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“チーム八王子”を襲う第7波の猛威 独自の施策でより多くの患者に対応

2022年8月12日 13:38
“チーム八王子”を襲う第7波の猛威 独自の施策でより多くの患者に対応

新型コロナウイルス第7波による感染急拡大を受け、連日多くの新規感染者が確認されている東京都。56万人が暮らす東京のベッドタウン・八王子市でも、第7波真っ只中の今月2日、過去最多となる1253人の新規感染者が確認されました。新型コロナが国内で初確認されてからおよそ2年半。これまでも早めの調整により、独自の対策を打ち出してきた八王子市で第7波の現状に迫りました。

■“チーム八王子”でコロナ対応

八王子市医師会によると、一部の病院の発熱外来に患者が集中しないよう、多くの医療機関が協力し、八王子市内にある診療所やクリニックの8割が積極的にコロナ患者の診察にあたっているということです。これは全国的にみても非常に高い割合です。

八王子市医師会の鳥羽正浩会長は、8割という数字は当初、想定していなかったといいます。市内の各医療機関に協力についての説明をした際も、「手を挙げてくれるのは2から3割だろう。きちんと説明してお願いして5から6割程度集まればと思っていた」と当時を振り返ります。

では、なぜ八王子市では8割もの診療所などから協力を得ることができたのでしょうか。新型コロナの発生当初から、感染者の増加に伴い、病院が手いっぱいとなり、入院患者の受け入れができない状況に陥ることを危惧していたという鳥羽会長。そうなれば、入院機能がない診療所にとっても致命的になりかねないとして、病院の負担軽減のため、市内の診療所に協力を依頼したといいます。

一方で病院側は、地域のクリニックや診療所がコロナ患者の診察や検査を担うことに応える形で、重症患者などの受け入れを続けてきました。

鳥羽会長は、8割もの協力が得られていることについて「病院・行政・保健所で定期的にWEB会議を行い、常に情報を共有し、意思疎通を図ってきた結果ではないか」と説明しています。

■感染者数は“第6波の2倍” ひっ迫する医療現場

しかし、そんな八王子市でも、医療提供体制がひっ迫しているのが、いまの第7波の現状です。八王子市では、今月2日、過去最多となる1253人の新規感染者が確認されました。これは第6波での最多685人(2月16日)のおよそ2倍です。

鳥羽会長が院長を務めるクリニックでは、毎日朝から、検査を希望する人などからの問い合わせの対応に追われ、日によっては電話が鳴りやまないこともあるといいます。

第7波で猛威を振るうオミクロン株の特徴として、感染力が強く感染者数こそ多いものの、その大半が無症状や軽症であることが指摘されています。

鳥羽会長のクリニックでは、1日に対応できる人数が限られる中、高齢者や重症化リスクのある人を最優先で診察するため、無症状の人などを中心に受診希望者の8割から9割を断らざる得ないということです。鳥羽会長は「もうこれは医療崩壊だと思う」と強い危機感を示しました。

■独自の「陽性者登録センター」 医療機関の負担軽減に期待

八王子市保健所によると、7月中旬以降、市民から「病院の予約が取りづらい」という相談が急激に増えたということです。軽症であっても、とにかくコロナかどうか判定が欲しいと受診を希望する人が医療機関に殺到する中、限られた医療を必要な人に届けるためのシステム構築が急務となっていました。

こうした中、今月9日、運用が始まったのが「八王子市新型コロナ登録センター」です。このセンターは、八王子市が独自で開設したもので、市民が自ら入手した医療用検査キットなどで検査し、陽性が判明した場合、医療機関を受診せず、オンラインで市に報告できるというものです。報告された症状や検査キットの写真などをもとに、保健所の医師が診断し、発生届の提出を行います。

東京都が、同様のオンライン報告の仕組みを今月3日から行っていますが、対象は20代から30代と限定的です。

そこで八王子市は、独自の登録センターの対象を、都の対象から外れている64歳以下で市内在住の基礎疾患のない軽症者などと決めました。より多くの対象者に利用してもらうことで、医療機関に患者が殺到し、検査が受けられないという事態の緩和につなげたい考えです。

八王子市保健所の渡邉洋子所長は「医療機関のひっ迫を軽減させ、陽性者の方も必要な行政支援をスピーディーに活用してもらえる」と新たな施策の意図を説明しました。

■負担軽減へ 議論される“5類相当”への引き下げ

医療機関の負担軽減へ向け、いま注目されているのが、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けです。新型コロナは1~5類とは別の「新型インフルエンザ等感染症」に位置づけられ、措置の内容は政府が選ぶことができますが、今は、厳しい対応が求められる「2類相当」としています。この分類を季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行すべきだとする意見があるのです。

現在の「2類相当」では、感染者の全数報告が求められているため、感染者の大幅な増加で、その作業が医療機関や保健所の負担となっています。

八王子市医師会の鳥羽会長は「希望している人全員が検査を受けられていない現状で、すでに全数把握はできていないのではないか」と指摘し、「5類への引き下げが必要な時期に来ている」という見解を示しました。「5類」に移行して、現在の感染者の大多数にあたる軽症者や無症状者の把握・登録の作業をやめ、限られた医療資源を重症化リスクの高い人などに重点的に振り分けるべきだと指摘しました。

医療機関の負担軽減などに向け、注目を集めている「5類」への見直し問題。政府は現在の第7波収束後にも、見直しに向けた議論を行うことも検討しているということです。