過酷労働「ブラックバイト」…その実態とは
過酷な労働を強いられるアルバイト、いわゆるブラックバイトについて、厚生労働省が学生1000人を対象に初めて行った調査の結果が9日、公表された。労働条件を説明せずに雇い、適切な賃金を払わないなどの実態が浮き彫りとなっている。
学生にアルバイトで困ったことを聞いてみると-
飲食店でバイトする学生「応募要項に書いてあった日数が違って全然シフトに入れない」「うちは給与明細が出ないので、お願いしても出てこない」
コンビニでバイトしていた学生「『この日に入って』と無理やり言われて、『その日授業なんで』と言うと、次行った時に険悪だったり」「断ると気まずくなるから、ギリギリまで授業遅刻するまでバイトしてという日もあったり」
調査では、実に6割の学生がアルバイトで何らかのトラブルがあったと回答。法令違反のおそれがあるトラブルで多かったのは、「準備や片付けの時間に賃金が支払われなかった」、「労働時間が6時間を超えても休憩時間がなかった」というものだった。
また、今回の調査でわかった深刻な問題が、労働基準法で義務づけられている労働条件の通知だ。
調査では、約6割が労働条件通知書などを受け取っていないと回答。口頭での説明もなかったという例も約2割にのぼり、契約時に労働条件が提示されないという、違法な学生バイトの労働環境が浮き彫りになった。
今年9月には、大手飲食チェーンでアルバイトをしていた学生が未払い賃金の支払いなどを求め会社側との交渉を申し入れた。店長から勤務を強制され、4か月間、1日12時間程度休みなしで働き、十分な賃金も支払われず、休みたいと申し出ると何度も叱責(しっせき)されたという。
学生が録音した女性店長との会話-
店長「今からおまえんち行くから待ってろよ。殺してやっから、殺されてえんだろ、おまえ」
9月、未払い賃金の支払い等を求める大学生の元アルバイトは会見で、「(辞めたいと店長に伝えると)『死んで償え』と言われたので、すごく怖くて辞められなかったです」と話した。
フランチャイズの本部は、「4か月連続勤務を強いられ、1日12時間働いていた事実は確認できなかった」とした上で、店長の発言については、学生の勤務態度が悪く、それを注意するためだったとしている。
こうした中、大学も対策に乗り出した。
先月29日、関東学院大学(横浜市)はブラックバイトユニオンの坂倉昇平事務局長を講師にブラックバイト対策の講義を行った。250人の大教室は満員となり、関心の高さがうかがえた。
坂倉事務局長「『辞められないんですよ』という相談が大学生、高校生、すごくたくさん来るんですよね」「法律上は2週間前に『辞めます』と伝えれば、辞めても大丈夫、問題ない」「後で撤回されたりしないように、メールや書面で送った方が良いと思います」
さらにブラックバイトへの対処法を説明した。
坂倉事務局長「まず自分で働いた時間をメモしておくということがすごく重要です」
【ブラックバイトへの対処法】
(1)労働時間を分単位でメモをすることが未払い賃金の支払いを求める際、実働時間を証明するのに必要になる
(2)契約時に給与や休憩などの労働条件を書面で受け取る
(3)商品の買い取りを強制されたら、レシートなどを残しておく
(4)上司や店長の悪質な言動はスマホなどで録音し証拠を残すなどの対処することが必要
講義を聴いた学生「こういう講義をもっと早く自分の頭に入れて、その上で働けていたら、また違った方向にあったのかなと感じました」
一方、きつくても辞められない切実な事情を訴える学生も。
大学生「生活費を自分で払っているので、辞めた期間、お金が入ってこないと、家族の方にも迷惑がかかってしまうというのもあるので、なるべく無理をしてでも働かないと生活できない」
ブラックバイトに学生たちが巻き込まれる背景には何があるのか。
ブラックバイトユニオン・渡辺寛人代表は、「店長1人が正社員、塾長1人が正社員という形で、ほかの労働者がみんなアルバイト。そういうお店が多い」「(アルバイトは)職場の中でメーンの労働力になっている。一方で低処遇なんだけど、責任を持って働いてもらわないといけない」などが背景にあると話した。
労働基準局・労働条件確保改善対策室・水畑順作室長「少なからず学生の学業に支障があると意見があることから、法の順守はもちろんのこと、(企業側に)学生は学業優先ということの意識を持っていただきたい」
厚労省は、アルバイトが多い業界の団体に「法令順守」や「学業優先」を要請するほか、学生からメールでの相談も受け付けるという。