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【イチから解説】北陸新幹線福井へ でも関西が遠くなる?

2023年12月16日 13:42
【イチから解説】北陸新幹線福井へ でも関西が遠くなる?

鉄道ファンでもある日本テレビ報道局社会部の田頭祥デスクが解説するのは「北陸新幹線福井へ でも関西が遠くなる?」。

■東京~福井 新幹線直結で約30分短縮 恐竜…カニ…福井の楽しみ方は?

いよいよ3か月後に迫りました。現在金沢までつながっている北陸新幹線がいよいよ福井県まで延伸されます。

福井の見どころをご紹介しますと世界3大恐竜博物館の1つ、福井県立恐竜博物館は迫力ある骨格標本などで大人気です。また断崖絶壁の東尋坊は雄大な景色が楽しめ、さらに永平寺といった歴史を感じるスポットもあります。

また越前ガニなど海の幸も充実してますので、グルメ派にも楽しみですね。

福井に東京から鉄道で行く場合、これまでは東海道新幹線で米原まで行って在来線、もしくは北陸新幹線で金沢で在来線に乗り継ぐのが一般的なルートでした。

これが東京駅から北陸新幹線1本で福井へ行けるようになります。最速で2時間51分ですので現在より30分ほど早くなります。

さらに北陸新幹線は福井を越えて、敦賀が終点となります。

■「100年に一度のチャンス」新幹線効果に期待の福井

今年9月から実際の新幹線の車両を使った走行試験が始まりましたが、沿線各地、地元の人々の大変な歓迎が見られます。福井県も新幹線開業は人を呼び込む「100年に一度のチャンス」と期待を寄せていて開業に向けての熱気はますます高まりそうです。

福井の駅前は恐竜のモニュメントが増やされ、高級ホテルやタワーマンションの建設など再開発も進んでいます。

ちなみに2015年新幹線開業となった金沢は観光客が1.2倍になったというデータもあります。ですから福井も、これに続きたいと意気込んでいるわけです。

■新幹線で東京が近づく一方で関西が遠くなる?そのワケは…

しかし東京がぐっと近づく一方で、「関西が遠くなるのでは…」という懸念の声が出ています。

「新幹線」ができるのに「遠くなる」。どういうことなのでしょうか。

現在、大阪や名古屋方面から福井を通って金沢までは在来線の特急が走っています。

実は北陸地方というのは元々関東よりも、関西との結びつきが強くて、関西と北陸の間は大変多くの利用者がいます。

しかしながら、来年3月からは新幹線が敦賀まで伸びることによって大阪・名古屋方面からの特急は全て敦賀止まりになってしまいます。例えば大阪から福井や金沢に行こうとすると途中の敦賀で乗り換えを余儀なくされるわけです。

■直通特急消え途中で「乗り換え」…時短わずか「3分」の区間も

もちろん、乗り換えの手間があっても移動時間が短くなればいいのですが、実際どうなるのでしょうか。12月15日に発表されたダイヤを見ていきましょう。

大阪からの所要時間は富山までは最短2時間35分と29分の短縮。

金沢までは最短2時間9分と22分短縮されます。ただ、福井までだと最短1時間44分と短縮はわずか3分となります。

「3分の短縮のために乗り換え」ではかえって不便と感じる方も多いと思います。なぜこういうことになるのでしょうか。

■新幹線開業で価格アップも所要時間ほぼ変わらず…ナゼ?

当然のことですが、在来線から新幹線に変わる距離の長さで時短の効果は変わります。

敦賀と福井の間はわずか49キロ。いま特急でも29分の距離。新幹線が16分で結ぶことになりますが時短効果はわずかとなります。

そして、もう1つのポイントは乗り換えの拠点となる「敦賀駅」にあります。

特急の到着から乗り継ぎの新幹線の出発まで(その逆の乗り継ぎも)最低8分の余裕をとっています。中にはダイヤの都合で10分以上空く接続もあります。

これも新幹線の時短効果を薄めてしまう原因です。

さらに値段も上がります。

普通車指定席は大阪~福井で6140円が7290円に。大阪~金沢で7790円が9410円に。金沢も22分という短縮時間の割には値段が高くなるという声も聞かれます。

乗り換えが加わり、値段も上がるとなると、関西と北陸の心理的距離が”遠く”なると心配されているわけです。

■接続3分「日本一短い新幹線」の方が便利?敦賀駅「8分」かかるワケ

去年9月、長崎県と佐賀県の間で開業した西九州新幹線も福岡の博多へ行くには乗り換えが必要です。

その乗り換え駅となる武雄温泉駅は新幹線と在来線特急が同じホームに発着し、ホームの反対側の列車に乗ればいいように作られ3分で接続します。

一方、北陸新幹線の敦賀駅は周囲の地形の関係で新幹線ホームは地上から高さ21メートルに設けられました。一方、在来線特急のホームは地上に作られたのでエスカレーターやエレベーターもあるとはいえ上下移動せざるを得ません。また途中に改札も設けられ切符を通す必要もあります。

