【NNNドキュメント】原発問題は“自分ごと” 女子高生が考える廃棄物の処理と街の未来 NNNセレクション
“電力供給地”、福井の高校生が危機感を持って見つめるのは、原発の廃炉作業から出る廃棄物の処理問題。そこで高校生たちは、廃炉から出る金属を使用して作った街灯を通学路に設置。原発問題を“自分ごと”と捉えた高校生たちの青春・アオハルを追った。
◇◇◇
原発がある県に住む、私たちが考えたこと。
森夕乃(もり・ゆの)さん
「福井県にずっと住んでいますが、原子力について無関心だったり、“怖い”という先入観をもっていたので、自分がどうしてそう思ったのか、実際にこの目で見ながら判断したい」
福井市の高校3年生、森夕乃さん。原子力をテーマにしたゼミに所属しています。
この日、話し合ったのは、原発が立地する県ならではの「使用済み核燃料」の問題。
森さん
「使用済み核燃料プールという“冷やしていく場所”が、福井県内でも、2027年にはいっぱいになっちゃう」
生徒
「処分しなきゃいけない、対処しないといけないものがたくさん残っているのに、日本では方法が何も決まっていない状態」
世界的なエネルギー危機を背景に、原発の持続的な利用に再び舵(かじ)を切った日本。国内で再稼働した12基のうち、7基が立地する福井県。国策に協力し、エネルギー供給地としての役割を担ってきました。
生徒
「(原発の)廃止措置が進んでいて壊していくなかで、本当は放射線の影響は関係ないのに、原子力発電所にあったからというだけでストックされていくものが、“クリアランス物”。それが大量に余っている」
生徒
「ゴミステーションがあって、ごみを持って行かない状態」
「ゴミ屋敷だ」
福島第一原発の事故をきっかけに、原発は規制強化が進み、60基あった国内の原発も、24基が廃炉に。課題となるのは、「クリアランス物」と呼ばれる廃棄物です。放射線量は、自然界から受ける量の200分の1以下と極めて低く、一般の廃棄物と同じようにリサイクルできるものです。
森さん
「周りに溶け込める防犯灯で、クリアランス自体も受け入れられやすくなる環境をつくりたい」
クリアランス金属を使った街灯を、学校周辺の通学路に設置しようと考えました。しかし、地域の道路への設置は簡単ではありません。理由は放射線の影響を心配する住民の声です。地元の住民を集めて、説明会を開きました。
森さん
「人体に影響がないものだと国から認定を受けたものをさします。ですが、まだ使えるのに使われていないクリアランス資源が施設内に残っており、それも問題になっています」
しかし、厳しい声も。
住民
「対立点のある問題ですので、一方的な話をされると、一番問題をはらむと思っている」
住民
「子どもたちが、そういうことに利用されている気がして、それは気の毒」
生徒
「説明するにあたって、知識不足の部分があったのかなと、ひとつ反省点として思った」
森さん
「最初から完璧な合意はできないのは、分かっていたから」
チラシを作り、地域住民の意見や不安に向き合うことにしました。
【住民の投書より】
『自分がこの先、子どもを産みたいと思っている身であることもあり、わずかな量の被ばくとなるにしても、怖いなと』
【生徒の回答より】
『クリアランス金属は「放射性廃棄物」でなく「産業廃棄物」で、普通の金属と変わりません』
「(住民の)皆さんが意識を持って、こういう問題を考えていくきっかけを作ってもらえたと思う」
厳しい意見を述べた住民は――。
住民
「地域の人たちの意見も聞いたうえでやっていこうというのは、配慮の行き届いた研究姿勢だと思っている」
2024年3月、計画開始から1年半。10個の街灯が灯りました。クリアランス金属をリサイクルした街灯が、公共の道路のインフラとして使われるのは全国で初めてです。
住民
「生徒さんたちには感謝しています。やはり今の時代ですから、材料使ってやってもらうのはいい」
森さん
「原子力というテーマで、一緒に同年代の子と一緒に活動できたことが、自分の中で大きい経験になった」
原発を「自分ごと」として捉えてほしい。その思いは、未来へと紡がれていきます。
