【解説】備えを再確認…今できることは? 初の南海トラフ「巨大地震注意」 検討会ではどんな議論が?
8日午後、宮崎県で最大震度6弱の強い揺れを観測し、気象庁は初となる南海トラフ地震の「巨大地震注意」情報を発表しました。これについて、社会部災害担当の中濱弘道デスクが解説します。
■臨時の評価検討会が初開催 どんな議論が?
藤井貴彦キャスター
「『巨大地震注意』という発表でしたが、臨時の評価検討会が開かれ、どのような議論があったのか、教えてください」
社会部・災害担当 中濱弘道デスク
「検討会のメンバーに取材をしますと、今回の地震がどういうタイプの地震だったのか、メカニズムは、そして地震の規模はどうだったのかが、最初に話されたそうです」
「地震の規模については『モーメントマグニチュード』というデータを使っているのですが、これがすでに7.0を超えていたということで、今回は臨時情報の『巨大地震注意』に向けて議論が始まっていました」
「その後も、地震の余震活動などについても議論が進んだそうです。地震直後は体に感じる地震は少なかったのですが、陸地から離れた場所が震源ということで、陸地ではなかなか感じられなかったのですが、余震活動は起きていたそうです。夜になってから陸地で震度1や2の地震も起きているそうです」
藤井キャスター
「例えばマグニチュード7クラスの地震が発生したら、そのあと陸地では、例えば震度4や5弱といった強い地震を感じる、と私たちは考えていますが、今のところ、そういった震度が計測されていないのは、なにか理由があるのでしょうか」
中濱デスク
「そこは専門家に聞いても、なぜかはわからないんですね。ただ、余震活動は活発に起きているようなので、今後も特に2、3日以内、長ければ1週間程度は、今回と同じ規模の地震に注意してほしいと気象庁の会見でも話していました」
「今回の地震が起きた場所が、ちょうどプレートの境界でした。ただ、その場所のデータを精査すると、スロースリップであったり、ひずみ計データでも異常があるといったことはわからなかったので、今回の臨時情報『巨大地震注意』を出したということになります」
藤井キャスター
「あらためて『巨大地震注意』とは、どのような概念なのでしょうか?」
中濱デスク
「南海トラフ地震の臨時情報には『巨大地震警戒』『巨大地震注意』『調査終了』の3種類のパターンがあります」
「最初の地震でマグニチュード7程度が起きると、その近くのエリアでは後発地震、それが引き金によってさらに大きな地震、マグニチュード8クラスの巨大地震が起きるという例が、世界でも過去にあったそうです。ただ、その確率は数百回に1回程度(同領域・1週間以内)なので、平常時と比べると数倍高い状態ということで、今回注意を呼びかけているわけです」
■南海トラフ「巨大地震注意」“警戒”との違いは?
藤井キャスター
「『巨大地震警戒』となると、緊迫度はかなり高まるのでしょうか」
中濱デスク
「そうですね。『巨大地震警戒』となると、事前の避難が必要な場所が出てきます。南海トラフ巨大地震はマグニチュード8から9クラスの巨大地震ということで、大きな強い揺れと巨大な津波がやってきます」
「津波に関しては、地震発生直後、最短で2分程度で陸地に届いてしまうところがあるんです。そういった場所は、地震が起きてからの避難がかなり難しい。まだ揺れている段階で津波がやってきてしまう。もし『巨大地震警戒』となっていたら、沿岸で高い津波が予想されるエリアに関しては、あらかじめ1週間程度、避難してくださいという情報が出るかもしれなかったのですが、今回はそういった事態にはなっていません」
藤井キャスター
「8日の地震は宮崎に面した『日向灘』というエリアで起きましたが、南海トラフ巨大地震が起きた場合、想定震源域のどこでも震源になりうると考えていいのでしょうか」
中濱デスク
「日向灘や隣接するエリアで地震が起きる可能性もありますし、南海エリアや東海エリアでも地震が起きる可能性が相対的に高まっているということで今回、地震に注意してほしいという情報を出しました」
藤井キャスター
「東海、東南海、南海、日向灘と4つのエリアが合わさって、南海トラフ巨大地震想定震源域となっているということですね」
藤井キャスター
「このあと1週間ほど注意が必要だということですが、今できる備えとは、どういうものでしょうか」
中濱デスク
「内閣府によると『巨大地震注意』が発表されたときの備えとしてあげられているのが、まず、つねに家族の所在場所を把握してほしい、ということです。地震が起きて離ればなれになってしまうことを避けるためです」
「そして、非常用袋やヘルメットなどを玄関など持ち出しやすい場所に置いておく。また、寝る時間が一番地震に弱く心配な時間なので、寝るときは枕元に、はきなれた靴などを置いておくことによって、仮に停電してもすぐ避難ができるよう備えてほしいとしています」
藤井キャスター
「都会にお住まいのみなさんは、街の明かりがあるので夜でも明るいイメージがあると思いますが、停電するとほんとうに真っ暗になるので、今のうちに準備をしていただきたいですね」
「たとえば、遠く離れたところに住んでいるお母さんや子どもたちにLINEをするだけでも、家族の所在場所を把握することにつながると思います。ぜひ今のうちにお願いします。そして、地震への備えですが…」
中濱デスク
「家具の固定をあらためてやってほしいと呼びかけています。震度5クラスの地震が来ると、家具が倒れたり、高いところにあるものが落ちたりしてケガをすることがあります。今回、『巨大地震注意』が出たので、あらためて家具をしっかり固定して、次の揺れが来ても倒れないようにしっかり備えてほしいと思います」
「そして、非常用持ち出しバッグの再確認です。入っているものの賞味期限が切れていないかも含めて点検してほしいと思います」
「家族との決め事とは、津波の避難ルートなどにもなると思います。しっかり家族と話し合って、どういった場合にどこに避難するのか、今のうちにしっかり話し合ってください」
「エレベーターは強い地震で止まってしまうこともあります。使ってはいけないわけではないのですが、階段で2、3階移動できるならば、なるべく階段を使うことも、備えのひとつになるかと思います」
■巨大地震への備え…東北や北海道は?
藤井キャスター
「今回は、震源が九州に近いところでしたが、例えば南海トラフ巨大地震想定震源域の中でも東寄りのほうだったり、さらに東北や北海道のみなさんは、どのような心の準備をしておくといいでしょうか」
中濱デスク
「今回、南海トラフの『巨大地震注意』情報は、南海トラフで地震発生の可能性が普段より高まっているという情報なので、関東地方から東海、近畿、四国、九州地方の人は特に、普段より地震の可能性が高まっているとして注意をしてほしいです」
「ただ、地震に関しては、東北地方や北海道地方であっても、巨大地震への備えは必要になるので、家具の固定などはぜひやってほしいと思います」
藤井キャスター
「ほんとうに強い揺れが起きると、自分が動くことも、避難することもできなくなりますので、今から避難の準備をぜひお願いします」
(8月8日放送『news zero』より)