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福島・川内村に移住し「生花店」オープン “花のチカラ”発信 「花があるところに人は集まる」

2024年3月11日 21:10
福島・川内村に移住し「生花店」オープン “花のチカラ”発信 「花があるところに人は集まる」

福島県は浜通り・中通り・会津という3つの地域から成り立っていて、広大な土地と標高差のある多様な気候を活かし、年間を通して高品質な花の栽培が行われています。

その自然やそこに住む人々に惹(ひ)かれ、福島県川内村に移住し、生花店を営む女性がいます。福島から、“花のチカラ”を発信し続ける思いを聞きました。

■大阪から福島に移住し“生花店”オープン…「以前の風景を取り戻す」

今月1日、福島・田村市の船引高校で、卒業式を目前に控えた生徒たちが目を輝かせながら選んでいたのは、色とりどりのコサージュです。

「これにしよう。これ、かわいい」
「おそろっち?」

存在感のあるピンクのバラは富岡町、花弁が幾重にも連なっているラナンキュラスは南相馬市と、ほとんどが地元・福島県で栽培された花です。

ハレの日に彩りをそえた花を準備したのは、福島県・川内村で唯一の花屋を営む、福塚裕美子さん(38)です。

福塚裕美子さん
「何もない、ただの土地やったんやけど、なんかひかれて…ここで花屋建てたら、ガーデンつくったら、すてきやろうなと思って」

福塚さんは、店頭販売のほかに、川内村以外への花の配送も行っています。

福塚さん
「いろんなお花ミックスにした。いろんなの入ってるから」

「かわいい~」

その人柄からか、いつも笑顔で迎えられていました。

「福ちゃん…“破天荒”。なんか悩み事とかあっても、福ちゃんに言うと、ぜんぶポーンってなるから。ぜんぶ笑い話にしてくれるから、なんかいいよね」

福塚さん
「お互いさまで」

住民と気さくに話す福塚さんですが、川内村で生まれ育ったわけではありません。
出身は大阪。生花店のアルバイトをきっかけに、花の魅力にどんどんのめり込み、そして…

福塚裕美子さん
「どこかで、自分のお店をもつのが私の夢でした。まさか、川内村で花屋をやることになるとは」

川内村に移住するきっかけになったのが、東日本大震災――。

当時、一緒に働いていた同僚が川内村出身で、震災から5か月後に一緒に訪れました。

福塚裕美子さん
「人の背丈くらいの雑草が一面生えているような田んぼの風景で、彼女がそれ見て悲しんだから、この風景を取り戻す手伝いをしようって」

一時、全村避難を余儀なくされ、風景が一変した川内村……。
2012年に「帰村宣言」が出されたタイミングで、福塚さんは川内村に移住しました。

そして、2年半の花の移動販売を経て、いまから3年前に、夢だった自分の店「fuku farming flowers」を川内村にオープン。

福塚裕美子さん
「川内(村)以外でやるという選択はなかったです。大自然の豊かさ、人のあったかさ、ユニークさとか、いろんな魅力があって。川内のみんなが、どういうふうに生きていくんだろうというのも…長い時間というか、一生かけて見ていきたいな、そばにいたいなと思って」

現在、月に2~3回ほど、フラワーアレンジメント教室を開催するなど、日常に花がある生活の豊かさを伝えています。

いわき市から来ている生徒
「(震災当時は)余裕がなかったし、日々の生活で精いっぱいという感じでした」

「生活の中にお花があるって、すごくいいですよね」

■夢の生花店…継続する難しさに悩まされるも「あきらめたくない、続けたい」

一方で、厳しい現実も迫っています。

現在、川内村に住んでいるのは約2300人(2月1日現在)。

しかし、人口流出や少子高齢化で、2040年には約1300人になるという予測もされているのです。

福塚裕美子さん
「お花を日常的に買い求める人が少ないわけやから、どうやっていくか、ずっと…ずっと考えてやっている。川内村で花屋を続ける、商売を続ける、継続する難しさに、いま6年やっているけど、悩まされ続けて…。でも、あきらめたくない、続けたいから…」

葛藤を抱えながらも、川内村で生きていく――。

■川内村から “花のチカラ” を発信…「花があるところに人は集まる」

福塚さんはこの春、福島の高校を卒業する生徒たちにも、花の持つチカラを伝えていました。

福塚さん
「こんにちは。いつもありがとうございます」

校長
「きれいですね」

卒業生98人の胸元を彩るコサージュとともに、こうメッセージを残しました。

福塚さんから卒業生へのメッセージ
「本日は、ご卒業おめでとうございます。私の夢は、自分の花屋を持つことでした。最初、川内村で花屋をやるということが、周りにはとても無謀に見えたと思います。でも、自分の夢をあきらめませんでした。あきらめずに、がんばっていきます。皆さんは、これから、ひとりひとり違う、多種多彩な道へ進んでいくと思います。その人生の中で、花を愛でる瞬間がたくさんありますように、と願っています」

夢をかなえた福塚さんが、新たに挑戦していることがあります。

店の周りに、4000平方メートルにも及ぶ大きな“花の庭”を造ろうとしているのです。

福塚さん
「ここにお花が咲くと、眺めがよくて…」

たくさんの人が集まる、憩いの場所にしたいといいます。

福塚さん
「私自身も花を見に行くのが好きで、“花があるところには人が集まる”と信じて、このガーデンもたくさん花咲かせて、人が集まってきたらいいな」

福塚さんは“花のチカラ”を信じ、前に進み続けていきます。