ブランド牛も養殖ハマチ・ブリも青汁もおいしく! 国産オリーブの搾りかすで新たな循環型農業を
日本のオリーブ栽培発祥の地、香川県。油を搾った後のオリーブの果実を畜産物の飼料に、枝や葉を加工して養殖ハマチ・ブリの餌に「変身」させ、廃棄物を出さない新しい循環型農業の取り組みを取材しました。
■全国3カ所に植えた苗が…香川県がオリーブの名産地になったワケ
地中海とよく似た温暖な気候に恵まれた香川・小豆島。約110年前、日本のオリーブ栽培は“国策産業”として、この地で始まりました。日本オリーブ協会によると、日本でのオリーブ栽培は1908年(明治41年)に本格化しました。
日露戦争に勝利した日本政府は、北方漁場の海産物を保存する方法として、オリーブオイルを使ったオイル漬けに着目しました。国内でオリーブオイルを生産するために、当時の農商務省がアメリカ産オリーブの試験栽培を開始。
栽培地として指定したのは香川・三重・鹿児島の3県だったものの、香川県の小豆島のみが栽培に成功したということです。瀬戸内海の気候がオリーブ栽培に適していたと考えられています。現在も香川県は9割以上のシェアを誇る国産オリーブの最大産地。オリーブは香川県の「県の花」と「県の木」にもなっています。
■塩田の跡地から国際コンテストの金賞に輝く高品質オリーブ園に成長
約110年の歴史を持つ香川県のオリーブ栽培。SDGsが注目される今、廃棄物を出さないための新たな取り組みに挑戦するのが、瀬戸内海に面した坂出市の「瀬戸内オリーブ園」です。
前身の(株)瀬戸内オリーブ創業は2011年。土地のオーナーの松浦玲子さんと、香川出身の東京理科大学名誉教授・大林成行さん、そして、現在の瀬戸内オリーブ園代表取締役の蓮井平記さんの3人が、経験ゼロからオリーブ園づくりを始めました。
松浦さんが、香川県が特産品としてオリーブの生産に力を入れる動きを知って、親の代に使った塩田の土地をオリーブ園に変えようと思ったことがきっかけでした。
海辺に広がる約6ヘクタールの荒れ地に、土地の造成や土壌の入れ替えや給排水設備の導入などを行い、10年の歳月をかけて17品種3000本の木が育つオリーブ園に成長。国際的なオリーブオイルコンテストで2年連続金賞に輝くなど高い品質で知られるようになりました。
■7割が産業廃棄物に…搾りかすの新たな活用法を開発
オリーブオイル生産の悩みの種は、大量の「搾りかす」だといいます。蓮井さんによると、100キロの実から油を搾ると、70キロほどが搾りかすとして残り、そのままでは産業廃棄物として処理することになってしまいます。
「大量の搾りかすをそのまま捨てるのは、あまりにも環境に悪いし、コストもかかる。私たちは、資源を使い切るという経営理念のもと、産業廃棄物を出さないという取り組みをはじめた。」と話す蓮井さん。
瀬戸内オリーブ園では、オリーブの搾りかすを脱水・乾燥させて、牛の飼料に加工する技術を開発。香川県のブランド牛「オリーブ牛」などの畜産物の飼育に活用されています。また、剪定した大量のオリーブの葉や枝も、養殖するハマチ・ブリなどの飼料に加工する技術を開発。肉質が改善し、さっぱり食べられると評判だといいます。
それでも、瀬戸内オリーブ園で出るオリーブの葉や枝は年間40トン近く。これまで、飼料などに活用しきれない分は焼却されていて、CO2の発生が環境に及ぼす悪影響が気になっていたといいます。
そこで蓮井さんは、オリーブの葉に多く含まれるポリフェノール成分オレウロペインに注目し、今年2月に葉を活用した「瀬戸内オリーブ青汁」を生み出しました。
蓮井さんは「オリーブをまるごと活用し、できるだけ産業廃棄物を出さないという新しいSDGs農園づくりを、瀬戸内オリーブ園が目指す『日本人がつくる日本人のためのオリーブオイル』という目標につなげたい」と、抱負を語りました。