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子宮頸がんワクチン 名古屋市が独自調査

2015年12月14日 22:18
子宮頸がんワクチン 名古屋市が独自調査

 薬で予防できるがんといわれた「子宮頸がん」。そのワクチンをめぐっては、接種後さまざまな健康被害が報告され、大きな問題となった。そんな中、14日公表された愛知県名古屋市の独自調査結果。ワクチンとの因果関係は、明らかになったのだろうか。

 頻繁に起こる、激しいけいれん。自分の体をコントロールできない日々が続いていた。名古屋市に住む、高橋香織さん(仮名・当時18)。子宮頸がん予防ワクチンを接種して、1年ほどたったある日。突然異変が起きた。

 母・千尋さん(仮名)「普通に高校の部活の試合で、普通に歩いていたところ、いきなり歩けなくなって、痛みで」

 身体に起こり始めたさまざまな異変。手足のしびれに、激しい体の痛み、記憶障害、まひ。高校生だった香織さんは、車いすでの生活を余儀なくされた。

 香織さんはここ半年、けいれんこそ落ち着いているものの、身体の不調は、続いているという。

 香織さん(仮名・19)「体調的には気持ち悪くて、ずっと。頭痛くて、何もできないことが多い。左半身が動かないんですけど、それがちょっと、一番つらいかな」

 今も続く「左半身のまひ」。足は、特注の装具のおかげで、歩けるようにはなったが、生活が改善したわけではない。

 母・千尋さん(仮名)「今も(まひの影響で)おしっことか、管がないと自力で出せない。(ワクチン接種は)本当に後悔しても後悔しきれない」

 この日、香織さんは20分ほどの取材を終えると、すぐに横になった。

 「がんが予防できます」。そういって2年前、国によって推奨された、子宮頸がん予防ワクチン。しかし、ワクチンを接種した少女たちから、体の不調が相次いで報告され、国はわずか2か月後、積極的な接種をすすめることを中止した。

 あれから2年半。今も、明確な治療法はないまま、「ワクチンとの因果関係」も明らかになっていない。

 そんな中、14日、公表されたのが、名古屋市が独自におこなった調査の結果。7万人を対象に、ワクチン接種により副反応があったのか、因果関係を調べるためにおこなわれたもの。約3万800人から回答があった。その結果は。

 名古屋市・河村たかし市長「私もいささかびっくりしました」

 体のだるさや痛みなど24項目の症状について、接種した人、しなかった人両方に質問をした結果、「身体が自分の意思に反して動く」「手や足に力が入らない」「月経量の異常」「物覚えが悪くなった」の4項目でワクチン接種者の方が割合が高くなった。

 しかし、年齢による補正をおこないデータを整理したところ、ワクチン接種者の方が割合が高く出る症状の項目は「なし」。全体的に見ると、ワクチンを打ったかどうかでは、大きな差はなかったと結論づけた。

 この結果に対して、子宮頸がんワクチンに詳しい医師は、調査結果の「出し方」についての問題を指摘する。

 東京医科大学医学総合研究所所長・西岡久寿樹医師「子宮頸がんワクチン(を打った後の症状)は1つの症状ではない。同時にさまざまな症状が重層化して出てくる、そこを全然やっていない。症状の重なりがどの程度あるのかぐらいは、最低限まとめるべき」

 名古屋市は今回の結果を、「補正前の数字では一定の特徴が出たが、補正すると、明確な差はなかった」「あくまで統計的な分析。因果関係は慎重に判断すべき」としている。

 今も左半身のまひなどに苦しむ高橋香織さん。香織さんの夢は、看護師だが、まひがあるままの今、その夢を現実にすることはできない。

 香織さん「内心はむっちゃむかつきます。(国は因果関係を)認めたくないのか。大人がやったことだし、こうなった現状にもうちょっと責任を持ってほしい」