深刻化する人材不足のなか…14億人の巨大市場を狙え!“チーム愛媛”が挑む世界一の人口大国インド
愛媛県の経済ミッション団が乗り込んだのはインド・チェンナイ。「メイク・イン・インディア」を掲げるモディ首相のもと 今やGDPは世界5位の経済大国に成長。 一方で、少子高齢化・人口減少による市場の縮小、そして人材不足が深刻化する日本。 “チーム愛媛”が世界一の人口大国に挑みます。
炭火でじっくりと焼き上げられた、脂の乗った鶏肉が人気の焼き鳥店。実はこちら、日本からおよそ6000キロ離れたインド南部のタミルナドゥ州です。
現地で採用した27人の従業員をまとめるのは、兵庫県出身の岸本義広店長(36)。調理学校を卒業し、知人の紹介で2020年にインドに渡りました。提供する焼鳥は、日本円にして1本あたりおよそ150円から300円と日本と、ほぼ同じ価格です。
岸本店長:
「(日本と比べ)食料品は比較的安いかなと感じますけども、電化製品はそこまで日本と変わらないか…少し高いぐらい」
5年間を過ごして肌で感じるのは、この国が持つ勢いです。
岸本店長:
「日本でいう高度経済成長期が今まさにインドは流れの中にあるということで、どんどんビジネスが拡大していっている、公共工事が進んでいる、街が拡大しているという様子を間近で見られている」
国民の平均年齢は日本を20歳近く下回る28歳。「メイク・イン・インディア」を掲げるモディ首相のもとGDP・世界5位の経済大国に成長し、2050年にはアメリカを抜いて世界第2位になると予想されています。
一方で、少子高齢化・人口減少による市場の縮小、そして人材不足が深刻化する日本。
中村知事:
「特に皆さんのような将来の可能性をもつ若い人が愛媛県に来てくれたらいいなとずっと思っていました」
“チーム愛媛”が世界一の人口大国に挑みます。
日本から直行便でおよそ10時間、南アジアに位置するインド共和国。日本のおよそ8.8倍という広大な国土に、14億4000万人が暮らしています。なかでもタミルナドゥ州は南インド最大の経済規模を誇り、州都のチェンナイは主に自動車やIT、電子機器などの製造業が盛んな地域。“インドのデトロイト”とも呼ばれています。
そのチェンナイに、愛媛の企業や経済団体の代表者など総勢80人を超える経済交流ミッション団が到着しました。
中村知事:
「去年初めて道筋の開拓を狙いにして、このタミルナドゥ州と協定を結ばせていただいたんで(今年は)芽が出てくる段階に入ってきたのかなと」
ミッション団を率い、これまで台湾やインドネシア、ベトナムなど8つの国と地域にあわせて17回足を運んできた中村知事。インドは去年に続き2回目で、同じ国に2年連続の派遣はこれが初めてです。
中村知事:
「世界最大市場にやがてなっていきますんで、今から道筋をつけておくことによって、将来の縮小によって国内市場が小さくなっていきますから、それをカバーする市場として各企業が道筋をつけることができたらいいなと思う」
県と県商工会議所連合会は700社以上の企業が名を連ねる「マドラス商工会議所」と経済交流に関する覚書を締結。ビジネスパートナーの情報共有や人材育成の強化を目的とした人材交流プログラムの機会の促進などでの連携を確認しました。
一行が訪れたのは、チェンナイ郊外に位置し1万1000人以上の学生が学ぶ「パニマラー工科大学」。巨大ウェルカムボードで熱烈なお出迎えです。
卒業生の就職先は欧米企業は実績がある一方、日本企業については少数で、進路の選択肢を増やそうと去年から日本語教育を取り入れています。
学生:
「心から歓迎申し上げます。今回皆さまとともに過ごす時間が連携を深める素晴らしい機会となることを願っています」
去年6月現在、県内に在住する外国人は1万7439人となっていて、このうちインド人は91人。その多くがカレー専門店など飲食業に従事しているといいます。
大国の豊富な労働力を呼び込もうと日本での就職に関心がある学生に向け、まずは中村知事が大都市圏と比較した物価の安さや生活のしやすさなど愛媛の魅力をアピールしました。
ミッションに参加する企業からも3社が自社の特色や技術、求める人材についてプレゼン。
フラスコ・藤原弘一社長:
「問題があれば一緒に解決し、互いに助け合いながら仕事を進める文化があります。報告・連絡・相談を意識することが大切です」
学生たちに、チームワークや挑戦することの大切さについてメッセージを贈りました。
技能実習生:
「おはようございます。よろしくお願いいたします」
一方ミッション期間中に、参加企業3社が現地の技能実習生の送り出し機関で実技・面接試験を実施。8人が合格し、技能実習生として愛媛で働くことが内定しました。
中村知事:
「特に皆さんのような将来の可能性をもつ若い人が愛媛県に来てくれたらいいなとずっと思っていました。知事として心から歓迎をさせていただきたいと思います」
技能実習生:
「日本で30年くらい働いたあと、インドに帰ってビジネスを始めるつもりです」
日本エデュテック クリシュナン代表:
「いろいろと準備もして今度、愛媛に行くことをみんな楽しみにしています。ぜひこれからも3年間、そのあとも長い年間日本にいると思いますので皆さんからの協力をお願いします」
一方、こちらはチェンナイの日本総領事。刺身に寿司、そしてスイーツ。急ピッチで準備が進められていたのは…
中村知事ら:
「冷凍にして(輸送)?」
西原オーナー:
「冷凍です。みなさんクオリティが高いと思います。きょう来ているマグロがすごい。だてマグロ。ここ(インド)では食べられない」
会場では、祖父が今治市出身、チェンナイなどで日本食レストランを営む西原幸治郎オーナーが腕を振るいます。
西原オーナー:
Q鮮度は?
「素晴らしいですね。マグロなんかは手に吸い付く感じが全然違います。日本と全く同じ感覚ですね」
タミナルドゥ州のラジャ商工大臣をはじめ、経済団体やホテルの関係者を招いて開かれたのは、インドへの県産品の輸出拡大を見据えた「愛媛県魅力発信イベント」。
県によると、インドへの養殖魚の輸出は現在、ごく少量に留まっているといいます。
中村知事:
「お刺身で食べるもよし、湯通しにして食べるもよし、きょうはぜひ新鮮な愛媛の魚を堪能していただきたい」
愛媛が誇る県産品をインドへ。食事会の開始とともに参加者の皿の上には、次々と新鮮な魚が並びます。
参加者:
「ワサビ?」
県担当者:
「ワサビ。とても辛い」
参加者:
「何につけて食べたらいいかわからないけど、おいしいよ」
参加者:
「とってもおいしいです」
ラジャ商工大臣もブリの握りを一口。反応は上々のようです。
世界一を誇る“14億人の市場”にチーム愛媛は一歩ずつ、着実に歩みを進めています。
中村知事:
「昨年のスタートを出発点として1年間水面下で関係づくりを進めてきました。行政の役割というのは、安全・安心に渡れる橋をつくることだと思います。この2回のミッションでだいたいベースはできたかなと思いますので、この段階で関係の道筋を明確につけられたというのは将来の財産に必ずつながると思っています」