【独自に3D化】「どこから?」廃炉を阻むナゾの物質 福島第一原発 デブリへの唯一のルート塞ぐのは…
東京電力福島第一原発の事故から13年。いまだ2万6000人以上の福島県民が避難生活を続けている。40年で廃炉を完了するとしてきたが、その3分の1が経過した。
″廃炉の本丸″と言われるのは「溶け落ちた核燃料=燃料デブリ」の取り出しだ。しかしその作業をやり通せる技術的目処は立っていない。燃料デブリ取り出しがどのように難航しているのか。日本テレビは現地で探るとともに、その原因を映像化した。
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東京電力福島第一廃炉推進カンパニー 髙原憲一リスクコミュニケーター
「30~40年と言っている廃炉までの期間をですね、伸ばすのか縮めるのかみたいな 判断が現況できないんだと」
福島第一原発の事故から13年。ずらりと並ぶ処理水のタンクのそばで、廃炉に向き合ってきた東京電力の担当者はこう口にした。
案内されたのは、震災当時、メルトダウン事故を免れた5号機の中心部。事故が起きた2号機と似た構造をしている。
核燃料が装填される原子炉圧力容器の真下に入った。
東京電力福島第一廃炉推進カンパニー 髙原憲一リスクコミュニケーター
「(事故が起きた)2号機は融解した燃料がこういった構造物を巻き込んだ上で落ちていって燃料デブリという冷え固まった状態になっている」
2号機のこの場所には核燃料が溶け落ち、茶色い無数の石のような燃料デブリが、こびりついているように見える。強い放射線を出すため、人間は近づくことができない。燃料デブリに触れた水は汚染水となり、大量の処理水を生み出す要因になっている。
東京電力福島第一廃炉推進カンパニー 髙原憲一リスクコミュニケーター
「我々はですね、燃料デブリをよく「本丸」と言っています」
「ここを達成しない限りは本当の意味でのリスク低減にはならない」
全ての燃料デブリを建屋から取り出し、安全に保管することが廃炉の最終目的だという。その作業を廃炉の「本丸」と呼ぶが、溶け落ちた燃料デブリの総量は推定880トン。
現時で技術的に取り出せるのは”耳かき一杯程度”に過ぎず、さらにその”耳かき一杯程度”の取り出し作業について、開始時期はすでに2年半遅れている。
どうやって燃料デブリを取り出そうとしているのか。
デブリにアクセスする唯一の突破口とも言える穴がある。
東京電力福島第一廃炉推進カンパニー 髙原憲一リスクコミュニケーター
「これが原子炉格納容器の中と外をつなぐ貫通孔、通称『X6ペネ』と言っています」
定期点検の際、中心部に器具を運ぶための作業用の穴「X6ペネ」。
直径60センチほどのこの穴を利用して、圧力容器の真下にロボットアームを差し込み、その下に溶け落ちた燃料デブリを取り出そうとしている。
5号機のX6ペネに小型カメラを入れた。内部には作業用のケーブルなどが置いてあった。2メートルほどの穴を通り抜けると、燃料デブリが溶けて落ちている場所の真上までスムーズに到達できる。
しかし去年、2号機のX6ペネの蓋を開けたところ…。
入り口には何らかの物質が詰まっていて、ロボットアームを入れられるような状態ではなかった。
びっしり詰まったX6ペネの中はどうなっているのか。日本テレビは東京電力が作成した3Dデータを基に、2号機のX6ペネ内部を3Dで可視化した。
入り口付近には分厚い堆積物。
元々穴の中にあったとみられる、作業用ケーブルのような凹凸も見える。
堆積物を棒で突き崩そうとするも、ロボットアームを入れられるほど除去できず、ごく少量からのデブリ取り出し計画すら、入り口から足踏みしている。
横から見ると、画像の緑色の部分、穴の入り口に謎の物質がたまっていた。
去年末に開かれた原子力規制委員会の検討会でも、この堆積物が一体何なのか議論になった。
東京電力福島第一廃炉推進カンパニー燃料デブリ取り出しプログラム部 久米田正邦GM
「3Dスキャンの結果から堆積物量約140Lであろうということを試算しております。これに対して当時残置していたケーブルにつきましては約40L程度であろうと」
原子力規制庁 安井正也企画調査官
「この140Lはどこから来たのだと」
原子力規制委員会 山中伸介委員長
「分からない物量が100Lぐらいあるわけですよね。鉄にしろ何にしろ」
「炉心から来たものでないと、これぐらいの量はちょっと想像し難い」
去年始まった処理水の放出は、敷地内に増え続ける処理水のタンクを解体し、取り出した燃料デブリの保管施設などを作るため、スペースを確保することが目的だった。
処理水放出の次の廃炉の焦点は”本丸”燃料デブリ取り出しだ。果たして、880トンあるとされる燃料デブリを取り出し終える日は来るのだろうか。
東京電力福島第一廃炉推進カンパニー 髙原憲一リスクコミュニケーター
「環境に影響を出すという物質でもありますし、全量取り出すということを現段階で我々があきらめることは絶対にないと考えています」
ある政府関係者は、燃料デブリを全量取り出すことは今の技術で困難だとした上で、こう述べていた。
「安全に管理できるなら更地でなくてもいい」
「今の段階で廃炉の最終形態を決めるのは違うと思うが、どこかの段階で見切りを付けるのは大切だと思う」