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浅草寺・五重塔に福島の技術「チタン瓦」

2017年7月8日 10:08
浅草寺・五重塔に福島の技術「チタン瓦」

 年間に3000万人もの人が訪れる国内有数の観光名所でもある東京・浅草の浅草寺。先月、その浅草寺にある五重塔で、屋根瓦のふき替え工事が完了した。そこに生かされたのは福島で生まれた技術だった。

 約40年前に再建された浅草寺の五重塔。老朽化に伴う屋根瓦のふき替え工事が完了し、関係者による報告会が開かれた。

 浅草寺・守山雄順執事長「今回の五重塔の修理で、土の瓦にする考え方もあったが、安全・安心を考えチタンの瓦にして、耐久性に優れ長く維持できる」

 寺の関係者も太鼓判を押す新しい屋根瓦。これを作った工場が、福島・喜多方市にある。浅草寺で採用されたのは、チタンという金属を使った瓦。チタン瓦が採用された最大の理由は、その軽さだ。

 一般的な土の瓦は、1枚の重さが2.5キログラム。これに対し、チタン瓦はわずか100グラムと、実に25分の1だ。屋根を軽くすることで地震による揺れを軽減でき、万が一、瓦が落下しても、観光客がケガをする危険も減らせる。

 浅草寺・守山雄順執事長「(浅草寺の)本堂の屋根瓦は、東日本大震災の3か月前、チタンの瓦に替えた。そのときの大きな地震にも、安全を確保することができた」

 チタンの特徴はその強度で、航空機や自動車のエンジンなどにも採用されている。さびにくい性質も持ち、従来の瓦と違い、メンテナンスなしで半永久的に使うことができる。

 カナメ喜多方工場・安藤修一取締役工場長「一番は軽い、安全、安心。建物を守る屋根をいいもので作る」

 ただ、チタンを使った瓦の開発には、たくさんの苦労があった。

 カナメ喜多方工場・安藤修一取締役工場長「(チタンは)非常に『加工しにくい性質』。金属でありながら、伝統的ないぶし瓦の風合いを出したいとこだわった」

 趣のある瓦の形を忠実に再現しようとしたが、加工の際に割れが生じるなど、失敗の連続だったという。その後、4年にわたって試行錯誤を重ね、ようやく加工に耐えられる柔らかいチタンを使った新しい瓦を完成させた。見た目も土の瓦とほとんど変わらず、その違いにはなかなか気づかないようだ。

 浅草の観光客「素人目にはわからない」「軽いですね。(違いが)あまりわからない」

 カナメでは今後、このチタン瓦を歴史的な建造物や公共施設などにも広げていきたいと話している。

 カナメ喜多方工場・安藤修一取締役工場長「これだけ素晴らしい出来栄えになり、あきらめないで、妥協しないでやってきてよかった。チタンで伝統的な風合いが保てる。できれば文化財などにも採用してもらえれば、こんなうれしいことはない、私の夢」

 メードイン福島の技術が、日本の建造物の歴史を大きく変えていくかもしれない。