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博多駅前“陥没”で巨大な穴…地下で何が?

2016年11月9日 3:45
博多駅前“陥没”で巨大な穴…地下で何が?

 8日朝、福岡市・博多駅前の大通りで大規模な陥没が起き、巨大な穴ができた。穴は縦横30メートルまで拡大し、道路を寸断した。今も一部の地域で避難勧告が出されており、影響が続いている。

 福岡市博多区の現場では、陥没事故の影響で、発生から13時間以上たった8日午後6時半頃もまだ交通規制が続き、警察が交通整理を行っていた。道路脇では、復旧作業にあたる工事車両が列をなしている。

 町の中心部で発生した大規模な陥没事故。最初に道路が崩れ始めたのは、8日の午前5時すぎだった。

 発生から1時間あまりがたった8日午前6時半頃の映像では、2つの穴が道路の両端に空いている。そして向かい側の信号機が倒れ、手前にあった信号機も一瞬で吸い込まれていった。発生から約2時間後の午前7時すぎには、中央部分が崩れ落ち、巨大な1つの穴となった。陥没は、縦横約30メートル、深さ15メートルまで拡大。土砂が流れ落ち、崩落が続く様子も。

 目撃者「どんどん(穴が)大きくなっていって、地面が揺れる感じとか、怖かった。どんどんアスファルトが地中に入っていくような感じ」

 現場は、JR博多駅前から大通りを西に200メートルほどの商業ビルなどが多く立ち並ぶエリア。発生後、現場に駆けつけると、厳戒態勢がしかれ、警察官による拡声機の声が響いた。

 ガス管が破裂してガス漏れが発生し、交通規制も拡大。周囲は一時、最大で東西に150メートル、南北に350メートルの範囲で立ち入りが制限された。緊急車両も現場に直接行けず、迂回(うかい)して急行。一部の地域には、避難勧告も発令された。

 会社員「会社から避難命令が出て、じゃあどうしようと、会社の中でいろいろ連絡をとり合っている。パソコンだけ持って出て、今、どうしようかという状況」

 そして“爆発”も目撃されていた。午前5時すぎ、その瞬間をとらえた映像では、地面の穴から、一瞬、オレンジ色の光が吹き出す。

 爆発の瞬間を撮影した男性「びっくりして、焦げのにおいとかもすごくて、警察官も来て『今すぐ避難してくれ』と」

 発生の約5時間後の午前10時頃、福岡市役所で福岡市交通局が会見を開いた。現場の下で行っていた地下鉄の工事が、事故の原因だという。

 地下の設備には、深刻な被害が。コンビニが入るビルは基礎部分がむきだしになり、入り口は崖のようになっていた。下水道管から水が流れ出し、水道管や電気ケーブルも寸断されている。

 周辺では、停電も発生した。JR西日本によると、山陽新幹線17本が遅れ、2900人に影響が出たという。

 現場の復旧は、困難を極めている。穴に流れ込み続ける水は、次第に水位を増した。地盤の安定を図る応急処置として、セメントと土砂を混ぜたものを投入。また、停電した先に、新たな電気の供給ルートをつくるための作業も行われていた。

 5つの車線と歩道を一気に飲み込んだ陥没。当時この地下では、去年、開業10年を迎えた市営地下鉄「七隈線」を延ばす工事が行われていた。現在、橋本駅から天神南駅が結ばれていた地下鉄を、博多駅まで1.4キロにわたって伸ばそうというもの。工事の様子を撮影した去年の映像には、少しずつ掘り進めては表面にコンクリートを吹きかけ、補強するという方法で行われた工事の様子が。

 そして今回、「はかた駅前通り」と呼ばれる道路の地下約25メートルで、トンネルを広げる掘削作業中に大規模な陥没が起きた。では、なぜ陥没は起きたのか。

 福岡市の会見「2メートル前後の“遮水層”を、ある意味突き破った可能性がある」

 地下約25メートルで行われていた掘削作業。市によると、幅約9メートル、高さ5メートルのトンネルの上には、2メートルほどの水を通さない「粘土層」がある。しかし、何らかの理由で「粘土層」の間から地下水が流れ込んだとみられるという。

 そして、8日午前5時頃、作業員がトンネルの上の部分から水が流れ込むのを確認し、工事を中断。その後、陥没したとみられている。

 先月、今回陥没した現場の空洞調査を行っていたジオ・サーチの冨田洋社長は、工事中のミスが陥没を招いたと指摘した。空洞調査は、車両の後ろに設置された特殊なセンサーからマイクロ波と呼ばれる電波を出し、地下の状態を調べるというもの。

 ジオ・サーチ、冨田洋社長「10月に(今回の現場を)調査して 空洞はなかった。空洞ができていれば我々は絶対に見つけますから。地下鉄の工事中のミスですよ、何らかのミスなんです」

 さらに、ビルに挟まれた今回の陥没現場は、55年前、田んぼに囲まれていた。地盤工学に詳しい九州大学の安福規之教授は、現場の地盤についてこう話す。

 九州大学、安福規之教授「(過去に)河川から氾濫してきた土砂とかが堆積していることもあるのではないかと言われています」

 「七隈線」では過去にも陥没が起きていた。1回目は福岡市中央区で2000年6月に発生。さらに2014年10月には、今回と同じ七隈線を延ばすための掘削工事中に陥没。この時は、幅約5メートル、長さ約5メートル、深さ約4メートルの穴が…。

 大惨事になりかねない道路の陥没。他の都市でも起きる危険性はないのか。

 ジオ・サーチ、冨田洋社長「〈Q:他の都市で陥没は起きる?〉(地下の)インフラが進化した所、要は大都市ですね。大阪市・名古屋・東京都・今回の福岡市、仙台市もそうですけど。そういう所は必ず(地下に)空洞はできる。陥没の危険性が非常に高いということです」

 地下にある施設の周りを取り囲む土砂は、地下水の流れや地震の揺れなどで沈んだりするため、空洞ができ、陥没しやすくなるという。

 福岡市で起きた大規模陥没に対し、8日午後9時頃、国土交通省が福岡市交通局に対して警告書を出し、原因の究明と再発防止の徹底を求めた。

 陥没現場では、夜を徹して復旧作業が続けられる。