愛媛の技術をインドに売り込め!巨大市場に勝負をかけるものづくり企業
愛媛県の経済ミッション団が乗り込んだのはインド・チェンナイ。 販路拡大を狙い巨大市場に勝負をかける東予のモノづくり企業に密着しました。
愛媛県西条市の精密機械加工会社「フラスコ」です。社長を務めるのは藤原弘一さん(64)。
藤原社長:
「こちらがミーリングを行う作業場。物を固定してツール(ドリル)で穴を空けたり削ったりする」
強みとするのが鉄や金属、レアメタルなど200種類を超える材質を100分の1ミリの精度で削る、その技術力です。
MRIやCTなどの医療機器に使われる部品をはじめ、半導体を製造する装置、そしてロケットの部品まで手掛け、製品は中国や韓国などにも。
藤原社長:
「何がバイブルかというと、お客さんからもらった仕様書の図面にいかに忠実に(つくるか)。受けたものを『できない』って 返したことは一件もない」
1992年、父のあとを継いで二代目の社長に。8年前には、インドに工場を新設するも程なくして、世界が新型コロナに襲われ現地の事業は休止状態に。そしてアフターコロナでモディ政権のもと、急成長を遂げるインド経済の波に乗ろうと、藤原社長は現地で行われる商談会に参加することを決めました。
藤原社長:
「インドの会社をビジネスマッチングを契機に持ち上げていくかというのが一番の狙いですね」
世界レベルの品質を武器に、14億人の超巨大市場へ。
日本からおよそ6000キロ、南アジアに位置するインド共和国。南インド最大の経済規模を誇るタミルナドゥ州の州都・チェンナイに中村知事をトップとした愛媛の企業や商工会の代表者など総勢80人を超える経済交流ミッション団が到着しました。
中村知事:
「去年初めて道筋の開拓を狙いにしてこのタミルナドゥ州と協定を結ばせていただいたんで、(今年は)芽が出てくる段階に入ってきたのかなと」
チェンナイ市内のホテルでは会場設営が進められていました。行われるのは、現地企業との連携、そして販路開拓を狙う「ビジネス商談会」です。
藤原社長、それにタミルナドゥ州の西側、ケララ州にある子会社の安田社長も到着。最終の打ち合わせを行います。
今回、県内8つの市と町から12社が出展するビジネス商談会。
世起・今村暢秀社長:
「餅関係の商品を作っています。世界のいろいろなところで販売させてもらっているんですけど、インド市場は全然販売できていないのでまずはインドの人たちの口に合うのかというのが(ポイント)」
マルトモ・柴田将人部長:
「インド特有なところはこの“ベジマーク”」
インドで食品を販売する際に、パッケージへの表示が義務付けられているという緑と赤のマーク。緑は「ベジタリアン」、赤は「ノンベジタリアン」向けの食品であることを意味しています。
マルトモ・柴田将人部長:
「南部のタミルナドゥ州は魚を食べる文化が昔からあるということで、かつお節・だしの素が受けるんじゃないかなと希望をもっています」
藤原社長:
「(目標は)最低1社、そこと深く繋がることができれば商談会は大成功。なかなか1社が難しい。日本の商談会でも」
続々と参加者が集まり、いよいよスタートです。
参加者:
「きょうこの場で商品を買うことはできますか?娘のために全て買いたい」
だしの素…そして餅のブースは試食を求めてこの賑わいです。
一方、藤原社長は…
チェンナイで鉄鋼製品を販売:
「主に自動車メーカーや建機メーカー向けの鉄鋼製品を販売しています」
こちらも出だし好調、次々と現地企業の担当者が訪れます。相手は人口14億人の巨大市場。ミクロン単位の繊細な作業を得意とするフラスコですがネックは規模的に、一度に大量の注文を受けられないことです。
当初、予定されていた現地企業からの参加者はおよそ50人。それをはるかに上回る人の波で会場の熱気が高まります。
そこに現れたのは…従業員およそ8万4000人、南インド最大規模の財閥「ムルガッパグループ」の会長、ムルガッパン氏です。グループが手掛けるのは農業、工業、そして金融業まで28の事業にわたり、年間の収益は日本円にしておよそ7600億円。中村知事もインドビジネスのカギを握る“キーマン”と位置付けています。
ムルガッパン会長:
「インドと日本は長年の関係性があり、同じようにムルガッパグループもいい関係を築けていると思います」
藤原社長:
「特徴とすればいろいろな材料を精密に削ることができる。それもミクロンオーダーで」
同じ頃、藤原社長のもとに訪れたのはチェンナイ郊外で機械製造などを手掛ける企業の担当者です。
企業担当者:
「同じような会社です」
藤原社長:
「うちの方から(仕事を)お願いをするということ?」
企業担当者:
「イエス」
やり取りをするうち、相手から「外注先としてぜひ頼ってほしい」という言葉が。大量受注を苦手とするフラスコの前に、一筋の光が差しました。
藤原社長:
「量産しないのでお客が『早く納品してほしい』と言う。材料をどこまで早く入手できるか。それで苦労している。1個とか2個、5個(の少量注文)でも大丈夫?」
企業担当者:
「問題ない」
藤原社長:
「一回(工場に)伺いたい。見学に」
企業担当者:
「とても興味深い。同業種だから協力もできる」
Q.話はいい形で進みそう?
「イエス」
県によると、38件のマッチングが生まれたという今回のビジネス商談会。ミッションを通じて参加者たちが感じたのは、この地に溢れるエネルギーです。
門屋組・門屋光彦社長:
「人材の可能性、また我々愛媛の人たちがこのインドでの市場の可能性、これをすごく感じることができた」
上田消防建設・正岡尚起社長:
「これをどう持ち帰って周りの方に伝えていくか。そして興味をもってもらって少しでもこれから先のひとつの選択肢としてもってもらえるようなことができれば」
三浦工業・高橋祐二相談役:
「すごくポテンシャルがあるので、そういう意味でお互いの行政がバックアップしてくれるというのは経済界にとってもチャンスになる」
藤原社長:
「(ブースを訪れた)10数社中2社ぐらいはこれから先ビジネスとして繋がっていけるかなという実感はあります。(初めて拠点を置いた)12年前と比べるとインドってやっぱり変わっていますね。走っている車はすごく高級車だったり、やっぱり裕福な層が増えた。もっともっと速いスピードで進んでいくんじゃないかなと。(その勢いに乗って)いかなきゃしょうがないし追い風は吹いていると思いますよ」