていて、目標としてきた2030年度末開業の実現は不透明な状況です。
■開業54年で初の“延伸” 北大阪急行 箕面市へ
2024年、もう1つの新路線は大阪府に誕生します。
1970年に開業し、その年の大阪万博輸送にも貢献した北大阪急行線が3月23日延伸開業します。開業するのは千里中央~箕面萱野間2.5キロ。途中に箕面船場阪大前駅が設けられます。沿線には大阪大学のキャンパスが移転してきたほか、住宅や商業施設の開発も進んでいて、大阪メトロ御堂筋線を介して梅田やなんばに直結することで、箕面エリアの利便性が高まります。
■山形新幹線「つばさ」に最高速度300km/hの新車両「E8系」導入
もう1つの明るい話題は、やはり新型車両のデビューです。JR東日本の山形新幹線「つばさ」に新車両E8系が3月16日ダイヤ改正で導入されることです。最高速度が従来のE3系の275km/hから300km/hに向上することで東京~山形間は最大4分短縮されます。
「つばさ」と福島以南で併結する東北新幹線車両もE2系からE5系に変更され、今後増備されるE8系の300km/h運転を支えます。東北新幹線では1997年に秋田新幹線「こまち」の併結相手としてデビューしたE2系も終焉の時が迫りつつあるようです。
■こだわりのデザイン新型「やくも」デビュー さよなら「最後の国鉄型特急」
一方、JR西日本は岡山と出雲市(島根県)を結ぶ特急「やくも」に4月6日から新型車両273系を順次投入します。ブロンズカラーをまとった新車両、車内外のデザインは、JR西日本「ウエストエクスプレス銀河」やえちごトキめき鉄道の観光列車「雪月花」などを手掛けたデザイナー川西康之さんによるものです。
通常の普通車座席、グリーン車座席に加え、家族連れやグループに喜ばれそうなボックスシート(名称:セミコンパートメント)も設置。このシートには空間をフルフラットにして足を伸ばしながら移動できる仕掛けもあり人気が出そうです。
そしてこの新型車両に代わって引退していく車両もあります。旧国鉄時代から走り続けた381系車両です。全国でも国鉄型特急が定期列車として走るのはここだけとなりました。273系への交代を控え、懐かしい国鉄特急色やスーパーやくも色など3種類のリバイバルカラーも登場したことで、鉄道ファンは大いに盛り上がっています。リバイバルカラーは6月末までに順次引退する一方で、現行カラーの完全引退時期は未定とされますが、予断は許さない状況と言えるでしょう。
■宇都宮LRT 今春快速運転開始予定 期待される「進化」
2023年8月、次世代型路面電車LRTとして栃木県の宇都宮市と芳賀町の間で開業した「ライトライン」。路面電車の新規開業は国内で75年ぶり、また全国初の全線新設LRT開業ということで注目を集めました。開業から4か月が過ぎましたが、当初の予想を上回る好調な利用状況が続いていて、運営する「宇都宮ライトレール」によると12月も平日は約13000人(ほぼ予測通り)、休日は約11000人(予測の約2.5倍)の利用があるということです。
2024年春にも予定されるダイヤ改正では運行本数の増加や快速列車の運行が検討されています。また当初計画よりもゆとりをもたせ、開業時全線48分(各駅停車)とした所要時間の短縮も期待されます。とりわけ路面電車の快速運転は珍しく、どんなダイヤになるのか、注目されます。
さらなる乗客の増加につなげられれば、繁華街や官公庁のある宇都宮駅西側への延伸機運も高まりそうです。
■101歳のSL「ハチロク」 惜しまれつつ引退へ
1922年(大正11年)に製造され、現在日本で運行するSLの中で最も古い車体といわれるJR九州のSL8620形蒸気機関車「58654号機」。「ハチロク」の愛称で親しまれました。
一度引退するも1988年に復活し、2005年まで「SLあそBOY」として熊本から阿蘇地方へ豊肥本線を、2009年からは「SL人吉」として熊本から人吉へ肥薩線を走ってきました。肥薩線が2020年に球磨川の豪雨災害で被災した後は、鹿児島本線(鳥栖~熊本)で活躍しています。
しかし老朽化に加え、部品の調達が難しくなっているため、2024年3月でいよいよ運行終了となります。
101歳のSLが走る雄姿はまもなく見納めとなります。
■JRの特急消えゆく「自由席」 指定席予約の“改善”急務では?
