【戦後80年】創業90年、空襲逃れ営業続ける食堂の今 20代にも人気…“聖地巡礼”も
戦後80年となる今年、私たちは「いまを、戦前にさせない」をテーマに様々な特集をお伝えします。8日の「news zero」は、東京大空襲の戦火を逃れ90年以上続く食堂についてです。令和となった今、若い世代からも人気なのですが、年明けに休業せざるをえなくなってしまいました。
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東京・両国。この場所で、90年以上続く食堂があります。1932年創業の下総屋食堂。
2代目女将、宮岡恵美子さん(92)は、この食堂と同じ、昭和7年生まれです。今も現役で厨房(ちゅうぼう)に立ち、息子と2人で店を切り盛りしています。
女将・宮岡さん(92)
「おかずはここから自由にとってください」
客
「へ~」
棚に並べられたおかずを、客が自ら選んで運ぶ。戦時中、主に自炊をしない労働者向けに営業していた時のままです。
常連客(65)
「(店に来たのは)300回くらいじゃないですか」
毎週のように通う常連から…
大学生(21)
「レトロ、昔ながらの感じがあっていい雰囲気だなと」
大学生まで、幅広い世代を惹きつけているこの食堂。戦前から変わらない建物で営業を続けてきました。
ネットを見て来店
「大空襲をくぐりぬけたんですね…」
80年前の3月10日、東京大空襲。下町を中心に約10万人が亡くなったといわれています。その空襲を奇跡的に逃れた下総屋食堂。食料が限られる中、庶民を支え続けた食堂は今─。
ドラマを見て来店
「ドラマのロケ地になっていて、あたたかい感じがしてすてきだなと」
風情ある雰囲気から、映画やミュージックビデオなど、様々な作品の舞台になっていて、いわゆる“聖地巡礼”を楽しむ人も。また、海外から訪れた客には…
女将・宮岡恵美子さん(92)
「NINJA!手裏剣! はい、お土産」
香港から来店
「ありがとう」
宮岡さん自ら作った折り紙のプレゼントで、“おもてなし”。先月下旬も、いつも通り、お客さんをもてなしていました。
しかし、宮岡さんは年明けに、心筋梗塞や肺炎などを患い入院。1月6日(月)から営業予定だった食堂は休業になり、再開のめどは立っていないといいます。
常連客(8日)
「来たけどきょう休み。ここの焼きサバを食いに来たんだけど」
大阪から旅行中の夫婦(8日)
「日本のいい文化みたいな感じがある。頑張ってほしい」
今年で戦後80年。失われつつある戦争の記憶。当時の体験を伝え続けていくことが大きな課題となっています。
春に、長崎から上京するという大学生は…
春に上京 長崎の大学生(24)
「長崎でも1945年に原爆落とされて、戦争という言葉を聞いてシンパシー感じて、東京でお母さんの味が食べられたらいいなと」
現在、快方に向かっているという宮岡さん。「早く病気を治して、お店を再開したい」と話しています。
藤井貴彦キャスター
「かしゆかさん、どう感じましたか?」
かしゆか(Perfume・『news zero』水曜パートナー)
「広島に住んでいたので、毎年夏になると、被爆者の方のお話を聞いていました。ただ、戦争を経験された方が高齢になって、当時の話を直接聞ける機会が少なくなっています」
「今、世界ではまだまだ戦争が続いている地域もあります。戦後80年をきっかけに、改めて自分事として考えていきたいと思いました」
(1月8日放送『news zero』より)
広島・長崎に原爆が投下され、戦争が終わって80年となります。戦争をした国に生まれた私たちが、二度と戦争を繰り返さないという「誓い」の意味を改めて考えます。情報提供サイトで資料や証言を募集しています。