現場の負担軽減へ 八王子市が独自の「陽性者登録センター」開設
10日、東京では新たに3万4243人が新型コロナウイルスへの感染が確認されました。医療現場がひっ迫する中、少しでも現場の負担を軽減しようと、東京・八王子市が独自の取り組みを始めています。一方、月内にも解禁される方向の医療用に承認された抗原検査キットのインターネット販売。生産現場では、対応に追われていました。
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東京・八王子市にある保健所。
電話対応する職員
「食欲なんかも、大丈夫ですかね?」
電話対応する職員
「だいぶ力がついてきましたね。あとは夜間だけ、酸素吸入なさっています?」
患者などからの相談に職員が対応する中、相次いで電話が鳴っていました。さらに、電話を切ったとたん、すぐに電話が鳴り、中には、立ったまま電話をとる職員がいるなど、対応に追われていました。
新型コロナウイルス“第7波”のピークとなる中、再び保健所や医療現場はひっ迫しています。八王子市では1日の新規感染者数が“第6波”の時と比べ、倍近い1200人を超える日もあるといいます。
一部の病院の発熱外来に患者が集中しないよう、八王子市では地域の診療所などの8割が積極的にコロナ患者の診察をしています。これは全国的にみても高い割合です。
しかし、それでも病院には行列ができていました。市の医師会からは、次のような声があがりました。
八王子市医師会 鳥羽正浩会長
「無症状者や単なる濃厚接触者は、なるべくお断り。まずお断りするようにして。僕はもう医療崩壊だと思ってます」
「医療崩壊」と言うまで、ひっ迫している理由は――
八王子市保健所 健康危機管理担当 片岡幸子課長
「軽症な方もとにかくコロナの判定が欲しい。受診したいっていう希望者が増えまして、朝には予約がもういっぱいになってしまうという悲鳴があがりまして」
症状が軽い患者でも新型コロナになったか知るため、医療機関を受診する人が多く、本来、最優先すべき重症化リスクが高い患者の受診を断らないといけない状況に陥っているというのです。
そこで、八王子市が新たに独自の取り組みとして始めたのが「陽性者登録センター」です。このセンターでは、患者自らが入手した検査キットなどで陽性の判定が出ても、無症状や軽症の場合、医療機関を受診せず、患者自身にオンラインで申請してもらいます。(64歳以下で市内在住の基礎疾患のない軽症者など)
もし医療機関への受診が必要な場合は、保健所が調整を行うということです。
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“医療崩壊“を防ごうと、自治体が対策をとる中、国にも新たな動きがありました。医療用に承認された抗原検査キットのインターネット販売が、月内にも解禁される方向です。
さらなる需要が見込まれるキットですが、生産現場からは不安の声があがっていました。
抗原検査キット製造会社「タウンズ」野中雅貴代表取締役社長
「一気に(生産数を)大幅に増やすのは、なかなか難しい面もありますので」
次から次へと組み立てられていく抗原検査キットのプレート。その数は1時間で9000個にものぼるといいます。
本来なら10日は、工場は休みになる日ですが、従業員は休み返上で働いていました。感染者が爆発的に増えたため、フル稼働しても、生産はギリギリです。現在も、昼間の従業員を30人ほど募集しています。
こうした中、不安を感じていたのは、今後、解禁される方向の抗原検査キットのネット販売です。
抗原検査キット製造会社「タウンズ」野中雅貴代表取締役社長
「(注文数が)2倍、3倍になってしまった場合、なかなか対応しきるのは難しい」
それでも――
抗原検査キット製造会社「タウンズ」野中雅貴代表取締役社長
「これまでになく私たちの製品が社会に求められていると感じているので、ここは全社一丸となって、この局面を乗り切っていきたい」
行政や企業では、難局を乗り切る努力が続けられています。