【対策を】冬場の入浴など急激な温度変化で起きる「ヒートショック」
寒さが厳しいこの時期に注意が必要なのが、入浴の際の急激な温度変化などで起きる「ヒートショック」です。県内での死者は毎年100人を超え、交通事故の死者の5倍となっています。
ヒートショックを防ぐための対策を取材しました。吉田記者のリポートです。
■銭湯でも対策 脱衣所を暖める
富山市にある銭湯「開発鉱泉」です。オープンの2時間前、スタッフが脱衣所に運び込んでいたのは、ヒーターです。
開発鉱泉 相地薫さん「エアコンはついているんですが、寒くなるので灯油のヒーターをつけていますね」
この銭湯では今月から、男湯と女湯のそれぞれの脱衣所にヒーターを設置しました。
相地薫さん「ヒートショックがすごく怖くて、倒れられる方もおられますので、少しでも脱衣所を温かくしておけば良いかと思いまして設置しています」
吉田記者「脱衣所を暖め始めてからおよそ2時間が経過しました。部屋の温度を見てみますと、20度を超えていて外気温を10度以上上回っています。そして脱衣所から大浴場に入ってみましたが、大きな温度の変化はないように感じます」
銭湯を訪れた客は。「ちょうどいいくらい(の温度)」「脱衣所とかを暖めていただけると非常に助かりますね」
急激な温度変化などで、血圧が変動することによって引き起こされるヒートショック。風呂場で発生することが多いとされています。
兵庫県の消防が公開している実験映像では、気温11度の寒い脱衣所で消防隊員が血圧を測定すると数値は165でしたが、42度に設定した浴槽に浸かると血管が拡張し、血圧は135まで一気に下がりました。
こうした急激な血圧変動が失神を起こす原因の一つで、浴槽内で溺れる危険性が高まります。
一般の住宅でも、寒い季節、脱衣所や浴室を暖かくすることで、ヒートショックは予防できます。
県のまとめによりますと、ヒートショックなどが原因で浴槽内で溺れて亡くなった人は、毎年100人を上回っていて、去年は163人に上りました。これは交通事故による死者数の5倍です。
医師は、高齢者だけでなく若い人も注意が必要と呼びかけています。
政岡内科病院 政岡陽文院長「血圧が高い方とか糖尿病の方とか、若くても動脈硬化が進んでいる方は多い。食べた直後に(お風呂に)入る人、あとアルコール、お酒を飲んで入るとすごく血圧が下がるので、若い方でも倒れてヒートショックになる方はいます。風呂場の脱衣所に暖房を入れたり、高齢者は風呂に日中に入るとか、食前に入るとか、そういうふうに工夫してほしい」
■家の断熱性もポイント ヒートショック対策
吉田記者「ヒートショックをめぐり、県は、家自体の断熱性を見直すハード面での対策にも乗り出しています」
こちらは県が住宅メーカーに働きかけて改修した住宅で、特徴のひとつが高い「断熱性」です。
正栄産業 担当者「建物の壁の部分に断熱材の吹き付けを行いまして、その壁の外側にパネル断熱というものを付けて二重で断熱する形をとっています」
高断熱の住宅は脱衣場などが寒くなりにくく、ヒートショックのリスクが軽減できるとされています。
日本の住宅は海外と比べると断熱性などの基準が低いとされていて、県は、こうした健康や環境に配慮した住宅をウェルビーイング住宅と位置づけ、普及に力を入れています。
正栄産業 担当者「ヒートショックは断熱性の低い家で起こりうるが、断熱性能を高めることでそういったリスクも排除できるので、健康的にも過ごしていただけると思っています」
ヒートショックによる事故を減らすために、様々な対策が行われています。
ヒートショックは急激な温度変化を避けることでリスクを下げることができるので、家族や身近な高齢者の方にも、対策を呼びかけていきましょう。