“実行役”を使い捨てる「トクリュウ」とは? 一度巻き込まれると抜け出せなくなる恐怖…
10月1日に埼玉県所沢市で起きた強盗致傷事件で逮捕された3人の男は、SNSで“闇バイト”を見つけ、強盗に加担してしまったと話しているといいます。アルバイトに名を借りた犯罪に一度巻き込まれると、抜け出せなくなる恐怖とは?
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警察庁によると、強盗・侵入などの事件のうち、SNSで集めた実行役に指示する形態のもの、またはその疑いがあるものは、この3年ほどで、22都道府県で93件発生。245人が検挙されています。(警察庁調べ 2021年9月~今年9月末)
また、所沢市の事件に関与しているとみられるのが、闇バイトなどで実行役を募集し、秘匿性の高いSNSで犯行の指示をする「匿名・流動型犯罪グループ」、いわゆる「トクリュウ」です。
「トクリュウ」は匿名、つまり自分たちでグループ名を名乗っていないことから、指示役を特定しづらく、またメンバーの流動性が高く、実行役を使い捨てにしているといった特徴があります。
「トクリュウ」の名が知られるようになったのは、東京・狛江の事件をはじめ、複数の強盗事件を指示したとされる、いわゆる「ルフィ」グループの事件です。
「ルフィ」グループの詐欺事件で「かけ子」だった女は裁判で、次のように話しています。
「組織に脅すなどされ、逃げ出すこともできませんでした。やめたいのにやめられない」
また、強盗事件で運転役などを担った男は、次のように話しています。
「安心した。もう強盗とかしなくていいから。バカなことをした」
こうした“実行役”を使い捨てにするのが、その上にいる“指示役”です。
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今年1月、私たちは「ルフィ」事件の特別捜査本部の取材を許されました。
警視庁捜査1課 堀田明係長
「こちら45名体制で捜査本部をさせていただいております」
通常は「捜査1課」「捜査2課」「捜査3課」と分かれて捜査を行いますが、初めて「担当の壁」を越えてのチームで捜査にあたっていました。
証拠を積み重ね、指示役を立件するために必要だったのが、全国の実行役に話を聞きに行くなどして、作り上げた捜査資料です。
警視庁捜査1課 堀田明係長
「おおむね当初700冊くらいありました」
事件で押収・解析したスマホも70台以上にのぼり、捜査は難航しましたが…
警視庁捜査1課 堀田明係長
「どこに被疑者の足跡・痕跡があるの?となると、携帯以外にありませんので」
リーダー格の男のスマホを開いたのは、100万通りの数字から導き出した、1つのパスコード。そこから指示役逮捕につながる重要な証拠が出てきたのです。
部署や地域の垣根を越えた“総力”が求められるトクリュウの捜査。
日本テレビ社会部 警察庁担当 高柳遼太郎記者
「警察庁はトクリュウを治安を守るうえでの最重要課題と位置づけている。先月行われた全国の捜査幹部を集めた会議でも、トクリュウ対策の強化を一番に呼びかけていました。警察庁は全国の警察に、トクリュウ対策の司令塔を配置して、取り締まりを強化しています」
相次ぐ強盗事件。警視庁と埼玉県警は“指示役”の存在など、事件の全容を調べています。
(10月3日放送『news zero』より)