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“進化”続ける本の世界 驚きのコラボも

2017年1月19日 12:49
“進化”続ける本の世界 驚きのコラボも

 今回のキーワードは「注目の10冊」。18日、2017年の「本屋大賞」ノミネート作品10冊が発表された。


■話題作を生み出す「本屋大賞」

 この「本屋大賞」は、本屋さんで働く書店員が自分で読んで一番オススメしたい本を選ぶ賞だ。564人の書店員が投票し、この10冊が決まったのだが、この中からさらに店員が投票し、4月中旬に大賞が決まる。“本のプロ”が選ぶわけなので気になるが、一方で今は本が売れなくなっているともいわれている。

 スマートフォンなどの普及で読書の時間が減ったことなどから、本の販売額は1996年をピークに減少傾向にあり、この20年間で約32%減っている。こうした中、“売り場からベストセラーを生み出そう”と書店員たちが企画してはじまったのが「本屋大賞」だ。

 これまで、大賞を受賞した作品をみると、湊かなえさんの「告白」が売り上げ累計340万部、リリー・フランキーさんの「東京タワー―オカンとボクと、時々、オトン」が売り上げ累計240万部など軒並みベストセラーになった。

 また、大賞を受賞した13作品のうち「博士の愛した数式」や「夜のピクニック」、「舟を編む」など8作品が映画化されている。「海賊とよばれた男」は、明治から昭和にかけて石油事業にまい進した男の生涯を描いた物語で今映画が公開されているが、正月には安倍首相も鑑賞した。

 こうしてみると“出版不況”が叫ばれる中「本屋大賞」は実に多くの話題作を生み出してきたといえる。しかし「本屋大賞」以外にも本をめぐる様々な工夫が行われている。


■本の中に出てくる曲に注目

 たとえば、今回の本屋大賞にもノミネートされた恩田陸さんの小説「蜜蜂と遠雷」。これはピアノの国際コンクールを舞台にした物語だが、作中に出てくる曲をウェブサイトで聞ける取り組みを行っている。

 また、今月都内では、作家・平野啓一郎さんの小説「マチネの終わりに」にちなんだコンサートが行われた。「マチネの終わりに」は、去年発売された恋愛小説だが、重要な場面で音楽が出てくることから、読者から「音楽を聴いてみたい」という声があり、コンサートが実現したという。

 こうした本と音楽をコラボレーションさせる取り組みについて、「蜜蜂と遠雷」を出版した幻冬舎plus編集部の担当者は、「音を聴くと本の感動を増幅できる。一度読んだ人も読み返して楽しんでもらいたい」と話している。


■装丁やブックカバーの工夫も

 さらに、大手出版社が出している夏目漱石の「こころ」や森鴎外の「舞姫」など名作の装丁だが、手ぬぐいをイメージした和柄のデザインになっている。

 そして、ある本屋さんでかけてくれるブックカバーには特別な想いがこめられている。岩手県大槌町にある書店のブックカバーは、被災前の町の地図になっている。「以前の町の記憶を伝えたい」と作ったそうで、お客さんの中には本を手にして「うちはこの辺にあったわ」と懐かしむ人もいるということだ。


■「1冊の向こう側」

 被災地の本屋さんのカバーのように私たちが手にとる本には作家さんや編集者、書店員など色々な人の想いがつまっている。1冊の本の向こう側にあるそうした想いを想像しながら、本の世界を楽しむのもよいだろう。