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「いじめ解消」に初の定義、3か月を目安へ

2017年1月30日 19:10
「いじめ解消」に初の定義、3か月を目安へ

 先週、文部科学省は小中高校などの学校や自治体がいじめにどう対応すべきかを示した「いじめ防止基本方針」の改定案を発表した。どのような部分が見直されているのか。具体例を紹介しながら解説する。


■「いじめ解消」定義の見直し

 今回の案は、今年度中の改定を目指している段階だが、もっとも大きなポイントは「どうなればいじめがなくなったと判断するのか」という条件を定めたことだ。以下の2つを満たすことが条件だとしている。

(1)いじめが止まっている状態が継続(3か月が目安)
(2)被害者が心身の苦痛を感じていないこと

 なぜ、こうした条件を定めたのか。きっかけの1つは、去年青森県で中学2年生の女子生徒がいじめを訴えて自殺した出来事がある。学校側は自殺の2か月前、女子生徒からの相談を受け、加害生徒らに注意した。その時点で「いじめは解消した」と判断したが、実際はいじめが続いていて自殺に至ってしまった。学校などが安易に「いじめは解消した」と判断しないように、条件を定めた。

 3か月という期間は、あくまで目安としているが「3か月経過したら対応しなくて良いと誤解されかねない」といった意見もあり、まだ協議を続けるという。いじめは形を変えて続いたり、表面上は分からなかったりするので慎重に対応しなくてはいけない。


■“ふざけあい”も調査の対象に

 文部科学省の調査によれば、昨年度に確認された約22万件のいじめのうち、88.6%は「解消した」と学校側は判断している。でも、こうしたケースでも必要に応じて見極めが必要だと文科省は指摘している。

 今回の改定案ではもう1つ、何をいじめと判断するかという範囲も広げた。これまではいじめについて「叩かれたり蹴られたりする」「金品をたかられる」「仲間はずれ、集団による無視」などを挙げ、「ケンカは含まない」としていたが、ケンカやふざけあいでもいじめの有無を調べるとした。

 ケンカにみえても「実際はいじめ」という場合もある。いじめは、気づかないと対応できないため、見つける事が大切だ。その意味で今回の改定は一歩前進だとはいえるが、教育評論家の石川幸夫さんは「定義づけだけでは解決にならない。スクールカウンセラーの相談窓口を学校内におくなどして、学校や教育委員会ではない第三者が関わることが大切だ」と指摘する。


■「いじめのサイン」を見逃すな

 確かに、学校に限らず周りの大人も気にかけることが大切だ。そのためにも、家庭でもできることとして文科省は教育委員会を通じて「いじめのサイン発見シート」を各学校などに配布している。

 子どもの行動に関するチェック項目が並んでいるので、以下に一部を抜粋してみる。こうした項目にあてはまるものがある場合は注意して見守る必要があるということだ。

□携帯電話やメールの着信音におびえる
□学校の持ち物がなくなったり壊れたりしている
□表情が暗く、家族との会話が減った
□理由をいわないアザや傷がある


■「もしかして…」を感じたら

 今回のポイントは「もしかしてと思ったら…」。今のいじめ発見シートでは、子どもがいじめられていると少しでも感じた保護者や周りの大人は、以下を心がけてほしいとしている。

●問い詰めたり結論を急いだりしない
●「そんなのたいしたことではない」などと言わない
●「いじめられている人は悪くない」ということを伝える

 「もしかして…」と思ったら、いじめの「芽」や「兆候」も見逃さずに、早めに対処をする必要がある。