実際、報道公開された駅の取材で乗り換えを体験し計ってみたら、3分26秒かかったそうです。新幹線列車の端から在来線列車の端まで移動するケースもあり余裕をみて最低8分の乗り継ぎ時間となりました。

■乗り換えいつ解消?大阪~北陸直通新幹線ルートにいま暗雲が…

それでは敦賀駅の乗り換えが解消される日は来るのでしょうか。実はその見通しは立っていません。

北陸新幹線は敦賀から先、新大阪まで延伸され全線開通することは決まっています。開通予定は2046年とされています。この延伸が実現すれば、再び関西と北陸は新幹線一本でつながるわけですが実はいま、この計画に暗雲が広がっています。

7年前に決まったルートは、敦賀から先福井県の小浜市を通って、京都市に向かい、新大阪を目指しています。いま、そのルートの途中で計画撤回を求める住民の動きが起きているんです。

1つは南丹市美山町。このエリアには江戸時代に建てられた住居が今も残り日本の原風景が広がる国の重要伝統的建造物群保存地区もあるんです。

この美山町など京都府内を長いトンネルで通過する想定ですが膨大な工事車両が通過することや工事で出た残土の処理に不安の声が上がっています。

さらに京都市内は地下トンネルで抜ける予定だが地下水が寸断されるのではと懸念の声がでている。

また京都は古都ですからこれまでもトンネル工事で埋蔵文化財が出てくるケースがありました。工事が遅れることを懸念する声も強くあります。

さらに京都を過ぎて、新大阪の地下駅が終点となりますが、ここも大きく開発されている場所で、難工事が予想されています。

当初は、今年度工事開始だったが前提となる環境アセスが終わらずいまその時期は見えない状況です。

■再浮上「米原ルート」

大阪への延伸時期が見えない状況で、石川県内の自治体の長からはこんな声も飛び出しました。

石川・加賀市 宮元陸市長
「米原ルートでぜひお願いします」(今年10月1日 新幹線歓迎イベントでの発言)

この「米原ルート」。敦賀と東海道新幹線の駅がある米原の間はわずか50キロほどでさらに地形的にもトンネルは少なく小浜・京都ルートより、工期が短く建設費も安いと考えられています。

小浜・京都ルートは2016年当時の試算で2兆700億円かかるとされました。一方、米原ルートは、5900億円とされ、工期も10年程度とされました。

■「安上がり」米原ルートにも難題 結局乗り換え解消ならず?

ただこの米原ルート、米原から先に問題があるのです。

大阪へは米原から東海道新幹線に直通と思いきや同じ新幹線とはいえ、直通は簡単ではありません。

まず北陸新幹線と東海道・山陽新幹線は使用している運行システムなどが違い直通が困難と言われます。

さらに、そもそも東海道新幹線は現在でも最短3分おきで列車が走る過密路線。北陸新幹線への直通列車を受け入れる余裕がありません。もしリニア中央新幹線が品川と新大阪の間で開通すれば東海道新幹線にも余裕が生まれるかもしれませんがリニアも開通の見通しが立たない状況です。

さらに北陸新幹線の運行はJR西日本、東海道新幹線はJR東海。JR西日本からすると、大阪から北陸方面への列車を自由に走らせられない状況になります。

つまり、結局米原で新幹線から新幹線へ乗り換えが残る形になるわけですね。

またすでに決定したルートに駅ができる予定の福井県小浜市の反発は避けられません。

■求められる早期の乗り換え解消 実現性高いルート選定は

新幹線は国の事業です。ルートや優先順位は、その時々の与党の政治家が決めています。敦賀で乗り換えが必要になることは前からわかっていたことです。

鉄道はネットワークがあってこそ効果を発揮するものですから一日も早く乗り換えを解消する手立てを考えて欲しいと思います。