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なぜエスカレーターを歩くとダメなのか? “つらい思い”をする人に心を寄せて あの条例の効果は…名古屋市でも規制の動き【#みんなのギモン】

2023年9月8日 21:27
なぜエスカレーターを歩くとダメなのか? “つらい思い”をする人に心を寄せて  あの条例の効果は…名古屋市でも規制の動き【#みんなのギモン】

エスカレーターでは「片側を空けて乗る」ことが当然のようになっています。東京なら右側を空け、まるで“追い越し車線”のようにして歩く人も多くいます。かつてはそれが「思いやり」だったことも…いまはどうなっているのでしょうか。

7日、渋谷の駅へつながるエスカレーターを実際に見てみました。この場所は常に混み合っています。立ち止まって乗る人が、進行方向左側に並んでいます。空いている“右側”を歩いている人の姿が多く見られます。「この快速電車を逃すと次は10分後」「待ち合わせに遅れる」など、先を急ぐ人の気持ちもわかりますが、見ていて「危ない」と思う場面もありました。

多いのがスマホを見ながら歩く人です。右手に傘、左手に荷物を持ち両手がふさがっているのに歩く人、両手をポケットに突っ込んだまま歩く人の姿もありました。つまずいてもとっさに手すりをつかめないので危険です。

SNSでは次のような投稿も目にします。

●なぜ歩くとダメ?
●“規制”の動きも

以上のポイントを中心に詳しく解説します。

■エスカレーター なぜ歩いてはいけないのか?

まず、なぜ歩くとダメなのか、そのワケを見ていきます。

日本エレベーター協会や鉄道各社はポスターなどで「エスカレーターの上で歩くのは危険なので、エスカレーターの上では立ち止まって」と呼びかけています。

なぜなら、立っている人は無防備の状態です。後ろから歩いてきた人がぶつかった場合、とっさの反応ができず転倒する可能性があります。また、後ろから歩いてきた人が手荷物にぶつかった場合、手荷物が転がり落ちて、前後の人にぶつかり転倒する可能性があります。

エスカレーターで起きている事故の件数を調べてみました。2018年からの2年間で起きた1550件の事故のうち608件が転倒事故でした。報告があっただけでもこの件数です。場所は駅などの交通機関が最も多く、ついでショッピングセンターでした。

■エスカレーターで“つらい思い”をしている人に心を寄せて…

実際に、みんながエスカレーターを歩くことで、つらい思いをしている人がいます。

◇藤沢市の高校に通う林さん(高3)は、エスカレーターの進行方向右側に立っています。障害で体の左側にまひがあるため、左手で手すりをつかめません。右手でつかむ必要があるので、右側に立たなければなりません。ところが、右側を歩く人が後ろからやってきて「何で行かないんだよ」と文句を言われたり、舌打ちをされたりするようなことも何度もあるそうです。毎日通学でエスカレーターを利用し、何度も嫌な思いをしているといいます。

◇視覚障害で目が見えない兵庫県の油谷英俊さんは、駅のエスカレーターを利用する際、ガイドヘルパー(介助者)の声が頼りです。ガイドヘルパーは「ここでエスカレーターが終わりですよ」といった声で合図もしますが、エスカレーターを歩く人がいると、革靴などのカンカンカンという大きな音で、ガイドヘルパーさんの声が聞こえにくくなるといいます。目が見えない中で「介助者の声は私にとって命綱なんです」と話していました。

◇子どもやお年寄りがひとりでエスカレーターに乗るのが心配なとき、手をつないで並んで乗りたいときがあります。しかし歩く人がいると、並んで乗れないことがあります。

このような事情のある方は大多数ではないかもしれませんが、みんなで思いやりを持ち寄ってエスカレーターを利用したいものです。

■条例には“一定の効果”…10月から名古屋でも施行へ

筑波大学の研究チームがJR大宮駅の朝の通勤時間帯を2021年10月に撮影した映像には「ほぼ全員がエスカレーターを歩いてのぼっていく」という、怖いぐらいの光景が映っていました。誰かがぶつかると危ない状況になりかねない状態です。

こうした状況もあり、埼玉県は全国に先駆けて2021年10月、エスカレーターでは立ち止まることを義務づける条例を施行しました。「左右とも立ち止まってください」と呼びかけました。罰則はなく努力義務です。

では、この条例の効果はどうだったのか、筑波大の研究チームが調べました。JR大宮駅の朝のエスカレーターを歩く人の割合について、条例前は約6割だったところ、条例施行から3か月後には約4割に減りました。しかしその1年後、再び6割まで戻ってしまいました。

条例のことを人々は気にとめているのか、実際に埼玉県の駅を利用している人に話を聞いてきました。

エスカレーターを歩くことがある人
「条例で決まっていることは知っています。昔からの慣習というか、急いでいたらどうしてもね」

エスカレーターをほとんど歩かない人
「いまは条例が変わってますので、ほとんど(歩くことは)ないですね」

――杖(つえ)をついてらっしゃいますが、怖いなと思うときありますか?

エスカレーターを歩かない人
「ありますね。特に下りの時なんか、後ろから走るようにして降りてきて、体にふれることがあるんです。そうするとフラフラとするので、つかまってはいますけど、危ないなって気がしますね」

駅の利用者40人に聞いたところ、条例があることを知っていた人は29人と、約4分の3なので、みなさんご存じです。そのうち「そもそも歩かない」人が10人、「条例ができて意識が変わった」人が14人いました。条例は一定の効果があると感じました。

10月からは名古屋市でも、駅や商業施設のエスカレーターで歩かずに立ち止まって利用することを義務づける条例を施行します。

   ◇

エスカレーターを歩く人の事情はいろいろあると思いますが、歩くことの危険、そして歩く人がいるために困っている人もいます。どうかお心遣いをお願いしたいです。

(2023年9月8日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)

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お寄せいただいた情報をもとに日本テレビ報道局が調査・取材します。
#みんなのギモン

https://www.ntv.co.jp/provideinformation/houdou.html

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