千葉・柏市8棟火災…行方を追っていた火元の男(77)逮捕 火災約10分前には近くで“夫婦殺人” 関連は?
千葉県柏市で18日夜、住宅8棟が燃える火災があり、19日夜に警察は行方を追っていた男を公務執行妨害の疑いで逮捕しました。火災の通報の約10分前には、すぐ近くで夫婦が殺害される事件も起きていて、警察は殺人と火事の関連についても調べることにしています。
◇
19日夜、千葉県警が発表したのは…
吉田悠貴記者(千葉・柏市)
「8棟が焼けた火災の火元と見られる家に住む男が、逮捕されたということです」
公務執行妨害の疑いで、職業不詳の77歳の男を逮捕したことについて。この男は、柏市で夫婦が切りつけられ、死亡した殺人事件をめぐり、事件の直後に近所で発生した放火とみられる火災に関与した疑いで、警察が逮捕状を取り、行方を追っていた人物でした。
千葉・柏市高柳の住宅街で18日夜に撮影された映像には、オレンジ色の炎をあげながら複数の家屋に燃え広がる火災の様子が映っていました。別の市から撮影された映像にも、炎とともに立ちのぼる煙が確認できます。
◇
一夜明け、上空から見ると、住宅が焼け落ちた一帯が…。この火災で、8棟が燃えたということです。
記者(19日朝)
「家の中も完全に燃えてしまっています。現在も焦げたにおいが辺り一面に広がっています」
18日午後6時22分頃、「隣の家が燃えています。爆発音も聞こえます」と通報がありました。爆発音で火事に気づいたという近所の人たち。
「2回爆発音があって、すごいドカンという音だったからね。外に出たらもう火の海だよね」
18日夜に帰宅すると、自宅が燃えていたという男性は…
“自宅が燃えた”住人
「道路をこう来たら、あれ、燃えてるわいと。なんだ2階が燃えているなと。まあしょうがないなと思って」
男性は、息子の家に避難したといいます。
◇
実は火災の約10分前、町内では別の凄惨な事件も起きていたのです。
近隣住民からの通報
「人が血だらけで倒れている。倒れているのは50代の夫婦で動かない」
夫婦が、刃物のようなもので切りつけられる事件が発生。渡来敏明さんと渡来礼子さんの59歳の夫婦は、その後、死亡が確認されました。
近隣住民
「ストレッチャーで運ばれているのは見た。心臓マッサージしていましたね。女性が胸から血が出ていたのか」
警察などによると、敏明さんは腹など、礼子さんは胸など上半身を中心に、複数の刺し傷が。また、手には争ったときにできる防御創も見られたということです。
通報でも…
「発見の10分ほど前に女の人の争うような声が聞こえた」
争うような声が聞かれ、さらに夫婦の自宅の室内には、物が倒れているなど、争ったあとがあったということです。
柏警察署長(19日午後)
「殺人事件と認定し、120人態勢の捜査本部を設置いたしました」
同じ街で、同じ時間帯に起きた殺人事件と、火災…。関連はあるのでしょうか?
現場は、千葉・柏市の東武鉄道・高柳駅周辺。夫婦が殺害された現場は、駅から約1キロほどの民家が立ち並ぶ、のどかな場所です。火災は、その約10分後、北東方向に600メートルほど離れた場所で起きました。
捜査関係者によると、火元とみられる家に住んでいたのが、公務執行妨害の疑いで逮捕された77歳の男。火事は、放火の可能性があり、現場で男が「火のついた何かを投げるのを見た」「男が現場から車で立ち去るのを見た」などの目撃情報があるということです。
◇
では、殺害された渡来さん夫婦と男との間に、接点はあったのでしょうか。渡来さんを昔から知っているという近所の住民は…
夫・敏明さんの知人
「知っているというか、会っていたからね。この建物も(渡来)敏明さんに建ててもらったんだから。設計士だったんだよね、敏明さんは。敏明さんのお父さんが不動産屋だった」
近所の人によると、渡来さん自身も不動産の仕事をしていたといいます。
一方、77歳の男を知る人は…
男を知る人
「気短(短気)な人だったって。(普段は)おとなしいんだって。でも何かあったときはすごいんだって」
近所の人に中には、男と夫婦の間のトラブルを聞いたという人もいました。
──土地の関係で渡来さんと(男が)問題になった?
近所の人
「問題になったんだよ」
捜査関係者によると、渡来さん夫婦と男との間には、“金銭トラブル”があったとみられています。
19日夜、印西市にいたところを、公務執行妨害の疑いで逮捕された77歳の男。逮捕のきっかけは通報でした。
「朝から不審な車がエンジンかけたまま駐車している。柏ナンバー」
窓ガラスが曇っていて、ナンバーにテープで目張りがされていた不審な黒い車。警察官が職務質問しようと手帳を見せたところ、急発進するなどして、警察官の公務を妨害した疑いが持たれています。
男は下半身に大きなやけどをしていて、入院するため19日夜に釈放され、千葉県内の病院で治療を受けています。
殺人事件が起きてから火災が起きるまでは、約10分ほど。19日夜、事件が起きたのと同じ時間帯にこの2か所を車で移動してみると…
記者
「交通量はありますね、この時間」
「住宅街に入ると少し薄暗くなっていますね」
規制された火災があった現場の300メートル手前までは、4分もかからないうちに到着しました。
記者
「(殺人現場から)5分かからないくらいで、火災現場に車で行けることになります」
◇
謎が多い、殺人と放火の2つの事件。「news zero」はそれぞれの専門家を取材しました。
まず、元神奈川県警捜査1課長の鳴海達之氏は、2つの事件の関連性について…
元神奈川県警捜査1課長 鳴海達之氏
「こういった殺人があったあとに、数百メートルしか離れていないところで家が燃え上がるなんて、そんな偶然はなかなかない。家に一度帰って火を付けるということは、何かしら自分がやったという逆の証しになってしまう」
夫婦殺害事件の捜査については…
元神奈川県警捜査1課長 鳴海達之氏
「複数回、刺しているという恨み。動機に関する状況証拠を集める。途中に防犯カメラ等々あれば、被害者宅に向かう足(姿)がでるとか、戻りの足(姿)がでるとかあれば、それも状況証拠として使える」
一方、火災の専門家、元東京消防庁の坂口隆夫氏は、初期の燃え方を見て放火にみられる特徴だと指摘します。
元東京消防庁 坂口隆夫氏
「通常であれば、若干柱なんかが残ってるんですけど、まったく残ってない状態。相当激しく燃えたとわかる。夕方6時20分覚知の火災で、まだ周りの人が起きてる時間帯。もう少し規模が小さいうちに、消防隊が放水しててもおかしくない。初期の段階が燃え方が激しいということは、何かガソリンに近いような可燃性の液体をまかれて火をつけられた、そういうことも視野にして調査をしてるのかと思います」
また、“男が火のついた何かを投げるのを見た”という証言があることについて…
元東京消防庁 坂口隆夫氏
「ガソリンをまいて火をつけると、行為者自体の着ているものに火がつく。場合によっては、行為をした人がそれを知っていて、離れた場所から何らかの火を投げ入れたということも考えられます」
◇
警察は殺人事件と火災の関連についても、詳しく調べることにしています。
(12月19日放送『news zero』より)