【挑戦】イノシシ革の野球グローブの使い心地は ドイツで活躍した元プロ野球選手が開発 福岡
こちらの野球のグローブは、2024年11月に販売がスタートしました。主流とされる牛の革で作られたものではなく、イノシシの革で作られています。開発したのは、福岡市在住でドイツで活躍した元プロ野球選手です。
表面はざらざらとして立体感があります。オーダーに合わせ、一つ一つ職人が手作りするグローブは、すべてイノシシの革からできています。このグローブを開発したのは、福岡市に住む片山和総(かずさ)さん(31)です。
■イノシシ革のグローブ開発・片山和総さん(31)
「触ってもらうとグリップ力・滑りにくさがあると思います。」
片山さんは小学3年からソフトボールを始め、中学から大学まで10年間、野球に打ち込みました。大学卒業後も、社会人野球でプレーするなど、野球を仕事にしたいと考えていました。
■片山さん
「野球をやりたいと思った時に、国内で続けるのはハードルが高い。その中の選択肢でドイツになった。」
2016年に知人のつてを頼って単身ドイツに渡り、2022年にユニフォームを脱ぐまで、ドイツのトップリーグ「ブンデスリーガ」でプロ野球選手として活躍しました。
そんな片山さんが現役引退後に着目したのが、イノシシの革を利用した野球のグローブの開発です。
■片山さん
「害獣として駆除された動物の皮が捨てられていることを知って、単純にもったいないと思った。 使い道がないから捨てられているのかなと思って。」
イノシシによる農作物の被害は深刻で、2022年度は全国で36億円あまりでした。駆除されたイノシシの皮が廃棄されている現状をニュースやSNSで知り、有効活用できるのではないかと考えたのです。
■片山さん
「海外に目を向けると、南米やヨーロッパでは高級な素材として扱われているんです。高級革手袋のような素材で扱われていて。社会のイノシシに対する目を変えられたら、価値を生むことができるんじゃないかなと。」
ただ、なめし加工を施したイノシシの革の仕入れ先などを確保するのには、苦労がありました。片山さんの思いに共感しグローブの製作を引き受けてくれた奈良県の工場には、何度も足を運び、3年かけて完成にこぎつけました。開発コストはかかっていますが、価格は6万6000円と、一般的な牛の革のグローブと同じ程度に抑えています。
野球歴15年の石田旭昇アナウンサーが使い心地を体験しました。
■石田旭昇アナウンサー
「表面がざらざらしていてグリップ力があって、ボールが収まりやすいですね。何より軽い。楽にさばけます。」
イノシシの革は牛の革と比べて軽く、それでいて丈夫だといいます。また、毛穴が大きくて多いことから、通気性が保たれ、手がグローブの中で蒸れにくくなっています。グローブの捕球面には、イノシシの革特有のざらざら感があり、ボールが落ちにくくなっています。
■片山さん
「SDGsの観点で、駆除された物の再利用は社会的に良い取り組みではあるのですが、それを表に出したいわけではなく、良い物を作っているので、物を評価してほしい。素材そのものに価値が生まれる、評価されることが僕らが目指すところかなと思います。」
プロ野球選手にも使ってもらえる仕上がりだと自信を込める片山さん。今後はグローブ以外にも、イノシシやシカの革を使った製品を開発したいということです。
※FBS福岡放送めんたいワイド2024年12月27日午後5時すぎ放送