地域支える消防団…求められる女性のチカラ
キーワードでニュースを読み解く「every.キーワード」。7日のテーマは「消防団に女性の力」。日本テレビ・小栗泉解説委員が読み解く。
大きな災害では消防士だけではなく、消防団の力が欠かせない。こうした中、いま、消防団に女性の力が求められている。
■消防士と消防団員の違いって?
消防士は消防署の職員で、24時間態勢で火事などの災害に備えている。一方、消防団員は通常、学生や会社員など本業を別に持っていて、火災などで呼ばれたら現場に出向く。
■どうすれば消防団員になれる?
一般的に18歳以上で、消防団のある自治体に住んでいるか通勤などしていれば、なることができる。基本的に面接などを受けて入団することになる。そして、団員になれば全国平均で年額2万6000円ほどの報酬も出る。ただ、2015年の消防団員数は全国で約86万人で、10年前と比べて5万人近く減っている。
■注目される女性消防団員
こうした中、地域の守り手として女性の存在が注目されていて、呼びかけが活発に行われている。そのため、女性消防団員は全体的な人数は少ないものの、約1万4000人から2万3000人に増加している。
■女性ならではの活動はある?
今月3日、神奈川県横浜市・西消防団の訓練を取材した。ここでは女性消防団員が3割以上を占めている。この日、行われたのは、男性の少ない日中に災害が起きた場合、女性たちでどこまでできるかを試す訓練。震度6強の地震が発生し、デイサービスなどを行う福祉施設から高齢者を救助するというものだ。
8年前に入団した濱下康子さん(43)。パンフレットなどのデザインを手がけるフリーのデザイナーで、普段は自宅で仕事をしている。ひとたび災害が発生して消防署から出動要請のメールが届けば、可能な限り現場に駆けつける。
■女性団員の重要性
濱下さんは「災害は男性の帰宅を待ってくれないんです。女性ができることを、できる限り、どんどん増やしていくことができればそれだけ災害に対応する力はつけられますので、地域防災力向上のためにも女性の入団は急務だと思います」と話す。
■女性団員の強みとは
この消防団のリーダーの一人である半田伊津美分団長(64)は「やっぱり気づかいでしょうね。女性特有の気づかい。周りにお年寄りがいらっしゃれば、お年寄りに気をつかっていられる。(男性とは)それがやっぱり違うと思いますね」と話す。
■女性団員をどう増やす?
そんな中、神奈川県では先月6日、女性消防団員をどう増やしていけばいいのか、県内の女性消防団員が集まってワークショップが開かれた。この中では女性団員を増やすための、意外な人の消防団への加入が紹介された。
それは、乳酸菌飲料・ヤクルトの販売員。訪問販売をしているため、地域の住民と顔の見える関係ができているので、消防団への入団を呼びかけるとともに、災害時の住民への声かけ、消防団への連絡を依頼しているという。
また、保育園の保育士も消防団員として参加している。万が一、保育園の近くで火事が発生した場合には、すぐに出動できるような態勢を取ってもらっているという。
それぞれの仕事や能力を生かしながら、無理のない範囲での活動なら参加もしやすくなる。
■できる範囲でやれることを
大きな災害が起きた時、大切になるのは地域での防災力だ。知識がなければ消火や救助活動は難しいが、まずは「できる範囲でやれること」をする。その意識が地域の防災力を高めることにつながるのではないだろうか。