米ファンド、フジ日枝氏の辞任要求「なぜ1人の独裁者が40年近く支配することが許されてきたのか」【#みんなのギモン】
今回の#みんなのギモンは「米ファンドがなぜ日枝氏辞任要求?」をテーマに、日本テレビ・石川真史経済部長が解説します。
まず、フジ・メディア・ホールディングス対して3日付で送った書簡を見ていきます。
──書簡の内容
「何よりも重要なことは、日枝久氏が辞任すること。取締役会に対して絶対的に支配し、影響力を保持している。なぜ1人の独裁者が巨大な放送グループを40年近くも支配することが許されてきたのか、信じがたいことだ」
フジ・メディア・ホールディングスの取締役相談役である日枝氏のことを「独裁者」であると表現し、辞任を求めています。また、取締役会の過半数を独立した社外取締役で構成することも求めています。
書簡を送ったアメリカの投資ファンド「ダルトン・インベストメンツ」は、アジアへの長期投資に特化した投資運用会社で、株式の世界では「アクティビスト(=物言う株主)」と言われています。投資先の企業の企業価値を向上させるために、経営陣に積極的に提言する投資家のことです。簡単に言うと、1万円の株の価値が上がり2万円になると差額が儲けになる。
──経営者である斎藤さんは、このあたりのことは詳しいでしょうか。
斎藤佑樹キャスター
「経営者仲間と話すことがありますが、出資や投資をするときに事業について考えることはもちろんですが、どういう人が経営陣としているのか、ということもすごく大事だと。株主からすると、今回についても取締役の方たちがどう刷新されるかは大事なポイントなのだと思います」
──アクティビストは、“物言う”だけで決定権はないのでしょうか?
それは、株を何%保有しているかで経営への影響力が変わってきます。議決権のある株を半数以上持っていれば、取締役の選任や解任をすることができますが、このファンドが保有している株は関連会社と合わせて7%以上です。こうした場合、他の株主に自分たちの提案に賛成するよう呼びかけることで圧力をかけ、企業側に言うことを聞かせたといったケースもありました。
──こういった書簡を送ったのは、どういった意図があるのでしょうか。
書簡は、スポンサーや視聴者など皆が見るため、企業側がどう対応するかというのも直接見られることになります。ダルトンが書簡を送ったのは今回で3度目でした。
1度目は、「企業ガバナンスに深刻な欠陥がある」と厳しく指摘したもの。2度目の書簡は、オープンな会見を開くことを求めたものでした。そして今回の3度目の書簡では、信頼を回復するには日枝氏が辞任する必要があると主張しています。
では、日枝氏についてみていきます。
まず組織図を見ると、フジサンケイグループという巨大なグループの中にフジ・メディア・ホールディングスや産経新聞社などがあります。フジテレビは、フジ・メディア・ホールディングスの子会社です。
日枝氏は現在、フジサンケイグループの代表、フジ・メディア・ホールディングスの取締役相談役、フジテレビの取締役相談役、産経新聞社の取締役相談役となっています。
こうした中、どう改革していくのか注目されています。
同じグループの中で多くの役職に就いていることについて、企業の危機管理に詳しい桜美林大学の西山准教授によりますと、いろいろなところに名前があるのは「不適切とは言えないが、あまり聞いたことがない」そうです。「取締役相談役」という、「取締役」と経営の一線を退いたときの役職の「相談役」がくっついている肩書、これも一般的ではないけれど、なくはないそうです。ただ一方で、異例なのはそのポジションを長い期間キープし続けているという点だといいます。
現在87歳の日枝氏は1988年にフジテレビの代表取締役社長に就任しました。その後、会長、相談役を歴任し、現在まで36年以上経営に関与し続けています。西山准教授は創業者でもない人がこれだけ長い期間支配しているのは異例だし、代替わりしていくのが普通だと話していました。
長らく経営の中心にいて、経験・人脈も豊富、こういった人物に物申すのは難しい環境にあったのではないかと思われます。
フジテレビは企業としてどうしていくのか。清水賢治社長は先月30日、次のように話していました。
清水社長
「(社外取締役は)経営陣の刷新といいますか、人事の透明さと説明責任を求めていらっしゃると思いますが、この範囲については、全役員が対象だと考えている」
──Q:日枝さんも含めて?
清水社長
「全取締役というふうに思っています」
フジテレビなどは今回の一連の問題について、第三者委員会を設置して調査にあたることにしていますが、ダルトンの書簡では、「調査結果を待つことなく、スポンサーの離脱による損失が拡大する前に、打つべき手を打たなければいけない」と述べています。「企業価値のさらなる損失は大株主として許容できない」とも指摘しています。
社外取締役で構成される、経営刷新に向けた委員会は、新しい体制をどのように作るか、人事の透明性をどのように確保するかなどといった議案を4日、とりまとめる方針です。
(2025年2月4日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)
【みんなのギモン】
身の回りの「怒り」や「ギモン」「不正」や「不祥事」。寄せられた情報などをもとに、日本テレビ報道局が「みんなのギモン」に応えるべく調査・取材してお伝えします。(日テレ調査報道プロジェクト)