2024年8月11日放送 NNNドキュメント’24『アオハルと原発~私たちの紡ぐ未来~』をダイジェスト版にしました。
◇◇◇
原発がある県に住む、私たちが考えたこと。
森夕乃(もり・ゆの)さん
「福井県にずっと住んでいますが、原子力について無関心だったり、“怖い”という先入観をもっていたので、自分がどうしてそう思ったのか、実際にこの目で見ながら判断したい」
福井市の高校3年生、森夕乃さん。原子力をテーマにしたゼミに所属しています。
この日、話し合ったのは、原発が立地する県ならではの「使用済み核燃料」の問題。
森さん
「使用済み核燃料プールという“冷やしていく場所”が、福井県内でも、2027年にはいっぱいになっちゃう」
生徒
「処分しなきゃいけない、対処しないといけないものがたくさん残っているのに、日本では方法が何も決まっていない状態」
世界的なエネルギー危機を背景に、原発の持続的な利用に再び舵(かじ)を切った日本。国内で再稼働した12基のうち、7基が立地する福井県。国策に協力し、エネルギー供給地としての役割を担ってきました。
生徒
「(原発の)廃止措置が進んでいて壊していくなかで、本当は放射線の影響は関係ないのに、原子力発電所にあったからというだけでストックされていくものが、“クリアランス物”。それが大量に余っている」
生徒
「ゴミステーションがあって、ごみを持って行かない状態」
「ゴミ屋敷だ」
福島第一原発の事故をきっかけに、原発は規制強化が進み、60基あった国内の原発も、24基が廃炉に。課題となるのは、「クリアランス物」と呼ばれる廃棄物です。放射線量は、自然界から受ける量の200分の1以下と極めて低く、一般の廃棄物と同じようにリサイクルできるものです。
森さん
「周りに溶け込める防犯灯で、クリアランス自体も受け入れられやすくなる環境をつくりたい」
クリアランス金属を使った街灯を、学校周辺の通学路に設置しようと考えました。しかし、地域の道路への設置は簡単ではありません。理由は放射線の影響を心配する住民の声です。地元の住民を集めて、説明会を開きました。
森さん
「人体に影響がないものだと国から認定を受けたものをさします。ですが、まだ使えるのに使われていないクリアランス資源が施設内に残っており、それも問題になっています」
しかし、厳しい声も。
住民
「対立点のある問題ですので、一方的な話をされると、一番問題をはらむと思っている」
住民
「子どもたちが、そういうことに利用されている気がして、それは気の毒」
生徒
「説明するにあたって、知識不足の部分があったのかなと、ひとつ反省点として思った」
森さん
「最初から完璧な合意はできないのは、分かっていたから」
チラシを作り、地域住民の意見や不安に向き合うことにしました。
【住民の投書より】
『自分がこの先、子どもを産みたいと思っている身であることもあり、わずかな量の被ばくとなるにしても、怖いなと』
【生徒の回答より】
『クリアランス金属は「放射性廃棄物」でなく「産業廃棄物」で、普通の金属と変わりません』
「(住民の)皆さんが意識を持って、こういう問題を考えていくきっかけを作ってもらえたと思う」
厳しい意見を述べた住民は――。
住民
「地域の人たちの意見も聞いたうえでやっていこうというのは、配慮の行き届いた研究姿勢だと思っている」
2024年3月、計画開始から1年半。10個の街灯が灯りました。クリアランス金属をリサイクルした街灯が、公共の道路のインフラとして使われるのは全国で初めてです。
住民
「生徒さんたちには感謝しています。やはり今の時代ですから、材料使ってやってもらうのはいい」
森さん
「原子力というテーマで、一緒に同年代の子と一緒に活動できたことが、自分の中で大きい経験になった」
原発を「自分ごと」として捉えてほしい。その思いは、未来へと紡がれていきます。
2024年8月11日放送 NNNドキュメント’24『アオハルと原発~私たちの紡ぐ未来~』をダイジェスト版にしました。
最終更新日:2024年10月5日 15:05