「暖冬」で観光に影響…イベント中止相次ぐ 湖凍らずワカサギ釣りは… 「寒ざらしそば」も仕込めず
今週初めには関東各地で大雪となりましたが、日本列島はこの冬、暖冬傾向が続いています。寒さを利用した観光イベントも中止が相次ぎ、10日から連休を迎える観光地からは、困惑の声があがっています。
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9日、埼玉県秩父市で、大勢の人が集まり、カメラを向けるその先にあったのは…観光名所、「三十槌の氷柱(みそつちのつらら)」です。
本来なら見頃を迎える頃ですが、観光客からは…
観光客
「もっと大きいと思いましたよね」
去年の2月と比べると、2割ほどの大きさにとどまっています。
その原因が――
秩父観光協会大滝支部 行常一栄さん
「今年は、暖冬の影響で、年始めに『つらら』ができなくて」
秩父では、今年は平年より気温が高い日が続き、「つらら」がとけてしまうといいます。
(※秩父:8日までの60日平均 今年3.8℃ 平年より1.4℃高)
全国的にも、暖冬傾向が続いていて、8日までの60日間の平均気温を平年と比べてみると、多くの場所で1℃~1.5℃以上、高くなっているのです。
この影響は、“冬の名物”にもあらわれていました。
秩父市のそば店「そば処 和味」は、平日の昼間でも満席になる人気店。客のお目当ては、冬限定の「寒ざらしそば」です。
東京から来た お客さん
「寒ざらしそばを食べるためだけに来ました」
さいたま市から来た お客さん
「年2回くらい来るんですけど、あれば必ず注文します」
そばの実を冷水にひたして天日干しすることで、甘みや風味が増すという「寒ざらしそば」。
この店では例年、2月から3月まで期間限定で提供していましたが、9日、店内には――
記者
「『寒ざらしは準備できません』と書かれた張り紙があります」
「寒ざらしそば」が作れない事態となっていました。
「そば処 和味」 江田徹 店主
「今年は非常に暖かかった影響で、4℃程度の水温だったから、ちょっと断念したという感じです」
「そばの実」をひたす川の水温が2℃以下にならないと、「そばの実」が発芽してしまうのだといいますが、今年は、4℃~5℃以下に下がらず、「寒ざらしそば」の仕込みができなかったといいます。
「そば処 和味」 江田徹 店主
「15年以上やっているけど、今年が初めて。この時期に『寒ざらし(そば)』を楽しみに来るお客さまが毎年必ずいたので…残念がって、足が遠のいてしまうのかなというのが…」
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さらに、暖冬で中止に追い込まれる“冬の風物詩”も――。
福島県北塩原村にある、桧原湖。
湖の上には、大量の割れた氷が浮かんでいます。
例年、この時期は、湖全体が雪と氷で覆われるため、分厚い氷の上で楽しむ「ワカサギ釣り」のシーズン。
しかし、今年はほとんど湖が凍らず、雪も少ないため、氷の上に乗ることができないといいます。
民宿ひばら 伊藤毅さん
「早く(氷が)張ってほしい。雪が一気に降れば、結氷も望めたかなと思うけど、週間の天気予報みても、その予報は出ていないので、厳しいかなって思います」
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暖冬による雪不足は、国内有数の豪雪地帯、青森県でも――。
「全然だめです。もう泥…」
例年は、ひざ上まで雪が積もるといいますが、今年は地面が見えるほどの積雪量しかありません。(※青森 平年の最深積雪:71cm、9日:16cm)
田舎館村では、毎年、雪を踏み固めて描く「スノーアート」のイベントが開催されています。
毎年5000人ほどの観光客が訪れますが、これ以上、積雪量が増える見込みがないため、今年のイベントは中止になりました。
スノーアーティスト集団 It's OK. 鈴木勝副代表
「絶対作れないかといえば、作れないことはないけど、決してきれいなものには…。スノーアートではない」
雪不足での中止は、初めてだということです。
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“冬の観光”に、大きな打撃を与える暖冬――。
このあとも全国的に暖冬傾向は続くとみられていて、連休明けは4月並みの陽気となり、東京は15日(木曜日)に20℃まで上がる予想です。