相次ぐ豪雨災害「避難」へ新たな取り組みを
去年7月に起きた九州北部豪雨では、1時間に80ミリを超える猛烈な雨が数時間降り続き、福岡県朝倉市を流れる赤谷川などの中小河川が氾濫、30人を超える死者が出た。
しかし当時、朝倉市は、住民からの通報があるまで川の氾濫を覚知できず、事前に避難勧告を出すことができなかった。
国はのちに、当時の状況について、「避難勧告などが出されたタイミングでは、一部地域ですでに氾濫が発生しており、避難行動が困難であったと考えられる」と指摘している。
今回の九州北部豪雨のように、急激に水位が上昇する山あいの中小河川の氾濫から住民の命を守るためには、どうすれば良いのか?
国土交通省が進めたのは、「低コストな水位計」の開発。「水位計」は本来、およそ2000万円のコストがかかるため、都道府県が管理する中小河川への設置が進まず、九州北部豪雨の被災地、福岡県朝倉市では、すべての中小河川に水位計が設置されていなかった。
そこで国土交通省は、役割を洪水時のみに特化した簡易型の水位計を開発、コストを100万円程度に抑え、中小河川を管理する都道府県などに設置を促す取り組みを始めている。
しかし、集中豪雨の際に、1時間に2から3メートル以上と、水位が急激に上昇する中小河川において、水位が上昇してから避難を開始するのでは、手遅れになる恐れもある。
そこで、今後より一層の活用が期待されているのが、気象庁がホームページで公開している『洪水警報の危険度マップ』。この気象庁の『危険度マップ』は、雨量の予測などに基づいて3時間先までの川の危険度をリアルタイムで予想するもので、山あいの中小河川も含め、全国のおよそ2万の河川が網羅されている。
実は、九州北部豪雨が起きた当時、「川が氾濫した」と通報があったおよそ1時間前から、危険度マップは「避難開始」を表す『うす紫』を示していた。気象庁の『危険度マップ』は、九州北部豪雨の前日から運用が始まったため、当時はまだ十分にマップの見方などが周知されておらず、活用に至らなかったが、今後の豪雨時への活用が求められている。
国は、市町村が急激に水位が上昇する地域に避難情報を出すためには、「水位計や監視カメラ等の設置」と、雨量の予測などに基づく、「洪水警報の危険度マップ」を合わせて使い、水位が急上昇する前に危険を把握することが有効だとしている。
地球温暖化の影響で近年、日本列島でも集中豪雨が相次ぐ中、住民の命を守るための、新たな取り組みが、全国の自治体に求められている。