いま全国的な傾向となっているのは、JR各社が新幹線・特急の自由席を廃止し全車指定席とする動きです。すでにこの年末年始から東海道・山陽新幹線「のぞみ」の全車指定席化がスタートしました。今後も年末年始だけでなく、ゴールデンウイークやお盆期間も全車指定席になります。また3月16日のダイヤ改正からはJR北海道の特急「北斗」「すずらん」「おおぞら」「とかち」、JR東日本の房総方面への特急、そしてJR西日本の「サンダーバード」「しらさぎ」「スーパーはくと」「スーパーいなば」「やくも」など1年を通じて自由席が消え、全車指定席となります。これで首都圏ではJR東日本の在来線特急から自由席が全て消えることになります。
自由席よりも指定席の料金の方が高くなるケースがほとんどですが、JR各社はネットで購入できる割引の拡充などで「負担感」を抑えようとしています。しかし高齢者などネット購入に不慣れな方にとっては負担増となりそうです。
JR各社は「乗車前に長い時間並ぶ必要がなくなる」「始発駅に近い方が座れるといった不公平感の解消」など理由にあげますが、車内でのきっぷのチェックなどの効率化を図る狙いもあると考えられます。ところが指定席化を進める一方で、指定席を販売するみどりの窓口を急速に減らしている状況もあります。各社はインターネット購入や指定席券売機の利用を呼びかけますが、利用者目線でいうと一部の予約サイトの使い勝手は必ずしも良いものではなく、改善は急務と言えます。
■消える「かつての大動脈」 根室本線 約120年の歴史に幕
赤字ローカル線をめぐる問題は2024年も大きな課題の1つです。
利用者の減少で2024年廃線を迎える鉄路があります。JR北海道は根室本線富良野~新得間81.7キロの営業を3月31日をもって終了します。といっても、このうち東鹿越~新得間は2016年の台風10号で被災し、バスによる代行輸送が7年以上続いてきた区間ですでに列車の運行は途絶えています。
廃止区間は1981年に短絡ルートとなる石勝線が開通するまでは、札幌と道東方面を結ぶ幹線ルートでまさに「大動脈」でした。特急や急行、貨物列車なども行き来し、途中の交換駅はかつての長い編成に対応するように造られていますが、いまは基本1両のみのディーゼルカーが1日5往復行き交うのみに(下り1本は回送)。時の流れを強く感じざるをえません。
ちなみに廃止区間の途中にある布部(ぬのべ)駅はテレビドラマ「北の国から」、幾寅(いくとら)駅は高倉健さん主演の映画「鉄道員」の舞台でもありました。
■「芸備線」全国初の再構築協議会 議論の行方は…
一方で、廃線危機を迎えている鉄路の行方も気になります。岡山県と広島県を結ぶJR芸備線は、一部区間(東城~備後落合)で100円の収入に対して1万5000円以上の経費がかかるとされ、JR西日本管内でワーストの0.6%という収支率です(2022年度までの3年間 JR西日本公表)。JR西日本はこの区間を含む備後庄原~備中神代間68.5キロについて、今後のあり方を地元と協議したい意向を2023年に示していました。そして2023年に施行された「改正地域公共交通活性化再生法」のもとで、事業者のJR西日本と沿線の地元自治体が参加し、政府が調整する形となる「再構築協議会」が全国の先陣を切って設置される見通しとなりました。
鉄道として維持できないとなればバスなどへの転換というのが、これまでの「定石」でしたが、ドライバー不足のいまは簡単なことではありません。自治体の財政負担の問題も絡み、議論の行方が注目されます。